個人情報や製品関連情報、在庫・販売情報など、企業が扱うデータは増加の一途をたどっている。また、扱うデータの種類も多様化しており、これらを管理・運用することも企業の重荷となってきている。このような状況を打開できるデータベースが「SQL Anywhere」。インストールを始め運用・管理が容易で専任の管理者を必要としないことなどが特長だという。
今回は「SQL Anywhere」を提供しているアイエニウェア・ソリューションズ株式会社のエンジニアリング統括部、シニアコンサルタントである森脇大悟氏に、その特長やメリットをうかがった。
――はじめに、会社としてのiAnywhereについて教えてください
森脇氏:アイエニウェア・ソリューションズ株式会社は、米国iAnywhere Solutions社の日本法人になります。iAnywhere Solutionsは、カナダ・オンタリオ州にあるウォータールー大学のコンピューターサイエンスグループ研究室に所属していた3名によって設立された、WATCOM社がルーツになっています。WATCOM社はその後Powersoft社の傘下になり、Powersoft社はSybaseに買収されます。
1995年には、旧WATCOM社従業員の大半がSybase社のMEC(Mobile and Embedded Computing)事業部として、ウォータールーを拠点とするF&Dセンターに移籍し、その事業部が2000年にiAnywhere Solutionsとして独立しました。現在でも開発拠点はウォータールーにあり、研究や改善が進められています。2003年には日本法人が設立され、2007年には独自にGISソフトウェア企業である株式会社コボプランを買収しています。
――SQL Anywhereの特長について教えてください
森脇氏:WATCOM社で開発されたRDBは、「Watcom SQL」から「SQL Anywhere」、「SQL Anywhere Studio」と進化しました。前バージョン(V9)では、パッケージ名が「SQL Anywhere Studio 9」となっていて、コンポーネント名もRDBサーバが「Adaptive Server Anywhere」、同期が「MobileLink」、小型DBが「Ultra Light」となっていましたが、V10ではパッケージ、RDBサーバの名称を「SQL Anywhere」で統一しました。
V9 | V10 | ||
パッケージ | SQL Anywhere Studio | SQL Anywhere | |
コンポーネント | RDBサーバ | Adaptive Server Anywhere | SQL Anywhere |
同期 | Mobile Link | Mobile Link (変わらず) |
|
小型データベース | Ultra Light | Ultra Light (変わらず) |
また、Sybase社のRDB製品では「SQL Server」から「Adaptive Server Enterprise」へと進化しています。また、「SQL Server」はマイクロソフトとの提携によりWindows版に移植されています。このため、iAnywhere Solutionsの「SQL Anywhere」、Sybaseの「Adaptive Server Enterprise」、マイクロソフトの「SQL Server」は、「親戚同士」の製品といえます。もちろん、その後の製品開発によって、それぞれ違う個性を持つ製品となっています。
SQL Anywhereは、時間や場所を選ばずにデータベースを使えることが最大の特長です。また、デスクトップPCなどフロントに近いところでの使いやすさを重視しているため、データベース専任の管理者がいないような中小規模企業での利用にも適しています。パッケージでの提供によってソフトウェアへの組み込みが可能であることも特長で、Windowsのサービスとして使用できます。アプリケーションがリクエストを送ったときにのみデータベース起動するので他の作業を邪魔することがなく、手間がかかりません。
手間がかからないことは製品のポリシーでもあります。エンタープライズ向けの本格的なRDBでありながら簡単にインストールできます。また、データベース製品はさまざまなチューニングが必要と思われがちで、実際に他社製品ではデータキャッシュが複数あり、その最適化は非常に難しい作業になります。しかし、SQL Anywhereはデータキャッシュを一つに統合しており、その上限と下限を設定しておくことで自動的に最適化を行います。
このような自動化は、メモリ設定だけでなく、統計情報の更新や高可用性構成時のリカバリなどいろいろな場面で適用されているため、データベースの基本的な知識さえあれば専任の管理者を置くことなく運用できます。データベースファイルもデフォルトで一つとなっているので、コピーやバックアップも直感的に行うことができ、互換性も高いので移行も容易です。また、Windows、UNIX、Linux、Mac OS Xと幅広い環境に対応していることも特長です。さらにはエンジン自体が高速なため、素早い検索が可能です。
――ありがとうございました。
次回はUltra Lightの導入事例と、SQL Anywhereの今後についてうかがいます。
SQL Anywhereというと、モバイル機器向けのUltra Lightの印象が強い。Ultra Lightは、SQL Anywhereのコンポーネントのひとつだが、Ultra Lightのみを分離・独立させることが可能で、ライセンス単位で販売されている。Ultra Light 11の動作環境はWindows、Linuxとなっているが、日本では特に組み込み機器向けのWindows CEに注力している。多くのモバイル向けデータベース製品はWindows Mobileには対応しているが、Windows CEに正式対応している製品はほとんどないのが現状だ。
フロント側で使用されるデータベースが複数配置されている場合に、SQL Anywhereを使用することでデータの統合、共有、管理が容易になる。さらに、「SQL Remote」をベースに発展させた同期機能「MobileLink」によって、デバイス内のデータベースを常に最新の状態に保つことができる。高く評価されているテクノロジだ。またUltra Lightは、スマートフォンや業務専用端末などへの組み込みが容易で、SQL Anywhere と同様に開発しやすいことも特長となっている。