さて、気になる受賞結果は?
優勝
技術力、アイデア、完成度、遊び心などを総合的に評価し、「エンジニアがブラックサンダーを食べたくなる」として優勝作品に選ばれたのは、関西を拠点とするものづくり集団「ビーバーズ・ハイブ」による「ブラックサンダー駆動開発装置(BTDD装置)〜AIと人間がブラックサンダーのために働く、真の駆動開発〜」だ。
ビーバーズ・ハイブが持ち込んだのは、AIのトークン使用量に連動してブラックサンダーが自動供給される装置。ロボットアームで充填し、専用ハサミが一本ずつ封を切ってくれるという作り込みは、FA(ファクトリーオートメーション)エンジニアの知見をフル活用したもの。
有楽製菓 河合社長は選定理由を次のように語った。「仕事をすればするほど食べる機会が生まれる、そのためにわざわざトークンにお金を払いたくなるという仕組みがすごく良かった。高い機材ありきではなく、創意工夫がされており、LEDなど細部のこだわりも評価されました」。
ワクザク!アイデア賞
有楽製菓 河合社長がユニークな発想と遊び心を評価する「ワクザク!アイデア賞」を受賞したのは、チーム「kb」による「ブラックスキャンダー」。ブラックサンダーの表面をPhotometric Stereoでスキャンし、世界に一つだけの3Dモデルをゲームステージとして使う作品。河合社長は「くだらなさの上にゲームをするという、くだらなすぎて選ばざるを得なかった」とコメント。会場にも笑いが広がった。
溢れるパッション賞
デイリーポータルZ編集長 林氏が、情熱やこだわり、その人ならではの視点を評価する「溢れるパッション賞」を受賞したのは、チーム「ワタシハブラックサンダーチョットタベル_42」による「今日の彼女の機嫌はブラックサンダー 〜彼女の感情はロールバックできない〜」。
ノベルゲームのキャラクターが実際に有楽製菓のECサイトからブラックサンダーを注文するという、虚実の境界を越えた作品。受賞者は「テストのために本当に発注してしまい、明日自宅にクール便で届きます」と告白。林氏は「勝手に100個買うという内容は、多分有楽製菓さんは選べないと思ったので私が選ぶべきかなと思いました」と選定理由を語った。
イケてるハック賞
CodeZine編集長 近藤が、技術的なおもしろさとプロダクトとしての魅力を評価する「イケてるハック賞」を受賞したのは、チーム「お菓子大好き!」による「公開ブラックサンダー認証」だ。
公開鍵認証の概念をブラックサンダーに置き換えた作品。ブラックサンダーを割った断面を「公開鍵」として登録し、残った実物を秘密鍵として管理、漏洩防止のために「食べること」が義務付けられるという仕組みだ。「実際に食べざるを得ないところが面白い」「一口かじると認証が失敗するという、デモの堅牢性も高かった」というのが選定理由で、公開鍵認証という難しい概念をユーモアで包みながら、技術的な正確さを失っていない点が印象的だった。
技術の無駄遣い賞
カヤック ゆうもや氏が、無駄とも思える技術活用に宿る創造性と遊び心を評価する「技術の無駄遣い賞」を受賞したのは、チーム「高専モンスター」による「サンキューサンダー」だ。
Slackにメンションを飛ばすとカウントダウンが始まり、Raspberry Pi制御の投石器が物理的にブラックサンダーを飛ばしてくる作品。会場にパイプ椅子と突っ張り棒でデモ機を構築するという高専生らしい機転が光った。ゆうもや氏は「高級な機材に頼らず、身の回りにあるものでどうにかするアイデアが面白かった」と評した。
AI審査員賞
チームの作品概要をもとに、有楽製菓社内AIがエンジニアへの波及性およびブラックサンダーの推定年間追加消費本数を算出し、1位に選ばれたのは、チーム「Acompany」による「ブラックサンダー Everywhere」だ。
ターミナル出力をすべてブラックサンダー風に変換し、AIのトークン消費量を「ブラックサンダー単位」で表示。VS Code・JetBrains拡張やブラウザにまで及ぶ徹底ぶりで、有楽製菓社内AIが算出した「推定年間追加消費本数」は約240万本に達した。
AIの講評は「あらゆる開発接点をザクザク化し、ブラックサンダーをエンジニア文化そのものへ侵食させた点を高く評価しました。単発ネタではなく、毎日の開発で自然に思い出す導線が非常に強い作品です」とAIらしい讃辞が送られた。
「無駄を本気でやる」——ブラッカソンが引き出したもの
20チームの作品を振り返ると、大きくいくつかの方向性に分かれた。「ブラックサンダーを物理的に届ける」「開発環境をブラックサンダーで埋め尽くす」「ブラックサンダーを休憩のトリガーにする」「ブラックサンダーで人とつながる」といった具合だ。
驚いたのは、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせた作品の多さだ。VRヘッドセット、3Dプリンター、Raspberry Pi、ヒューマノイドなど、スマホやPCだけにとどまらない体験を作るための機材が次々と登場した。しかも2日間で完成させているのだから恐れ入る。
審査員の林氏は総括でこう語った。「全体的に無駄だなという要素はたくさんあったのですが、みんなそこを無駄だと思っておらず本気で取り組んでいるのが、とても心強くなりました」。この言葉が、ブラッカソンの本質を端的に表しているように思う。
近藤は審査を終え、「AIやテクノロジーの進化で作品やプレゼンテーションの完成度も上がっており、ハッカソンの広がりを感じさせるイベントになりました」とコメントした。
ブラッカソンの「エンジニアがブラックサンダーを食べたくなるアイデア」というテーマが、参加者たちの本気を引き出すことに成功した2日間だった。「くだらないことを本気でやる」——それはエンジニアが最も輝く瞬間のひとつかもしれない。

