将来のシステムエンジニアに大切なコト
ここまで、近い将来導入が進むであろうストレージの高集積化とネットワークの高速化の最新技術動向についてみてきました。さて、ここまで読み進めた読者の中には「誰がこれを使うんだ……」という疑問を持った方もいるのではないでしょうか。その一つの可能性について記述します。
正直に言って、いくらストレージの高集積化やネットワークの高速化が行われたと言って、すべての利用者にマッチするような価格で機器が提供されるとは限りません。皆様の中でも現在のシステムで十分に満足されている場合もあるでしょうし、パブリック・クラウドを利用する場合もすでにあるでしょう。つまり、ある一定規模以上の組織で、なおかつ仮想化技術により計算資源を切り出して有効に活かせる場合に限り、これら技術が有効なのです。図7では、例として「データセンターでお客様へ提供する場合」と「大企業で社内ユーザーへ提供する場合」について例示していますが、それ以外も適合する組織や事業者はあるでしょう。
昨年ニューヨークで開催されたVelocity Conferenceでも、パブリック・クラウドから一定規模をデータセンターの自前設備に移すWebサービス事業者の発表「AWS or Dedicated Hardware?, Cuong Do(Dropbox)」がありましたが、規模とニーズが合致してはじめて活かされる領域の技術とも言えます。
しかし、いきなり普段使ったこともないような高速化・高集積されたシステムを導入する立場になった場合、どの程度の性能がどのような機器ならば安定稼働するかというのは、とても気になる部分だと思います。まったく見当が付かない中で、手探りを繰り返す場合もありますし、最新技術動向を踏まえて「物理限界」と「実測性能」から、おおよそのアタリを付けていくこともあるでしょう。また、前述した高集積化を続けるストレージ・システムではありませんが、物理的な実装面積の限界に近づき、近い将来(3~5年)で根本的な見直しを図る必要が出てくるシステムもあるかもしれません(図8)。
本連載では、これら高速化・高集積システムの技術動向に限らず定期的に、近い将来3~5年先に必要とされる技術について、皆様と情報共有していければと考えています。一つ一つが研究検証の過程データとなる場合もあるかとは思いますが、日々進化を続ける「明後日を支える新技術」をお楽しみいただければ幸いです。
それでは次回もお楽しみに。