はじめに
前回は、三角関数の本質である「円運動」について深掘りしました。円周上を一定の速度で回る動きは、その「高さ」や「横の位置」の変化だけに注目すると、美しい「波(周期)」として描き出されます。
本稿では、この「周期」という概念を一歩先へと進めます。単に波形を描くだけでなく、複雑に絡み合ったデータの中から「周期性」を抽出する方法を解説します。三角関数を使って、データの裏側に隠された「傾向」や「真の原因」を特定する、実践的な応用方法について紹介します。
周期とは
「周期」とは、簡単に言えば「一回転して元の状態に戻るまでの時間」のことです。
私たちの身の回りは、この周期性で溢れています。ビジネスにおけるトレンドも例外ではありません。一見すると不規則なノイズに見える「売上の変動」「サイトへのアクセス数」「消費者の心理変化」も、実はその根底に「季節」や「昼夜」といった一定のリズムが深く関わっています。
究極を言えば、私たちの社会活動は、地球の自転・公転などの「物理的な回転周期」に同期していることが多いのです。三角関数を学ぶことは、こうした社会の鼓動を正しく捉える武器を手に入れることでもあります。
太陽と月の影響から海水の高さを予測する(1)
満潮や干潮という現象は、主に月と太陽の引力によって引き起こされます。実際の海面変動には地形や気象も関係しますが、まずは本質を理解するために、この2つの天体要素のみに絞って考えてみましょう。
このシンプルなモデルを通して、「いつ、どのようなリズムで海面が上下するのか」のメカニズムを、三角関数の視点から解き明かしていきます。
太陽と月の三角関数
地球は1日に1回自転しています。太陽に対して「最も近い地点(正午ごろ)」と「最も遠い地点(真夜中ごろ)」を通過する際、海水は引力や遠心力の影響で盛り上がり、1日に2回の満潮を迎えます。
これを数式で表すと、「12時間を1周期とするsin関数」になります。本来は海域ごとの初期位置(位相)や高さ(振幅)の違いがありますが、本質を掴むためにこれらは一旦脇に置いておきます。
月の影響も仕組みは同じですが、太陽とは決定的な違いが2つあります。
周期のズレ(12.4時間)
地球が自転している間、月も地球の周りを公転しています。この「追いかけっこ」の状態があるため、地球上の同じ地点が再び月と正対するまでには、約24時間50分かかります。つまり、満潮1回分の周期は「12.4時間」となるのです。
影響力の大きさ(振幅)
月は太陽よりも圧倒的に地球に近いため、海面を引っ張る力(振幅)は太陽の約2.2倍にも達します。
結果、以下の周期関数で表現できます。
太陽が刻む正確な12時間のリズムと、月が刻む12.4時間のリズム。このわずか「0.4時間」のズレが、私たちの知る「潮の満ち引き」に劇的な変化をもたらすことになります。
