パネリストは、はてなやグリーなどでエンジニアとして活躍した伊藤直也氏(KAIZEN platform Inc. 技術顧問)、Twitter他国内外のSIer、ベンダー、サービスプロバイダでのエンジニア経験を持つ山本裕介氏(サムライズ代表取締役者社長)、IBMでSI部門から研究所に移り、現在はスマーター・シティー事業のCTOである榊原 彰氏の3名。モデレーターは、co-meeting 取締役CTOの吉田雄哉こと吉田パクえ氏が務めた。
ハードウェアを持つことは今やネックに
ディスカッションの最初のテーマは「クラウドを活用した開発とは?」。モデレーターの吉田氏より、「みなさんはどんな場面でクラウドを利用しているのか。クラウドの登場により変わったこと、そしてクラウド利用では何を重視しているか教えてください」とパネラーに発言を求めた。
伊藤氏は「いまや、どんな場面でクラウドを使うのかというレベルは越えており、これから2年ほどでクラウドを当たり前のように使うようになっていると思う」と回答。クラウドの登場で変わったこととして、「ハードウェアの調達の意味が変わったこと」を挙げた。10年前までは、自社でハードウェアを調達しシステムを構築することが市場での価値を生み、他社との競争優位性にもなっていたが、2009年ごろから、ハードウェアを自分で持つことは、むしろビジネスや競争のネックになってきたという。
また、クラウドの活用で重視しているのは、「スケーラブルであること」と「スピード」だという。スピードというのは開発期間の話だけではなく、メリットを受けるのもすぐであるし、改修や改善などのフィードバックも早いということだ。これは、オープンなクラウド基盤上のエコシステムが成立しているからこそ可能だと伊藤氏は説明した。
山本氏は、自社では主にオンプレミスのサーバーをVPSで運用しているが、「顧客向けのシステム開発には、ほとんどクラウドを利用している」という。そして「クラウドを利用して感じたのは管理がしやすいこと。平常時の運用管理もそうだが、サーバーダウンなどトラブル発生時の対応まで、リモートで行いやすくなっている」と、クラウドのメリットをDevOpsの側面から評価。さらに、セキュリティ重視やミッションクリティカルな業務の継続性を考えるなら、「オンプレミスより、クラウド環境のほうが安全。コストメリットもある」(山本氏)とした。
この意見には、伊藤氏が「運用コストについては、注意しないとオンプレミスより高くつくことがある。クラウドはコストより、API利用の付加価値やスケーラビリティを評価している」と付け加えた。
最後に榊原氏は、「クラウドはどのような場面で有効か、業務で使用して安全面などに問題はないのか、といった議論があるが、クライアント/サーバーシステムや、Webアプリケーションシステムが登場したときにも同じような議論があった」と述べ、新しいタイプのシステムが採用されにくいのは、そのシステムの特性だけに原因があるのではないことを示唆。「たとえば、金融系のシステムをクラウド化するのは難しいといわれているが、現場では、その難しさはもっぱら法律や社内、業界にある制約からくるものと考えている」(榊原氏)
そして、クラウドのメリットについては「やはり何ごともスピードアップになること」を指摘。コストについては「段階的に考えれば、初期費用や初期投資は確実に安くできることと、突発的な負荷の上昇(スパイク)に合わせてオーバースペックなリソースを維持しなくて済む効果があるのではないか」と述べた。