営業中心の組織で、エンジニアの文化を構築するには
地道な採用・広報活動を続け、エンジニアの人数は増えた。だが課題は残っている。パーソルキャリアの社内の仕組みそのものが、営業組織に最適化されていることだ。例えば、「内部でシステム開発する前提にない」「ITリテラシーが低めであることが前提のガバナンス体制」「給与体系や評価体制も営業への貢献度をベースに評価される(2019年10月から一部改訂)」などの特徴がある。
そもそも、なぜ営業に特化した組織構造になるのだろうか。清田氏はその理由を組織論の観点から言及する。組織の目的のひとつは、役割を分けることで専門性などのメリットを追求すること。そのために行われるのが「分業」である。そして、多数の人々の活動が、あたかもひとつの全体であるかのように振るまわせるため行われる活動が「調整」だ。
また、階層状の組織ヒエラルキーは「例外処理への対応」と「不確実性の解消」を目的に構築される。想定外のトラブルなど意図していなかった事態への対応方針を、上の階層の人間に判断してもらうという組織構造になっているのだ。パーソルキャリアの場合、こうした組織構築の方法論を営業に最適化させるほうが、企業の生存にとって効果的だったわけだ。
「営業という業務を中心に組織が最適化されているのであれば、デジタル組織も部分最適化してもいいのではないかと考えています。なぜなら組織体制は、主となる業務に依存するからです。非テック企業がこれからテクノロジーを武器にしていくには、組織構造の仕組みそのものを見直したほうが都合がいいでしょう。
では、どう最適化すべきかを考えたときに、本を読んで良いテーマにたどり着きました。『デフレーミング戦略』です。デフレーミングとは造語で、『伝統的なサービスや組織の枠組みを越えて、内部要素を組み合わせたり、カスタマイズしたりすることで、ユーザーのニーズを応えるサービスを提供すること』を指します。
もともと営業の業務を中心とした組織構造であったものを、個別のタスクを細分化してエンジニア組織に最適化するための手法として、デフレーミングが適応できるだろうと考えています」
さらに、「基幹システムが肥大化している」という課題もある。基幹システムが巨大なモノリスであることで、変更・影響箇所把握の工数が増加してしまう。また、多くのステークホルダーがいることでコミュニケーションコストが増大し、要件のズレをシステムでカバーするようなことが発生する。ビジネスロジックが複雑であることで、改修やテストの漏れ、品質の低下を招いてしまう恐れもある。
これらの課題を解決するには、開発手法の刷新が必要だ。そのためパーソルキャリアでは現在、アジャイル開発を浸透させようと努力を続けている。だが、旧来の開発サイクルをとっていたメンバーに、いきなり開発手法の変化を要求することは難しい。そのため、IT部門、企画部門を交えてのスクラム開発研修を行っているという。
また、「既存ビジネスを整理したうえで、システム開発を推進していくのが重要である」との考えから、ドメイン駆動設計もスタートしている。この施策を推進するにあたっては「IT部門が主体となり、企画部門と一緒になってビジネス的なまとまりについて考えていくことが重要」と清田氏は強調した。
「今後、テクノロジーを活用してビジネス活動をしていくのであれば、組織や基幹システムそのものを、それに適した状態にしなければなりません。今後も、地道な改善を続けていきます」
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