オープニングでは、Japan SoftLayer Summit 2015実行委員長である日本アイ・ビー・エム クラウド・エバンジェリストの北瀬公彦氏が、昨年12月22日にオープンした東京データセンターについて、利用率が好調に伸びていることや、日本のユーザーのためにWebポータルを日本語化し、日本語でのテクニカルサポートを開始したことを説明した。ここでは、続いて行われた基調講演の様子をレポートする。
テクニカルエバンジェリストが語るSoftLayerの魅力と今後の展望
最初に登壇した米IBM SoftLayerテクニカルエバンジェリストのPhilip Jackson氏は、利用者側から見たSoftLayerの魅力、そして2015年の展望について語った。
透過性、スケーラビリティの高さ、構築・運用を自動化するAPIの提供などが大きな魅力
Jackson氏によれば、SoftLayerを利用するメリットは次の点であるという。
- 自社データセンターなどのローカルリソースの延長としてシームレスに利用できる透過性
- WebポータルやAPIなどから利用できる数多くのツールを提供していること
- ネットワークグラフなど、SoftLayerのサービスに関する情報にアクセスできること
また、ユーザーの利便性向上のために、世界中にデータセンターとPOP(Point of Presence)を展開していることも、SoftLayerを利用するメリットに挙げた。最近では、東京をはじめ、シドニー、モントリオール、ミラノ、サンパウロ、ニューヨークに新設。同時に、アムステルダム、ワシントンDC、サンノゼのデータセンターでは設備の拡張を行った。今後も、ヨーロッパ、南アフリカ、東南アジアでの開設、既存のデータセンターの増強を予定している。
各データセンターは複数の「ポッド」で構成されている。ポッドとは、約929平方メートルの独立したゾーンに、150のラック、4,000~5,000の物理サーバー、その他ネットワーク、セキュリティ、ストレージなどの機器を設置したものを指す。ポッドにより各データセンターの構成が統一されるので、設置や運用などの作業が容易になり、スケーラビリティが簡単に得られる。各ポッドは独立しているので、障害が発生した場合などにも他のポッドに影響を与えないといったメリットがある。
また、他社クラウドにない強みとしてJackson氏は「データセンターとの接続に、パブリック、プライベート、管理用の3種類のネットワークを用意している点」も強調。データセンター間のバックグラウンド通信にはプライベートネットワークが使われるが、無償かつ帯域の制限はない。管理用ネットワークは、設定を変更するなどコンソールを介してサーバーにアクセスしたい場合に利用できる。
続いて、Jackson氏は、SoftLayerの数多くのサービスを便利に活用できるAPIを提供していることを説明。これはIBM社内で使っているAPIと同じもので、Python、PHP、Perl、ASP.NET、C#、Javaなどをサポートしているという。壇上でPythonのスクリプトで20台の仮想サーバーを一度にオーダーするデモを行いつつ、環境の構築、運用・管理の自動化が可能になることが大きな魅力であることを示した。
2015年はセキュリティ、ストレージ、API、パフォーマンスなどの機能強化・改善を予定
Jackson氏は、SoftLayerに関する2015年以降の展望を次のように紹介した。
セキュリティについては、2014年末にIDS/IPS(侵入検知/侵入防止システム)、TXT/TPM(不正プロセスの実行を阻止するハードウェアベースの認証機能)をリリース。2015年にはシングルサインオンを可能にする連合ID(Federated ID)、暗号鍵のライフサイクル管理、APIの監査ログといった機能のリリースを予定している。
ストレージについては、2014年末から高パフォーマンスのストレージを提供しているほか、IOPSなどによりパフォーマンスのレベルを指定可能であることを説明。今後は、アーカイブ用途の低パフォーマンスのストレージ、データを分割して複数のデータセンターに送信できるマルチファシリティ機能、重要ではないデータを冗長化しない分低コストで利用できる低冗長化機能などを提供していく予定という。
その他にも、VLANの自動化などネットワーク関連の設定・構成用によりわかりやすく使いやすいAPIの提供、Intel Xeron v3(Haswell)の導入によるパフォーマンスの向上、プロビジョニング時間の改善などを挙げた。