実施手順
ふりかえり手法の説明

今回はポジティブな感情や行動をそのままに、削ぐことなく、やりっぱなしを軌道修正するためのふりかえり方法を紹介します。YWTを使ったふりかえりが、今回のシチュエーションには良い選択ですね。さて、YWTとはどんなふりかえり方法なのでしょうか? YWTとは、英語ではないんです。日本語で、Yatta(やったこと)、Wakatta(わかったこと)、Tsugi(次にやること)の頭文字なのです。

※参考:『人材戦略 MBO機軸の人事評価からYWT機軸の人事評価へ』(高原暢恭 著/株式会社 日本能率協会コンサルティング)

これは、実践したことからの学びや経験、気づきをふりかえって、試行錯誤しながら進んでいく際に、やりっぱなしにせず立ち止まって考えるのにとても有用なふりかえり方法です。ネガティブに陥らず、良いところを引き出し、そこをさらに伸ばしていけるんですね。
事前準備
以下の部材を用意すると良いでしょう。
- 付箋紙(強粘着 75mm × 75mm)
- サインペン(人数分)
- 模造紙 or ホワイトボード
- タイマー(スマホ)
- 甘い物(チョコレート)
甘い物があると場が和み、会話が促進されます。リラックスした雰囲気を醸し出しましょう。

メンバーのスケジューリングと場所の確保
- 実施時間:30分~1時間程度
1人当たりの話す時間を考慮して全体の時間を確保しましょう。それぞれが話す時間が5分以下では伝えられる情報は減ってしまいます。
開催頻度やフィードバックサイクルの決定
1カ月に1回だと間が空きすぎて、前回実施したときの状況や感じたこと、前後関係などを忘れてしまいます。1~2週間に1回は実施したいものです。
ふりかえりの概要の決定
ふりかえりの概要を事前に決めてメンバーに周知しておきましょう。
- 日時
- 場所
- 頻度
- 対象期間
- 対象範囲
- テーマ
- 目的とゴールをどこに置くか
- 参加メンバー
フェーズが初期の頃やメンバーの練度が低い場合は、対象範囲、対象期間、テーマをある程度絞った方が意見が出やすいでしょう。

当日の流れ
当日の大まかな流れは以下の通りになります。
- オープニング(5分):テーマや場作りの説明
- ふりかえり(45分):個人ワークとグループワークを繰り返す
- クロージング(5分):アクションプランと感謝

1.オープニング(5分)
- この場は、評価に関係ないことを宣言
- 反省会や、犯人が誰かを見つけるといった後ろ向きの場ではないことを告知
- 時間を有効に活用するために、ワークの時間割を説明
- 好ましくない発言や態度をしないように合意をとる
- これらをグランドルールとして共有
2. ふりかえり(45分)
1. Y(やったこと)
-
個人ワーク(5分)
- いろいろなできごとを思い出す
- 長所を伸ばすため良かったことやちょっと自慢したいことなどを含める
- 口に出さずに1枚の付箋紙に1つの「やったこと」を書き起こす
-
グループワーク(10分)
- 書き出した付箋紙を1人1枚ずつホワイトボードに貼り出す
- 手短にその内容を話す
- 次の人にバトンを渡す
- 一巡したら次の1枚をホワイトボードに貼り出すことに戻り繰り返す
- 制限時間と配分を意識しながら共有し続ける
「やったこと」の事実が洗い出され共有できたら、次は「わかったこと」に進みます。やったことに対する各々の気づきを出していきましょう。
2. W(わかったこと)
-
個人ワーク(5分)
- 「やったこと」からの学び、気づき、発見したことを考える
- 背景にはどんな好都合・利益、不都合・不利益があったのかを深掘りする
- 口に出さずに1枚の付箋紙に1つの「わかったこと」を書き起こす
-
グループワーク(10分)
- 書き出した付箋紙を1人1枚ずつホワイトボードに貼り出す
- 手短にその内容を話す
- 次の人にバトンを渡す
- 他のメンバーの「わかったこと」に対する共感から新たな気づきを付箋紙に書き起こす
- 一巡したら次の1枚をホワイトボードに貼り出すことに戻り繰り返す
- 制限時間と配分を意識しながら共有し続ける
「わかったこと」が共有できたら、次は「次にやること」です。どんな行動をして成長したいか考えていきましょう。
3. T(次にやること)
-
個人ワーク(5分)
- 「わかったこと」の学びや深掘りを生かして、次の行動はどうするか考える
- 口に出さずに1枚の付箋紙に1つの「次にやること」を書き起こす
-
グループワーク(10分)
- 書き出した付箋紙を1人1枚ずつホワイトボードに貼り出す
- 手短にその内容を話す
- 次の人にバトンを渡す
- 一巡したら次の1枚をホワイトボードに貼り出すことに戻り繰り返す
- 制限時間と配分を意識しながら共有し続ける
- 簡単に実施できて効果が高い順、もしくは緊急で重要度の高い順で優先順位を整理する
3. クロージング(5分)
- 「『次にやること』が次回のふりかえりの「やったこと」として実践できそうですか?」とファシリテーターが質問をする
- 「『次にやること』これが上手くいっていると判断するためにはどうしたらいでしょうか?」とファシリテーターが質問をする
- 次回の開催日を共有
- ファシリテーターから、参加者の協力と共感に感謝を伝えポジティブな雰囲気を醸し出す


これらの手順でYWTのふりかえりをぜひ、実施してみましょう。共有の仕方や時間配分など、慣れてくるに従って、さまざまなバリエーションが生まれるでしょう。それで良いです。
「やったこと」という事実と、「わかったこと」という個人の解釈の中で、失敗だとか場が暗くなるようなネガティブなことも出るでしょうが、まず事実として受け止めましょう。それをもとに次にチームで取り掛かると良さそうなアクションをつくりだせるのが、このふりかえりの良いところです。
そして、自ら発言し、言語化し、付箋起こしをすることで自己コミット感が高まります。自分との約束になるので、責任感を持ってモチベーション高く、自分ごととして取り組めるのです。この何気ない一つひとつのふりかえりの場が自律的な組織へと成長していく時間となるんですね。
個人の実践知、経験、学び、発見を尊重し、メンバーの成長をも促せるのです。ふりかえりを一過性のもので終わらせず、ぜひ習慣化させてください。
エピローグ
片瀬さんが教えてくれたふりかえりをやるようになって、自分の抱えている問題が何か少しずつわかるようになってきた。ふりかえりには、片瀬さんと御涼さんがつきあってくれて、それぞれ気づいたことを言ってくれた。
「依頼されたタスクがどうなれば完了と言えるのか、1人で想像し続けても答えが出ないことはよくあることだから。ちょっと考えてみてわからなかったらまだその仕事を始められないということ」
「そうね。できれば引き受けるときに、タスクのゴールをすりあわせた方がいいね」
1人で悶々とすることが多かった私にとって、片瀬さんと御涼さんがふりかえりに付き合ってくれることはとてもありがたかった。正直上手くいかないことは相変わらず多いけれど、二人のフォローもありつつ、何とか自分でやれることも増えてきた。やれることが増えると、チームのミーティングで流れていた微妙な空気も減っていった。ようやくこのチームでの仕事のスタートラインに立てたような気がした。
それからほどなくしてのことだった。片瀬さんが会社に来られなくなってしまったのは。 (つづく)
今回の原則の解説:立ち止まって考える
ここでは最後に、毎回のカイゼンにおける原則を解説します。今回のテーマ「ふりかえり」の原則は、「立ち止まって考える」です。以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
- 根本意図や目的を再確認し、思い込みや勘違いなども含め固定概念を疑おう
- 効率性を考えたり、より安全に、より楽に業務が回るように思考を巡らそう
- 自己・組織のスキルアップにつなげ成長の報酬にしよう
本連載を深く理解するには、書籍『カイゼン・ジャーニー』の併読がオススメ!
実践編セミナー「機能するチームを作るためのカイゼン・ジャーニー」開催!
CodeZine Academyにて、著者の市谷氏、新井氏を講師に迎えたセミナー「機能するチームを作るためのカイゼン・ジャーニー」を開催します。「講義」と「ワークショップ」で、書籍や連載の内容をさらに実践的に学ぶことができます。以下の通り、申し込み受付中です。
- 開催日時:2019年7月12日(金)10:00~18:00
- 受講料金:54,000円(税抜価格50,000円)
- 場所:株式会社翔泳社 セミナールーム
- 詳細・申し込み:https://event.shoeisha.jp/cza/20190712

