高柳謙氏、川添真智子氏の両司会者の元、Developers Summit 2015の最後を締め括るセッションの幕が開きました。
「アジャイルヒーローは誰だ!?」(及部敬雄氏)
トップバッターとして登場したのは楽天株式会社 メディアサービス開発課 及部敬雄氏。開始早々ステージ中央に移動して参加者にストレッチを促すなど、セッションタイトルの「TED」らしい振る舞いを見せつつ、「アジャイルヒーローは誰だ!?」というテーマで先陣を切りました。
及部氏はアジャイルとの向き合い方について、「一時期、アジャイルアジャイルと呪文みたいにに言ってくるような面倒臭い人達が嫌いでした」と心境を語ります。アジャイルが広まるにつれて、「アジャイルでは○○だから……」と語り出す人が増えてきたのを実感したのだそうです。これを及部氏は「アジャイルカオス期」と呼び、こういったフェーズは何もアジャイルに限らずやってくるものだとコメントしました。及部氏は続けて「翻って自分達を見返してみると、現場を良くして行きたいという思いがまず先にあった。そう思って頑張ってきた結果、それらがアジャイルだった、というだけのこと。」と取り組む際のマインドについても指摘を加えました。
「では、アジャイルヒーローは誰になるんでしょう?」及部氏は現場における立ち位置の中で誰がその役となるのか、会場に語り掛けます。現場ではトップダウンとボトムアップ、両方の話が出て来ますが、生産活動の実行者は現場であるという点は疑いの無い部分でしょう。現場のボトムアップが無ければ、改善への道は何も始まらないのです。
ならば、始める際には何を拠り所にすれば良いのか。幸い、近年発売されて大反響を呼んだ書籍『アジャイルサムライ』(著:Jonathan Rasmusson氏、監訳:西村直人氏・角谷慎太郎氏、翻訳:近藤修平氏・角掛拓未氏)が第一歩を踏み出すためには参考になりますし、アジャイルに関する事例をWebで検索しても、数多くの情報を見つけることができます。このような情報を使い、現場で発生する様々なギャップに立ち向かっていくことが出来るのだ、と及部氏は問題への取り組み方のヒントを紹介すると共に「これらの情報は、どうやってストーリーを展開していったのか、その点についても理解しておかないと難しい部分もある」と気を付けるべきポイントについてもコメントしました。
及部氏は、あるチームのストーリーを例に挙げます。チームの抱えていた様々な問題を前に、まずは数あるプラクティスの中からたった1つだけ、「ふりかえり」を導入することから始めました。1週間に30分、皆で考えて皆で決める、全員で取り組むことがポイントだったと言います。この「皆で」と言うのがとても大事で、次第に自分達に必要なものは自分達で調達、導入し、数多くの改善を行えるように成長して行ったそうです。「これだけ改善出来たのであれば、良くならないはず、ないでしょ? でも皆、いきなり成長したわけではないんです。自分達で考え、自分達で成長していったのです」と改善に結び付いた要因について語りました。
「勉強会に参加する回数よりも、自分達でやったTRYの数を重要視している。インプットとアウトプットを繋げることに意味があるし、もちろん、これまでに沢山の失敗もしています。小さな成功や失敗を積み重ねた先に、やりたいことが見えてくるのです。」「ヒーローは誰か? いや、ヒーローは要らない。チーム全員でヒーローを目指していくのが良いのではないか。失敗しても良い、失敗しても大丈夫なチームがあることで、そんな環境が作れるのではないかと思います。」とコメントし、発表を締めました。