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Developers Summit 2025 KANSAI セッションレポート

AIとともに組織を進化させる──モノタロウが挑む「熱量」から「文化」への昇華

【B-10】AIと共に、組織をどう進化させるか? 〜 “熱量”を“文化”へ昇華させる、持続可能なAI活用の仕掛けづくり 〜

「支援するAI」と「置き換えるAI」の差

 3つの施策によってツールの展開は進んだ。現在、Devinが270名、Cursorが130名、Claude Codeが24名、GitHub Copilotが530名(エンジニア以外のメンバーも含む)に展開されている。Cursor Agentは月に40万行のコードを生成しており(すべてが採用されるわけではないが)、全体のPRのうちDevinによるものはマージ済みで約15%を占める。

 展開を進める中で、もう一つ現実的な壁も見えてきた。AIが効果的に推論できない古いプログラミング言語や独自の文字コード、レガシーな環境に対してはツール自体が対応できないケースがあるのだ。「レガシーの問題を解決するためにAI駆動開発ツールを使いたいのに、レガシーすぎるが故にツールを使えない」という皮肉な状況が、長年の開発資産を持つ組織には生じうる。

 ただし、数字を詳しく見ると気になる点がある。Cursorのユーザーは130名にのぼるが、Premium Requestを使い切るほどハードに活用しているのは約20名(15%)程度にとどまる。CursorやClineによるPR数の増加は、Devinのような形では確認できていない。

 こうした数字から見えてきたのは、CursorやClineのようにエンジニア個人を支援するツールよりも、Devinのように開発プロセスの一部を置き換えるツールの方が、PR数といった指標への影響が見えやすいということだ。

CursorやCline導入後のPR数推移
CursorやCline導入後のPR数推移

 また、ツールの活用度合いはAI駆動開発への熱意の分布とほぼ連動しており、ツールを展開しても使いこなしている人が一部に限られる以上、組織として大きな効果は生まれにくい。

 「AIツールの展開」というキャズムは越えられたが、「AIによる開発プロセスの変容」というより深いキャズムが、その先に存在していた。

次のキャズムへの挑戦

 2025年8月、MonotaROは改めて方針をアップデートした。次のフェーズは、開発プロセス全体(SDLC:Software Development Life Cycle)にわたってAIの活用度を引き上げることだ。

 まず計画・設計・実装・テスト・デプロイ・運用という各フェーズと各チームを掛け合わせてAI活用度を評価・可視化する基準を策定し、活用が進んでいるチームのプラクティスをAIトレンドラボを通じて展開していく。移行は段階的で、まずCursorやClineを使って試行錯誤しながらAIに任せられるプロセスを少しずつ増やし、その後DevinとMCP(Model Context Protocol)を組み合わせてAIが単独でプロセスを完結させる状態を目指す。

 「Devinだけでプロセスが完結する状態をめざすと、必然的にコンテキストやMCPの整備が必要になるので、AI駆動開発チームで先行して着手する」と香川氏は述べる。そしてこうした技術的な変革と並行して、価値探索プログラム、トレンドラボ、道場の3つの仕組みにSDLCでの評価と可視化を加えた4本立ての取り組みを継続させていく。

仕組みがなければ「熱量」は広がらない

 ツールを配布するだけでは、もともと熱意のあるメンバーにしか届かない。個人の熱量に頼る展開は持続可能な文化にはなりにくい。熱量のあるメンバーを巻き込み、横のつながりを生み、スキル習得の機会を用意する仕組みを設けることが、キャズムを越えるための条件となる。

 MonotaROは「AIによる開発プロセス変容」という第二のキャズムの手前にいる。「ツール展開」を達成した後にこそ、本当の変革の課題が始まる。この認識は、同様の取り組みを進める多くの開発組織にとっても、参考になるはずだ。

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この記事の著者

鍋島 英莉(編集部)(ナベシマ エリ)

2019年に翔泳社へ中途入社し、CodeZine編集部に配属。同志社大学文学部文化史学科卒。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

岩本 隆之(イワモト タカユキ)

 1986年 兵庫県神崎郡出身 2009年 関西大学卒業 学生時代より写真・映像制作を行う。 写真撮影スタジオ勤務ののち、2020年独立。 現在は大阪市在住。 広告写真を中心としながら、ジャンルを問わず活動中。 HP Instagram

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