モノのインターネットで、いま起こっているコト
何度も連載で書いていますが現在起こっている「モノのインターネット」と呼ばれるブームとその目的は、ほとんどすべてが「テレメトリング(遠隔計測)」と呼ばれる技術に収束します。まずは、やや複雑に入り組んだ技術動向からヒモ解いていきましょう(図1)。
私たちが何らかのデバイスをネットワークを介してデータ収集しようとする場合、図1のように絡み合った技術要素を一つ一つヒモ解いていく必要があります。一つは技術的な要件であったり、一つは全体コストの要件だったり、その背景は利用者によってさまざまです。
ただ、客観的に見ればその技術は「ほんの小さなデータ」を拾い上げ、通信網・APIを経由した「データのバケツリレー」によって集め、「お客さまが欲しいデータ解析結果」を得るための仕組みに他なりません(注1)。
注1
「いやいや、これ以外にもデバイスのリモート制御や他にもあるじゃないか!」という、ごもっともな声も脳裏に浮かびますが、それはまたの機会でご了承ください。
少し視点を変えて「データを集める=異常を検知する」と読み替えた先行事例についてみていきましょう。
図2は、海外で流通している安価なGPSトラッカーの事例を日本国内の事例と仮定してまとめたものです。
GPSトラッカーはバイクの盗難から遠隔カメラ撮影による浮気調査まで、具体的な用途向けに商用化された製品群です。この仕組みでは通信制御にIP網ではなくSMS(ショートメッセージ)が使われています。十分に成熟したモバイル環境のSMS技術と、データ送信頻度が極めて低い場合、モノから安価に送受信できるSMS経由でのデータ収集(トラップ)という仕組みがマッチしたのか、これら製品本体も驚くほど安価に流通しています。
ここから得られる教訓として、「ニーズがマッチすると恐ろしいまでの量産化効果により製品本体が流通する」が挙げられます。残念ながら、これらの製品はGSM環境での利用を想定したものであり、日本国内では利用できません。技術基準適合証明マークもついていませんので、日本国内で電源すら入れられません。
さて、ここで私たちを取り巻く通信デバイスの最新動向について見ていきましょう。図3は通信デバイスの最新動向をまとめたものです。製品本体の大きさは同じながら、価格も機能もバラバラで写真をみただけでは「よく分からないかも……」となってしまうでしょう。量産化により極限まで成熟した通信デバイス、パソコンを極限まで小さくすることで生まれた通信デバイス、センサーやデバイス制御に特化させた通信デバイスなどと、用途も考え方もさまざまです。
賢明な読者の皆さまならお気づきかと思いますが、これら通信デバイスは共通の機能がいくつも入っています。
データをどこに集約させるか、デバイスをどこから制御するか、それによってBluetooth/WiFi、3G/LTE携帯電話網といったデータ通信がデバイスから選択されます。また、それを制御するチップもとても似ているものが載っています。これらを効率よく集約できたなら……、そう思うのは当然だと筆者も考えます。
現在進行形でモノのインターネットを取り巻く環境は変化しています。図4は日本国内の技術基準適合証明取得済みの低価格WiFiモジュールを示したものです。内部にMCUを備え、単体でセンサーなどと制御信号をWiFi経由でインターネット上のサーバーとやり取りできます。ちょっとした知識があれば、これら安価な通信デバイスとセンサーを組み合わせた面白い「モノ」が開発できるのです。
もう一つの通信デバイスを取り巻く環境変化としてスマートフォンの流通価格があります。図5はカジュアルに「モノのインターネット」を楽しむための通信デバイス比較をしたものです。一時的なセールという側面もありますが、3G/LTE対応したスマートフォンの価格がついに5000円を切るところまできています。
このように「モノのインターネット」を取り巻く環境は、劇的に変化しつつあります。つぎに、これから変化を迎える新技術についてみていきましょう。