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ProductZine Dayの第2回開催です。

ProductZine Day 2024 Winter

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プロダクト開発の先進事例に学ぶ、キーパーソンインタビュー

スピード感のあるリリースと学習の繰り返しが「理想」への近道――「KARTE for App」でプレイドが掲げるプロダクト開発の思想

 現在ユーザー数を急速に伸ばしつつあるプレイドのCXプラットフォーム「KARTE」。そのネイティブアプリ向けの「KARTE for App」が先日メジャーアップデートし、OSS化も果たした。プレイドではプロダクト開発において何を大切にし、どのような思想で今回のアップデートが行われたのか。同プロダクトをけん引するプロダクトマネージャーの棚橋寛文氏、リードエンジニアの古賀友規氏に詳しく伺った。(編集部)

「KARTE for App」のメジャーアップデートと、そこに根付く思想

 企業と顧客の接点が多様化し、インターネットを通じたコミュニケーションの重要性が増している現在、Webサイトやアプリにおける体験の質は、ビジネスに大きなインパクトを与える要素だ。企業が顧客体験(CX)を継続的に向上させるためには、どのような属性の顧客が、サイトやアプリでどのような行動を起こしたかを、できる限り細かい粒度で把握し、その分析を通じて迅速に改善を行っていく必要がある。

 こうしたCXの向上を実現するツールとして、現在ユーザー数を急速に拡大しているのがプレイドの提供するCXプラットフォーム「KARTE(カルテ)」だ。正式サービス開始から約5年の間に、ITサービスやデジタルメディアのみならず、製造・小売・流通・金融・保険をはじめとするさまざまな業界で採用が進んだ。2018年3月には、iOS/Androidのネイティブアプリ向けのプロダクトとして「KARTE for App」をリリースし、そこから2年ほどの間に、KARTEローンチからの累計で68億以上のUUを解析するプラットフォームへと成長した。

 2020年5月11日、プレイドは「KARTE for App」について初メジャーアップデートを実施。同時に、SDKのオープンソースソフトウェア(OSS)化を行った(参考記事)。アップデートには「ビジュアルトラッキング」「リテンションレポート」と呼ばれる新機能が実装されたほか、SDKのOSS化によって、より多くのユーザーが、安心して自社アプリに「KARTE for App」を導入できる環境を整えたという。

 今回は、プレイドでこの「KARTE for App」のプロダクトマネージャーを務める棚橋寛文氏と、リードエンジニアとしてSDKのOSS化を進めてきた古賀友規氏に、同社におけるプロダクト開発の思想や、KARTE for Appの最新版およびOSS化が目指す方向性について伺った。

棚橋寛文氏

 株式会社プレイド プロダクトマネージャー。

 2017年2月にプレイドへ入社。「KARTE for App」の立ち上げからグロースまでの全般に関わり、現在は事業責任者兼プロダクトマネージャーを務める。過去には、楽天で新規サービスの企画/ディレクションやマーケティング、ビズリーチでプロダクトマネジメントなどの担当を歴任。

古賀友規氏

 株式会社プレイド リードエンジニア。

 「KARTE for App」リリース直後の2018年4月にプレイドへ入社。以来「KARTE for App」のモバイルSDK開発に携わり、今回のOSS化においても中心的な役割を果たした。モバイルアプリ開発は8年以上手がけており、大手オークションサイトや著名ECサイトなど、20本弱のモバイルアプリ開発を担当。

「目的指向」と「学習指向」で進むプレイドのプロダクト開発

――プレイドは、プロダクト開発にあたって、どのようなスタンスを持っている企業なのでしょうか。

棚橋:プレイドは「データによって人の価値を最大化する」という企業ミッションを掲げています。KARTEを中心としたプロダクト開発においては、そのミッションに近づくための理想的なプロダクトのあり方をイメージし、必要な要素を形にするという進め方をしています。その意味では、競合の状況やユーザーニーズが主導するというよりも、「プロダクトアウト」的な作り方をしていると言えるかもしれません。

 その際、大切にしているのは「目的指向」と「学習指向」です。まずは達成したい目的を念頭に作ったプロダクトを世に出し、それに対するユーザーのリアクションから学んで、改善を行っていく考え方です。状況変化が激しい中では、スピーディーにプロダクトを世に出し、その結果から学んで、次の施策を打つというサイクルの繰り返しが重要です。そのために、一度作ったものであっても、必要があれば壊し、新たにより良いものを作っていくことをためらわない社風があると思います。

――今回、「KARTE for App」でリリース後初のメジャーバージョンアップが行われました。その内容について教えてください。

棚橋:もともと「KARTE」は、Webサイトに訪れる顧客の行動データを一人ひとりの軸で詳細に解析して、それを必要な粒度で可視化できるプラットフォームとして、2015年3月に正式サービスを開始しました。企業は、顧客の行動データに対する解析結果から施策を検討でき、タイムリーにリアクションを行うことで、CXを高めることができます。「KARTE for App」は、こうしたKARTEの機能を、iOSやAndroid向けのネイティブアプリでも活用できるようにするものです。

KARTEの来訪者一覧画面
KARTEの来訪者一覧画面
KARTEの来訪者詳細画面
KARTEの来訪者詳細画面

 この領域には、商用、OSS問わず多くの製品がありますが、KARTEは、リアルタイム性が高く「今この瞬間」の顧客行動をもとにした解析やリアクションが可能な点、年代や訪問数だけでなく、必要に応じて具体的な行動履歴などを含む詳細なセグメント分けができる点、企業で既に導入しているLINEやメールを含めたマーケティングツールとの連携が容易な点などで、優位性が高いと考えています。

 「KARTE for App」は2年前にリリースしました。プレイドではカスタマーサクセスに注力しており、リリース後に多くのユーザーと対話をしてきたのですが、そこでのフィードバックを通じて見えてきたユーザー共通の課題が「UX向上のためにアプリを良いものにしていきたいが、そのスピードがなかなか上がらない」というものでした。

 実装からビルドまでの開発作業に時間がかかるというのはもちろんですが、アプリの場合はWebサイトと異なり、リリース後にストアでの審査や、ユーザー側でのアップデートが必要になります。新しい機能を追加しても、その効果が実際に計測できるようになるまでにどうしても時間がかかってしまうのですね。この、顧客行動の計測と可視化からインサイトを得て、次のアクションを起こすという「学習ループ」を、より迅速に回せる仕組みが必要だと感じていました。

顧客行動の計測と可視化からインサイトを得て、次のアクションを起こす「学習ループ」
顧客行動の計測と可視化からインサイトを得て、次のアクションを起こす「学習ループ」

 今回のバージョンアップで「KARTE for App」に追加された「ビジュアルトラッキング」や「リテンションレポート」といった新機能は、この「学習ループ迅速化」の支援を強化するものになっています。

 例えば「ビジュアルトラッキング」では、アプリ内での顧客行動を分析するにあたって、追加で計測したい指標が出てきた場合、ユーザーがKARTEの管理画面から設定を行い、即座に計測を開始できます。新たな計測にあたって、開発者の手を煩わせたり、審査やアップデートを待ったりする必要がなくなり、学習ループのサイクルをより迅速に回せるようになります。「リテンションレポート」では、顧客の「継続率」に注目し、それがどのような属性や行動履歴と深く関係しているのかを詳細に分析できます。ビジュアルトラッキングとの組み合わせで、得られたインサイトを、すぐに次の施策へとつなげていくことができます。

次のページ
OSS化は開発者を含むユーザーの「安心感」「信頼感」に寄与する

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この記事の著者

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

株式会社翔泳社 ProductZine編集長。 1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテック...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

柴田 克己(シバタ カツミ)

フリーのライター・編集者。1995年に「PC WEEK日本版」の編集記者としてIT業界入り。以後、インターネット情報誌、ゲーム誌、ビジネス誌、ZDNet Japan、CNET Japanといったウェブメディアなどの製作に携わり、現在に至る。 現在、プログラミングは趣味レベルでたしなむ。最近書いてい...

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