満席のため、本イベントへの参加申し込みはすでに締め切りとなっていますが、セッションは当日のライブ配信で視聴できます。こちらからぜひご覧ください。
欧米で主流となるクラウド開発のスタイル
クラウド上に展開されたオープンスタンダードのリソース、サービスAPIを組み合わせて業務アプリケーションやエンドユーザーサービスをスピード感をもって構築するというスタイルが、近年、米国西海岸を中心に急速に広まっている。しかし、このスタイルは、「Box」や「Twilio」のような成功したスタートアップの事例などで語られることが多いためか、ベンチャー企業やスタートアップ向けのアプローチという捉えられ方に偏っているかもしれない。
要は、ソフトウェアの開発を、クラウド上のサービスコンポーネントやAPIを積極的に利用する(組み合わせる)ことで、アプリケーションをアジャイル的に素早く開発し、リリースするという手法である。そのアプリケーションはクラウド上で実行されるため、ソフトウェアのリリースは、サーバーへのデプロイ作業となる。その結果、ソフトウェアのリリース(デプロイ)サイクルが大幅に短縮されるというわけだ。このような開発スタイルは「DevOps」と呼ばれることもある。
Open Cloud Summit Japanでは、IBMが提供するオープンなクラウド基盤とその上に構築される次世代型のサービス開発基盤とはどのようなものか、また何ができるのかを、日本のエンジニアにも実感・体感してもらいたいという。
5分でサービス開発をスタートできるオープンクラウドプラットフォーム
そもそも、IBMがコミットしているオープンクラウドとはどのようなものか。その点について、紫関氏は次のように説明してくれた。
まず、現在のビジネスにおいてスピードは命である。製品やサービスを素早く市場に提供することは企業の競争力に直結するため、ソフトウェアやサービスの開発は従来のように数か月という単位で時間をかけることはできない。短時間での開発には、クラウド上のコンポーネントを組み合わせてサービスやシステムを構築する仕組みが必要となる。しかも、機能には多様性が求められるため、クラウドはオープンなものでさまざまなベンダーのコンポーネントが自由に使えなければならない。これには、クラウドが標準化されている必要がある。
IBMが推進するオープンクラウドは IaaS(Infrastructure as a Service)に「OpenStack」を使うことでAPI、CPU、ストレージ、ネットワークなどを標準化している。パブリッククラウドでは同社が昨年7月に買収した「SoftLayer」を活用し、その上にOpenStackを実装している。OSや開発環境、データベース、システムアプリケーション、ミドルウェアなどのPaaS(Platform as a Service)には、「OASIS TOSCA」という国際標準化団体によるオープンスタンダードと、「Cloud Foundry」というオープンソースプロジェクトをベースにしたクラウドサービスが実装される。
その上のSaaS(Software as a Service)には、サードパーティーやパートナー企業によるクラウドAPI群が展開される。これらがアプリケーションのコンポーネントにもなり、APIエコノミーの実体でもある。
サービスプロバイダーや開発ベンダーなどは、このクラウド基盤の上で、開発リソース、サーバーを調達し、各種APIやサービスコンポーネントを組み合わせることで、さまざまなアプリケーションを開発し、サービスを構築できる。すべてが標準化されたオープンなプラットフォームであるため、特定ベンダーの機能やサービスにロックインされることはない。このプラットフォームで開発したサービスを、APIとして同じプラットフォーム上にサービスを提供するビジネスをしてもよい。これも、オープンであり標準化されたクラウドだから可能となる。
なお、現在ベータ版となっているIBMのクラウドサービス「BlueMix」は、SoftLayer上にOpenStack、その上にCloud Foundryを載せて実装したPaaSサービスをいう。
日米のクラウドリーダーが先進事例に熱く議論
Open Cloud Summit Japanでは、次のようなセッションが予定されている。
時間帯 | 内容 |
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13時00分~ 13時10分 |
オープニング |
13時10分~ 13時55分 |
「オープン・クラウド・アーキテクチャー・イントロダクション」 【スピーカー】
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13時55分~ 14時45分 |
パネル・ディスカッション 「アプリケーション・エンジニアのためのクラウド活用法」 【パネリスト】
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14時45分~ 15時05分 |
休憩 |
15時05分~ 15時25分 |
事例セッション 「OSSを活用したOpenStackの導入事例」 【スピーカー】
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15時25分~ 16時15分 |
IaaSパネル・ディスカッション 「事業会社にとってのオープン・クラウドの価値」 【パネリスト】
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16時15分~ 16時35分 |
休憩 |
16時35分~ 17時25分 |
オープン・クラウドを支えるコミュニティ(デモ展示とSoftLayer Cafe) コミュニティ・ライトニング・トーク・セッション 【司会】
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17時25分~ 17時30分 |
クロージング |
前半のセッションは、日本でオープンクラウドを推進しているコミュニティーのリーダーを招き、オープンクラウドによってどのような世界がもたらされるのかについて、米IBM ソフトウェア・スタンダード&クラウド・ラボ技術理事 クリス・フェリス氏とともに議論を行う予定だ。
また、クラウド基盤の活用により、エンジニアや開発者の世界がどのように変わるのかについて、また、注目を集める「APIエコノミー」とは何かについての解説や、BlueMixのアーキテクチャーとIBMのオープンクラウドへの取り組みなども紹介されるという。
さらに、株式会社Co-meeting 取締役 パブリッククラウドエバンジェリスト 吉田雄哉(吉田パクえ)氏をモデレーターとしたパネルディスカッションも予定されている。パネリストとして、株式会社はてなの元CTOでグリー株式会社でもソーシャルメディア統括部長として活躍した伊藤直也氏と、株式会社サムライズム 代表取締役社長の山本裕介氏を迎え、DevOpsやAPI開発について最新動向やそれぞれの活用スタイルなどを議論する。
後半のセッションは、まず、グリー株式会社 インフラストラクチャ本部 マネージャー 渡辺光一氏がIaaSの事例として、企業の情報システムでのオープンクラウド活用について講演を行う。同社ではOpenStackをベースにクラウド情報システムに取り組んでいるという。そして、この講演を受け、IaaS活用に関するパネルディスカッションへと続く予定だ。このパネルには、グリーや楽天の他、Webサービスの開発を行っているベンダーエンジニアや関係者が招聘され、事業会社にとってオープンクラウドの意義や価値について掘り下げる。このパネルディスカッションのモデレーターも、Co-meetingの吉田氏が担当する予定だ。
最後は、この手のイベントでは定番となってきている「ネットワーキング」セッションだ。これは参加者の交流を深めるため、コミュニティーによるライトニングトークなどが予定されている。司会は、一般社団法人クラウド利用促進機構 運営委員長 荒井康宏氏である。
紫関氏によれば、今回はOpen Cloud Summit Japanの第1回目ということで、エンジニア向けでありながら、OpenStackやオープンクラウドでのアプリケーション開発はどのようなものか、どのようなメリットがあるのか、といった点を多くのベンダーやプロバイダーに知ってもらえるように配慮しているという。そもそも、オープンクラウドによる開発プラットフォームは、大企業のシステム開発からスタートアップ企業のサービス基盤構築にも対応するため、企業の規模を問わない。本イベントではBlueMixのアーキテクチャーの説明や、エンジニアによる事例紹介など、技術的な内容がベースとなるが、クラウドプラットフォームでのアプリケーションやサービス開発のビジネスに興味のある人なら、開発者でなくても非常に参考になるだろう。
Open Cloud Summit Japanでは、当日のセッションを会場からライブ配信します。会場まで足を運べないという方は、こちらからぜひご覧ください。