これからのスキルアップ:伊藤直也を作るには
次のテーマは「クラウディなエンジニアになるためには」ということで、クラウド時代のエンジニアに求められるスキルや人材像などについて、それぞれの意見を聞くものだ。「たとえば、伊藤直也を作るにはどうすればいいのか?」(吉田氏)
伊藤氏は「私のようなエンジニアになることがよいかどうかは別だけれども(笑)」と前置きしつつ、これからは「ロードマップ指向」ではなく「エコシステム指向」で考えていくべきと提案。10年ほど前までは、Windowsのような確固たる地位にあるプラットフォームが存在していて、誰もがベンダーが提示する製品ロードマップに従って準備やスキルアップを図ればよかったが、今はそのようなプラットフォームは存在しない。このような時代に求められるエンジニア像とは、「新しい技術が次々に生まれ、取捨選択されていくITのエコシステムを観察し、プラットフォームや開発スタイル、あるいは生き方もアジャイルに変えることができる人材ではないか」(伊藤氏)と述べた。
山本氏は、自身の立ち位置をインフラではなく「アプリ寄りのエンジニア」とした上で、「これからはソフトウェアでできることがもっと広がっていくと思う。今はImmutable Infrastructure(不変なインフラ:システムやソフトウェアをバージョンアップする際、インフラごと入れ替えるという発想)という考え方や、フルスタックエンジニアとしてインフラからアプリまでカバーできるエンジニアが重要視されているが、インフラ技術のコモディティ化が進むと、差別化はソフトウェアの機能やUIなどで図ることになるだろう」と指摘。相対的に、インフラよりアプリケーションやサービスへの指向が強まるのではないかという意見だ。
また、山本氏がJavaプログラマであることから、「すべての機能はJVMの上で構築したいという想いがある」とも。これに対して吉田氏は「最近ではPaaS環境でもJavaランタイムが利用できるので、そのような環境も現実的になってきているのでは」と受けた。
続いて吉田氏は、メインフレームからサーバー、クラウドの時代を経験してきたベテランとして、またIBMというプラットフォームを提供する側としての意見を榊原氏に求めた。
これに対し、榊原氏は「ソフトウェアの開発には慎重さと冒険心の2つが必要。どちらを優先させるかはコスト要因などで決まるが、エンジニアにはこれら2つをバランスさせるスキルが重要だと思う」と回答。クラウドはいろいろなアイデアを試すことができる環境と述べた上で、「自分が過去に経験した机上コーディング・机上デバッグなんて今は必要ないのだから、冒険心をもってどんどんチャレンジしよう」と、榊原氏のことを“ベテラン”と持ち上げる吉田氏に皮肉交じりの返事を投げかけて、会場の笑いを誘った。
また、榊原氏は「業務部門もITに関わるようになり、ITエンジニアも業務や市場について考えなければならない時代。エンジニアも技術だけでなくビジネスに目配りを」と提言。加えて、エンタープライズ系のエンジニアはステークホルダーが多く、抱えている過去のリソースにも縛られるが、それを乗り越えて新しいアイデアやシステムを作ってほしいと、会場の開発者にエールを送った。
開発の新スタイルと情報ギャップを埋めよ
吉田氏は最後に、「来場者に向けて何かメッセージを」とリクエスト。3名のパネリストはそれぞれ次のように語り、ディスカッションを終えた。
伊藤氏「今はプラットフォームもアーキテクチャも巨大プレーヤーが決めるのではなく、ユーザーが決める時代。エコシステムも変わってきているが、エンタープライズ系の人は、たとえばGithubを知らないなど、情報のギャップを感じることがある。これからはWeb系のエンジニアもエンタープライズ系のエンジニアといっしょに開発やビジネスを進めることが重要になる」
榊原氏「エンタープライズシステムには、堅牢性や信頼性などで優れている部分がある。クラウドの利用も鑑みながら、全体としてどのように質を変えていくかがポイントだろう」
山本氏「情報ギャップを考えたとき、若手は放っておいても大丈夫だと思うが、中間・ベテラン層が新しいスタイルを若手と共有するために、何らかの橋渡しが必要。自分はJavaやAPIが好きでコーディングを続けているが、若い人もずっと好きなことを続けたいというマインドを大切にしてほしい」
