動的ルート
これまでの例では、app/home.js
が/home
に対応するように、ファイル名がそのままURLのパスになる静的なルートを扱ってきました。しかし、実際のアプリケーションでは、ユーザーIDや記事IDのように、URLの一部が可変となり、その値に応じて表示するコンテンツを変えたいケースが頻繁にあります。
例えば、/users/1
でユーザーIDが1の人の情報を、/users/123
でユーザーIDが123の人の情報を表示するような場合です。Expo Routerでは、このような「動的ルート」を簡単に実現するための仕組みが用意されています。
パスパラメータとuseLocalSearchParams
URLパスの一部を動的なパラメータとして扱いたい場合、ファイル名またはディレクトリ名に角括弧[]
を使用します。角括弧で囲まれた部分は「パスパラメータ」または「動的セグメント」と呼ばれます。例えば、ユーザーの詳細ページをリスト7のようにapp/users/[id].js
というファイルで定義したとします。
app/ ├── users/ │ └── [id].js // /users/:id にマッチ (例: /users/1, /users/abc) └── _layout.js // アプリ全体のルートレイアウト
この[id].js
というファイルは、/users/1
、/users/abc
、/users/xyz123
のような、/users/
に続く任意の文字列のパスにマッチします。マッチしたパスのid
の部分(この例では1
、abc
、xyz123
)は、コンポーネント内で取得して利用できます。こうして定義された動的セグメントの値は、expo-router
が提供するuseLocalSearchParams
フックを使って取得します。このフックは、現在のルートにマッチしたパスパラメータをキーと値のペアで持つオブジェクトを返します(リスト8)。
.js] import { useLocalSearchParams } from 'expo-router'; import { View, Text, StyleSheet } from 'react-native'; export default function UserProfilePage() { const { id } = useLocalSearchParams(); // (1) { id: '渡された値' } の形で取得 return ( <View style={styles.container}> <Text style={styles.title}>ユーザープロフィール</Text> <Text>ユーザーID: {id}</Text> {/* ここでIDを使ってユーザーデータを取得・表示する処理などを行う */} </View> ); } // (略)
(1)ではuseLocalSearchParams
を使ってid
パラメータを取得し、画面に表示しています。このようにして、URLの動的な部分を画面コンポーネント内で利用できます。パスパラメータの名前(この例ではid
)は任意に設定できます。例えばapp/posts/[postId].js
とすれば、useLocalSearchParams
からはpostId
というキーで値を取得できます。
動的ルートを使いこなすことで、より柔軟なナビゲーション構造を持つアプリケーションを構築できそうですね。
まとめ
本記事では、Expo Routerを活用し、より実践的なモバイルアプリのナビゲーションを構築する方法を解説しました。ファイルベースルーティングの応用的な命名規則に始まり、共通レイアウトを実現するレイアウトルート、代表的なUIパターンであるスタックナビゲーションとタブナビゲーション、そしてURLに応じてコンテンツを動的に変化させる動的ルート(パスパラメータやキャッチオールルートを含む)について、その仕組みと具体的な使用例を紹介しました。
これらの機能を組み合わせることで、静的な情報表示だけでなく、ユーザーの操作や特定のデータに応じて動的に変化する、洗練されたナビゲーション構造を持つモバイルアプリケーションを効率的に構築できるようになります。
次回は、Expo Routerのさらに高度な機能として、プログラムによる画面遷移(useRouter
フックを利用したpush
、replace
、back
操作)、アプリ外からの特定画面への直接遷移を可能にするディープリンクの実装、認証フローの実装例など、より実践的なトピックを掘り下げていきます。ご期待ください。