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【Open Cloud Summit Japan 基調講演】
Linux以上の成功を目指すIBMのオープンクラウド戦略

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IBMのオープン戦略は20年前から

 次に、米IBM ソフトウェア・グループ技術理事 クラウドパフォーマンス CTO アンドリュー・ヘイトリー氏が登壇し、同社がオープンクラウドにコミットする理由と取り組みについてオープニングセッションを掘り下げた説明を行った。

米IBM ソフトウェア・グループ技術理事 クラウドパフォーマンス CTO アンドリュー・ヘイトリー氏
米IBM ソフトウェア・グループ技術理事 クラウドパフォーマンス CTO アンドリュー・ヘイトリー氏

 ヘイトリー氏は、現在新規に開発されるソフトウェアの85%がクラウド向けのものであり、開発者の72%がクラウド上のAPIを使っていると説明。さらに、2016年までには、世界中のアプリケーションの4分の1がクラウド上で利用されるだろうと述べた。

 クラウドは今や、ビジネスやITに不可欠といってよい存在だが、このようにクラウド市場が広がる理由について、ヘイトリー氏は「開発スピードと柔軟性があること。新しいビジネスを試し、素早い改修でニーズに応えるというルーチンを行えること。スケールアップ、スケールダウンも素早く行えること」を挙げ、これらは企業競争力に不可欠な要素となっているとした。

クラウド市場が広がる理由
クラウド市場が広がる理由

 なお、IBMのオープンクラウド戦略は、ヘイトリー氏らが経営陣を説得して始まったものだが、実は「オープンコミュニティにコミットし、ビジネスを展開していくというIBMの方針は20年前からある」(ヘイトリー氏)。現在、社員400名がOpenStackコミュニティに何らかの貢献(そのうち100名ほどがコアメンバーとして活動)をしているIBMは、いわばOpenStackに賭けることにした格好だが、上層部からは「Linuxより成功せよ」とオーダーされているそうだ。

オープンクラウドにIBM独自の価値を追加して提供

 もちろん、IBMはOpenStackやCloud Foundryといったオープンに開発されている技術をそのまま使用しているわけではない。IaaSでは、OpenStackをベースに各種ハードウェアリソース(CPU、ストレージ、ネットワーク)を管理するための抽象化レイヤー(IBMプラットフォーム・リソース・スケジューラー)を構築。ワークロードの定義や、それらを再利用・最適化するためのパターン、オーケストレーション環境を積み上げて、同社がSoftware Defined Environmentと呼ぶサービス基盤を提供している。

IBMのIaaS戦略
IBMのIaaS戦略

 BlueMix(ベータ版)は、このIaaSの上にCloud Foundryベースで構築されたPaaSである。BlueMixの特徴は何といっても、サービスやアプリケーションを実行するための環境作り(ミドルウェアやフレームワークの選択・設定など)がGUIで簡単に行える点だ。

 だがもう1つ、エコシステムの機能を備えている点も、競合に対する差別化点といえよう。サードパーティーは「IBM Cloud marketplace」というBlueMix向けサービスの市場で、自身で開発したサービスを販売するなどのビジネスを行える。BlueMix上でシステムを開発するユーザーは、IBM Cloud marketplaceでサービスを購入してそれを利用できる。

サードパーティーはBlueMixのエコシステムを利用したビジネスを行える
サードパーティーはBlueMixのエコシステムを利用したビジネスを行える

 BlueMixについては、日本IBM GTS事業部 クラウド事業統括 理事 クラウド・マイスター 紫関昭光氏が、ビデオデモを交えて解説した。

 ビデオデモは、スポーツ用品を販売するiPadアプリケーションを構築し、拡張していくというもの。紫関氏はまず、BlueMix上ではJava、Rubyなどのランタイムが自由に使え、サービスAPIとの融合も簡単に行えることを強調。続いて、クラウドだからこそ容易にできるサーバーのスケールアップ、スケールダウンや、音声通話、チャットなどの機能もAPIを利用することで数分で実装する様子などを紹介した。なお、音声通話には米Twilio社が提供するVoIPやSIPのAPIサービスを利用していた。

日本IBM GTS事業部 クラウド事業統括 理事 クラウド・マイスター 紫関昭光氏
日本IBM GTS事業部 クラウド事業統括 理事 クラウド・マイスター 紫関昭光氏

 他にも、IBMのクラウドプラットフォームやBlueMixの特徴として、次の5つを紹介。これらについては、イベント会場でデモが行われていた。

  • SoftLayerは仮想化フォーマットOVF(Open Virtualization Format)のテンプレートに対応し、ベアメタルサーバーも提供
  • Cloud Foundry上のアプリケーションに、データベースなどのサービスを容易にバインド(BlueMixの機能)
  • IBM Jazzをベースとしたコラボレーション開発環境への対応(Jazz-Hub)
  • プライベートクラウドとパブリッククラウドを混在させたハイブリッドクラウドの構築
  • 機能のカプセル化が容易なPaaS API(ビルドパック)

ソフトウェアの開発スタイル・ビジネスの変容に遅れるな

 以上のようにIBMでは、クラウドを今後提供するITシステムの柱の1つとして据えた。従来型のSIに付随したメインフレーム、PC、サーバーを販売するというビジネスから、オープンなクラウド基盤を構築し、そのエコシステムでビジネスを展開する戦略をとる。もちろん、クラウド基盤はクローズドなものを含め、IBMだけが提供しているわけではない。企業や技術者から見ればAWSやAzureといった選択肢もあるが、いずれにせよ、ソフトウェアの開発スタイルやビジネスは変容してきている。

 クラウドベースのマッシュアップ、サブスクリプションによるシステム構築といった開発スタイル、そしてクラウドベースのソフトウェアリリースと運用というスタイルは、しばらく注視する必要があるだろう。

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この記事の著者

中尾 真二(ナカオ シンジ)

フリーランスのライター、エディター。アスキーの書籍編集から始まり、翻訳や執筆、取材などを紙、ウェブを問わずこなす。IT系が多いが、たまに自動車関連の媒体で執筆することもある。インターネット(とは当時は言わなかったが)はUUCPの頃から使っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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