MySQL Technology Cafeで新しい人を呼び込みたい
MySQLとコミュニティは切っても切り離せない。参加者の多くが会社やビジネスとは関係なく自主的に活動し、コミュニティだけではなくプロダクトも支えている。
「こんな機能が必要だ」と思えば自発的に作る(言い出しっぺの法則)。便利なツールを見つけたら、みんなと共有する。受けいれる側の寛容性も大きい。誰かが「やってみたい」と提案すれば、「どうぞどうぞ」と快諾して背中を押す。日本MySQLユーザ会(MyNA)が温和な文化なので、派生するコミュニティも似た文化が波及している。
位置づけで見ると「MySQL Technology Cafe」は「Oracle Code Night」の一環となる。オラクルが主導する開発者向けの勉強会「Oracle Code Night」が始まり、「それならMySQLも」という流れで発足した。
企画の中心で動いているのが日本オラクル MySQL GBU 梶山隆輔氏。テーマの策定や発表者のスカウトなどしている。もとはMySQLのユーザーだったが、2008年から「中の人」となった。今ではソリューションエンジニアリングチームとして顧客企業にMySQL導入の支援を行っている。
あらためて整理すると、日本におけるMySQLコミュニティの中心となるのがMyNA(日本MySQLユーザ会)。2020年には20年周年を迎える。コミュニティが長く続くと、コミュニティ参加者の知見が深まるものの、新しく参入する人にはハードルが高くなりがちだ。メンバーの固定化にもつながりかねない。そこで気軽にMySQLを語り合うための場となる「MySQL Casual」もある。
ここに新たに「MySQL Technology Cafe」が加わった。2019年2月に初回、2019年12月5日には6回目を開催した。夜7時に開始し、大抵2~3人が登壇し、最後にネットワーキングの時間を持つ。MyNAでは登壇者が缶ビールを「プシュ」と開けてから語り出すのがお約束になっており、「MySQL Technology Cafe」も登壇者は飲み物を片手に話すことが多い。話すほうも、聞くほうも気楽になれる。
梶山氏は「MyNAやMySQL Casualもあるけど、さらに新しい人を引き込みたい。特に登壇者」と話し、新人の登壇者発掘に意欲的だ。
企画の選定はテーマと登壇者、どちらが優先かと聞くと、梶山氏は「どちらもあり」と答える。できるだけこれまでコミュニティで扱わなかった新しい話題も提供できるようにしているという。
例えば2回目は「JavaからMySQLをドキュメントデータベースとして使ってみよう」と題して、Javaと絡めたMySQLの使い方を紹介した。意外にも、MySQLコミュニティでJavaを扱ったのは珍しいそうだ。MySQLがかつてサン・マイクロシステムズだったことを知る人であれば「意外」と感じるだろう。ありそうで、なかったらしい。
4回目にはかつてMySQLにいて、今ではFacebookで活躍している松信嘉範氏がFacebookにおけるレプリケーションと高可用性について解説した。今ではアメリカ在住なので松信氏の話はとても貴重で好評だったそうだ。
3回目に登壇したビットキャッシュの金山和純氏、5回目の高野周哉氏は初登壇だったそうだ。高野さんは自作ツールの紹介で「マニアックなツールだからみんなの役に立つかどうか」と心配していたそうだが「いいよ、いいよ。話して」と周囲が激励して発表につながった。MySQLコミュニティ全体がこのようなノリなのだ。
登壇者の選定は梶山氏や日本オラクルのMySQLチームが持つ人脈や機会をフル活用。イベントでは最後に「次に話したい人いる?」と聞いているため、そこで手が挙がることも少なくない。なお、イベントでは登壇者に、MySQLのマスコット、サキーラのぬいぐるみが贈呈される。これが好評だそうだ。
全体として「MySQL Technology Cafe」はいい意味でとてもユルい場となっている。気負うことなく、打ち解けた雰囲気がある。厳密なルールはない。梶山氏に今後の意気込みを聞くと「いきごまない。このユルさは貫きたい」と笑う。