テクノロジーの適応力と能力に信頼も マイクロソフトが考えるテクノロジーの強さ
基調講演冒頭に登場したのは日本マイクロソフト株式会社 執行役員 最高技術責任者 兼 マイクロソフト ディベロップメント株式会社 代表取締役 社長 榊原彰氏。コロナ禍を通じて同社のミッションについて深く考えたという。
これまでも世界はたびたび経済危機や自然災害に見舞われてきた。リーマンショック後にはシェアリングエコノミーが台頭するなど、危機の後には新たなITの萌芽もあり、復興の支えになった。榊原氏は「この危機もいつか必ず乗り越えられると信じています。ですが、道は平坦ではありません」と語る。
これからの社会課題を解決していくには、技術はより高度に、複合的な領域に浸透させていく必要がある。パンデミック対策なら、異種のデータを統合し、医療機関はじめあらゆる業界に渡り連携させていくなど。マイクロソフトは社会を構成する各領域や各層にITを導入していくことで社会のスマート化に取り組んでいく考え。
ここ数か月のコロナ禍を振り返ると、感染拡大防止のためのアプリや3Dプリンタで自作したフェイスシールドなど、各自のスキルを生かした社会貢献が散見される。榊原氏は「情熱を持って社会の課題解決に取り組む人たちを応援したい」と話す。
なお榊原氏が紹介したスマートフォンアプリの1つに「Covid19 Radar」がある。過去に接触した人が新型コロナウィルスに感染したら、プライバシーに配慮した形で通知するものだ。GitHubで公開され、オープンソースプロジェクトで開発が進められてきた。
基調講演の公開後に、厚生労働省から公式提供が始まった「新型コロナウィルス接触確認アプリ(COCOA)」はこの「Covid19 Radar」をベースに作られたものだ。有志の開発メンバーには次に登場する廣瀬一海氏も個人として参加している。社会を救うために、オープンソースコミュニティに結集して技術と情熱で立ち向かっているエンジニアがいることを私たちは記憶にとどめておくべきだろう。
マイクロソフトがde:codeで掲げるテーマは「Power of Tech Intensity」。テクノロジーの強さ「Tech Intensity」を数式で表すなら、テクノロジーの適用力(adoption)と能力(capability)を掛け合わせ、かつ指数の位置に信頼(trust)を置いたものとなる。榊原氏は「Tech intensityは情熱を持って、初めて社会の変革に寄与するのです」と熱く語った。
Azure:SPAやPWA開発をサクサクと
マイクロソフトが提供するパブリッククラウドMicrosoft Azure(以下、Azure)は世界で61リージョンに展開されている。2020年5月からはMicrosoft Azureの東日本リージョンとOracle Cloudの東京リージョンの間で相互接続が提供開始となった。日本マイクロソフト株式会社 クラウドネイティブ&デベロッパーマーケティング部 シニアプロダクトマネージャー 廣瀬一海氏が新しい発表として次の3つを挙げた。
Azure Static Web Apps(プレビュー)
SPA(Single Page Application)、PWA(Progressive Web Apps)、静的サイトを無償でホスティングするサービス。Azure FunctionsやGitHub Actionsとの統合でJAMStack(JavaScript、API、Markup)のシームレスなビルドとデプロイを実現する。ビルトインされた認証や承認機構でアプリのライフサイクル管理を効率化する。
Blazor WebAssembly(提供開始)
ASP.NET Coreを利用したフルスタックWeb開発のためのツール。C#.NETの環境をWebブラウザで動かせるようになるため、APIも含めて一貫してC#でコーディングしたり、C#のライブラリ取り込んでSPAやPWAを開発できる。.NET Core SDK 3.1.3以降に対応し、Visual Studio 2019 16.6およびVisual Studio for Mac 8.6、あるいはVisual Studeo CodeにC#拡張機能を追加すれば利用できる。
Azure Synapse Link for Azure Cosmos DB(プレビュー)
NoSQLのAzure Cosmos DBに分析システムからAzure Synapseでダイレクトに接続する。ETLなしで実行できるため、OLTP(オンライントランザクション処理)とOLAP(オンライン分析処理)の垣根を取り払い、リアルタイムに準じた分析が可能になる。
チームのコラボレーションを支える開発ツール強化
パンデミックにより多くの開発者がリモートワークとなり、セキュリティの担保、環境セットアップ、品質維持が課題となっている。またペアプログラミングやデイリースタンドアップをどのようにリモートで代替するかも課題に浮上している。
そうしたなか、Visual Studio Codeでは拡張機能やキーボードショートカットなどを複数の端末で同期し、どの端末からも個人に合わせた操作性を維持できるようにした。ローカル環境もちろん、Visual Studio Codespaces(旧Visual Studio Online)を使えばブラウザからも開発が可能だ。
Visual Studio 2019ではVisual Studio Live ShareとGitHubが統合し、音声機能やチャット機能が追加されるなどリアルタイムの共同開発機能が強化された。
チーム開発の計画、追跡、検討に使えるのがAzure Boards。チケットの追跡をしたり、スクラムボードとプランニングツールを用いて進ちょく会議を実施できる。
GitHubではブラウザから使えるGitHub CodeSpaces、掲示板でコミュニティ機能を追加したGitHub Discussionsが新たに発表された。また企業向けの新たな選択肢としてGitHub Private Instancesが近日提供開始となる。フルマネージドで提供されるGitHub Enterpriseとイメージしていいだろう。
廣瀬氏は「Teamsがハブになり、GitHubとDevOpsの統合がチームコラボレーション力を向上させます」と話した。