はじめに
この連載では、UNIX系OSをコマンドライン上から効率よく利用するために知っておくべきテクニックや、便利な小技を紹介していきます。
今回は第0回ということで、今後便利なUNIXコマンドを紹介するにあたり、知っておきたい「シェルの制御構造」や「正規表現」などを、例を交えながら簡単に復習していきます。
対象読者
- UNIX系OSコマンドを一通り利用したことがある方
- 正規表現を利用したことがある方
- 何らかのプログラミング経験がある方
動作確認環境
- Linux(Debian etch/Fedora 8)
- FreeBSD 6.1
- Cygwin 1.5.X
なるべくUNIX系OS一般に当てはまるよう解説するので、特に記述がない場合は、Mac OS X、Red Hat Linux上でも動作します。
シェルに関しては、bash(Bourne-Again Shell 2および3)を想定しています。
いろいろな実行方法
パイプライン
コマンドが左から右に順に実行され、前のコマンドの出力(標準出力)が次のコマンドに入力(標準入力)されます。
コマンド1 | コマンド2 | ...
コマンドリスト
コマンドが左から右に順に実行されます。「;」(セミコロン)で区切ることで、1行に複数のコマンドを書くことができます。
コマンド1 ; コマンド2 ; ...
次のように、コマンドを「&&
」で区切って書くと、前のコマンドが成功した場合(終了コードが0の場合)のみ、後ろのコマンドが実行されます。
コマンド1 && コマンド2
コマンド1が正常終了以外(終了コードが0以外)だったら、コマンド2を実行されます。
コマンド1 || コマンド2
次の例では、一般的なコンパイル手順である「./configure
」「make
」「make install
」を順番に実行します。途中でエラーが発生した場合、それ以降のコマンドは実行されません。このため不要なコンパイル時間の短縮になります。
$ ./configure && make && make install
コマンド置換
「$()
」で囲まれた部分は、そのコマンドの実行結果に置き換えられます。例えば、現在の日時のファイルを新規作成するには、touch
コマンドを使用して次のように記述できます。
$ touch $(date +%F) $ ls 2008-09-05
date
コマンドは、現在の日時を表示します。また「+%F
」オプションを付けることで、「yyyy-mm-dd」形式の日時を表示しています。
コマンド置換は「`...`」(バッククォート)を使って、次のようにも記述できます。
$ touch `date +%F`
ただし、ネストしやすい・読みやすいという理由から、bashでは「$()
」を使うことが多いようです。
ブレース展開
「,
」カンマで区切った複数の文字列を「{}
」ブレース(中括弧)で囲む事で、囲んだ文字列を展開することができます。
複数のディレクトリを一度に新規作成するには、mkdir
コマンドを使用して次のように記述できます。
$ mkdir {dir1,dir2,dir3} $ ls dir1/ dir2/ dir3/
また、次のようにディレクトリ名に対して、部分的に中括弧を利用することもできます。
$ mkdir dir{1,2,3} $ ls dir1/ dir2/ dir3/
このように、異なる文字列を複数個指定する場合に役立ちます。
シェルの変数展開
変数から値を取り出すときに使われるのが変数展開です。「$変数名
」または「${ 変数名 }
」のように使います。
代表的な4種類を紹介します。
変数展開 | 説明 |
${パラメータ#パターン} | パラメータ前方から、パターンに最短一致した部分を除く |
${パラメータ##パターン} | パラメータ前方から、パターンに最長一致した部分を除く |
${パラメータ%パターン} | パラメータ後方から、パターンに最短一致した部分を除く |
${パラメータ%%パターン} | パラメータ後方から、パターンに最長一致した部分を除く |
次のように、拡張子の除去やファイル名の取得などで、よく使われます。
$ mypath=/home/hoge/foo.txt $ echo ${mypath%.*} → 拡張子を除く /home/hoge/foo $ echo ${mypath##/*/} → ファイル名のみを得る foo.txt