超繁盛店のメソッドをトレタの予約管理/顧客管理データから導き出す
「外食産業や飲食店が、今どんな状況にあるのかについてお伝えします」
飲食店向けの予約/顧客台帳サービスを展開する株式会社トレタCOOの吉田氏は、そのメッセージに思いを込めてセッションを開始した。
吉田氏いわく、同社の計測/観測によれば、飲食店を予約する際は電話を使うことが約7~8割と圧倒的に多く、近年では急速に普及してはいるが、Webサイトで予約する顧客はまだ2割程度だという。「そのボトルネックは飲食店の中にあると考えています」と吉田氏は語る。
「飲食店のボトルネックになっているのが『空席在庫』です。私たちは、飲食店の席を『在庫』と考えており、その在庫をデータとしてクラウド上で管理する、飲食店スタッフ向けの業務支援ツールを提供しています」
トレタの企業ミッションは、「食の仕事を、おもしろく」。具体的には、飲食店の仕事をクリエイティブにし、多種多様性のある飲食店や食文化が生まれる手助けをしたいといった思いが込められている。
「飲食店の多くはIT化が進んでおらず、気合と根性で切り盛りする人海戦術でなんとか乗り切っており、繁盛店になると休憩すらあまりとれない状況です。それでは新しい工夫やチャレンジがしづらい環境になってしまいます。もっと付加価値のある仕事に集中してほしい。人でなくてもできる業務はIT化し、飲食店の個性を発揮できるような世の中にしたい。それが多様性のある食文化につながると考えています」
その中で同社が提供したいバリューは、「飲食店の繁盛」だと吉田氏は言い切る。予約/顧客台帳サービスを通じて、飲食店に繁盛してほしいと考えるようになったのだという。
では、「繁盛」とは何か。儲かっているお店、いない店、だんだん儲かっていく店……トレタに蓄積されたデータから、それぞれの繁盛店の相関関係がわかるようになってきた。
吉田氏が挙げたいくつかの事例を紹介しよう。
【CASE1】新規引き率の高い販促型店舗
客単価3000円ほどの渋谷にあるカジュアルな居酒屋は、以下のグラフからもわかるように、新規顧客が多く、リピーターが少ない。これは決して飲食店が悪いわけではなく、客単価3000円くらいの店は予約していくというよりは、「ウォークイン」という予約しないで気軽に入ることが多く、予約をしていないだけで、実際はリピーターや常連客が存在するかもしれないということだ。
【CASE2】販促店から繁盛店に成長した店舗
2年目からリピーターが増え、販促店から繁盛店に成長した店舗として紹介されたのは、客単価5000~6000円のバル業態のお店。1年目はトレタに慣れる期間と考え、2年目からある変化を加えたのだという。バルというお客さまと近い業態であることを活かし、顧客の注文や気に入っていたワインや食べ物の志向を記録し、接客をパーソナライズしていった。すると、リピーターが3~4割増え、繁盛店になっていった。
飲食店では、坪月商(一坪当たりの売上高)がひとつの指標とされている。トレタはシステム上で売り上げのデータは取得していないが、店舗からもらったデータを合わせてみたのが以下の図だ。2年間で坪月商が16万円から33万円と倍になった事例である。
【CASE3】超繁盛店のリピート/新規比率
また、4人に1人がリピーターというかなりの繁盛店では、予約で来店したリピーターには必ず1品サービスするオペレーションを行っており、リピーター獲得の施策がかなり効果を上げている。これはソーシャルゲームのリピーター獲得でもよく使われる手法に近しい。
「トレタが取得したデータから分析してみると、繁盛店になるカギはリピート顧客であることがわかってきました。しかし、ほとんどの飲食店はリピーター化に失敗しています。新規客が1000人来店しても、2年後に2名しか残らないというのが現状です」
トレタではどれだけ顧客が定着しているかという常連化曲線をデータから作成し、初めて来店した人が2回目に来る確率は10.6%、2回来店した人が3回目に来店する確率は32.3%という確率を導き出した。
上図からわかる通り、リピーターを獲得する勝負は1~3回目でほぼ終わっており、初回から2回目、2回目から3回目のコンバージョンをどれだけ上げるかが重要だ。しかし、トレタではそこが難しい課題だと考えた。
なぜなら、ソーシャルゲームなどのデジタルのサービスであれば、初回ログインから2回目のログインまでどれだけ時間が空いたのか、ログイン状況がデータでわかるので、それぞれのユーザーに向けた施策やイベントが取得できる。だが、飲食店ではそれは非常に困難である。
人間が人間を接客する飲食店にとって、初回来店と2回目来店を見分けるのは非常に難しい。常連になったお客さまは覚えていても、来店2~3回目の常連予備軍をどう検知して対応するか。同社ではそれをどうサービスとして提供し、どんなお店でも繁盛を実現しやすくするべく試行錯誤を繰り返しているという。