非テック企業で、エンジニアの必要性を認知してもらうために
清田氏が所属するデータ&テクノロジーソリューション部は、社内に蓄積された膨大なデータと、AI・機械学習・ブロックチェーンなどの技術をかけ合わせ、各事業部のデータにまつわる課題解決や新規ビジネスの企画開発を行う部署だ。2015年のデータ分析専門チームの組成から現在まで、各種の技術を用いて以下のようなシステムを構築してきた。
機械学習
- AWSにデータ分析基盤を構築
- 求人広告の内製レコメンドエンジン開発(Amazon EMRを利用)
- 基幹システムへの機械学習モデルの適応(モデル作成にApache Sparkを利用)
- 企画部門でDataRobotを利用開始
- Hortonworks Data Platform(HDP)、IBM Power Systems、IBM POWER9を導入してのデータ処理基盤の拡充
- 重要で重量な基幹バッチをApache Sparkで改善
音声活用
- キャリアアドバイザーと転職希望者とのカウンセリングの音声を収集・蓄積・テキスト化(分析基盤にはGoogle Cloud Platformの各種マネージドサービスを活用)
ブロックチェーン
- 分散台帳を介して、企業間での社員情報の共有(ただし、まだ実証検証中でありサービス化には至っていない)
2014年の時点では、パーソルキャリア内にはITエンジニアは2名しか存在していなかった。だが、2019年には累計で100名まで到達したという。どのようにしてエンジニア組織を成長させていったのだろうか。
「私がパーソルキャリアに入社したのは2014年です。当時は、エンジニアのための開発環境が何もない状態でした。開発には不向きな会社規定PCが配布される、AWSやGCPといった各種クラウドサービスが利用できない、GitHubやAWSなどさまざまなサイトへの接続がブロックされているなど、数多くの制約があったのです。
テクノロジーが中心ではない企業の社員は、『なぜエンジニアの求めている環境が必要なのか』がわからない状態です。だからこそ、エンジニアが要求する開発環境の根拠をひとつずつ丁寧にメンバーに説明していきました」
その結果、現在の開発環境は相当に改善された。開発に向いたスペックの高いPCを使えるようになり、AWSやGCP、Azure、IBM Cloudなど各種クラウドサービスも利用可能。また、エンジニア用の専用ネットワーク回線が用意され、アクセス制限を緩和して各種サイトを利用できるようになった。
「エンジニア組織の組成にあたり、採用には非常に苦労しました」と清田氏は語る。なぜなら、パーソルキャリアでエンジニアを採用していることの認知度が非常に低かったためだ。認知度向上のため、勉強会の主催や登壇、Webメディアへの売り込み、社内外のエージェントへの説明行脚など、エンジニア自ら地道な広報活動を続けたという。
社内でも、エンジニア認知度を上げるための活動を行った。「何千人もが所属する企業でエンジニアがわずか数名」という状態では、そもそもエンジニアがいることを社内のメンバーが認知していないのだ。ミドル部門やバック部門のサポートを積極的に行いながら、「エンジニアがいれば、多種多様な業務改善が可能になる」という情報を浸透させていった。