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freeeのGYOMUハックに学ぶ、一人で始める業務改善

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2020/11/06 11:00

 「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションに掲げ、2012年の創業以来、「クラウド会計ソフトfreee」を皮切りにスモールビジネスの業務効率化と経営の可視化を実現するためのサービスを提供することで、急成長を続けているfreee。その背景には、サービスを開発するエンジニアリング力はもちろんだが、サポート、マーケティング、セールスなどのビジネスチームの業務をエンジニアリングでサポートするGYOMUハックチームの役割も大きい。さらにfreee社内では、freeeのAPIを活用して、バックオフィスのメンバーも業務改善を行っている。freeeではどのように業務における課題を見つけ、業務改善を行っているのか。一人からでも始められる業務改善について聞いてみた。

目次

freeeがGYOMUハックチームを設置した背景

 freeeはスモールビジネス向けのクラウドERP(統合業務システム)を志向した会計ソフト「クラウド会計ソフトfreee(以下、会計freee)」および人事労務ソフト「人事労務freee」を提供しているSaaSベンダーである。創業は2012年7月。急成長を続けてきた同社は、昨年12月末、東証マザーズ市場に上場した。

 freeeの主力サービスである、会計freeeの特徴の第一は、規模やニーズに応じた最適な業務効率化機能群を単一システムで提供していること。第二にAPIを提供することで、ECサイトや業務システム、電子マネー、決済・レジなどさまざまなサービスと連携していることだ。

 創業当時は主にエンジニアで構成されていた同社だが、サービスが成長するにつれ、サポートやマーケティング、セールスなどのビジネスチームができ、エンジニアではない人たちが増えてきた。急成長に追随する中で、彼らの業務の中には管理コストや作業コストがかなりかかっているものもどんどん増えていったという。そこでビジネスチームの業務効率を改善するためできたのが、データベース設計やシステム設計などの知識のあるエンジニアから成るGYOMUハックという体制である。そして2015年にfreeeに入社し、初代GYOMUハックエンジニアを務めたのが、廣野美里さんである。廣野さんは「GYOMUハックチームは、世界最先端のビジネス組織に導くITスペシャリスト集団という位置づけです」は語る。つまりセールスやサポートなどビジネスチームの業務上の課題を、エンジニアリングを使って解決するという。「最近はバックオフィス系の業務改善も行っています」と廣野さん。

廣野美里(Miry Hirono)さん

freee株式会社 IT推進部ITストラテジー
2010年フィリピン大学工学部コンピューターサイエンス学科卒。
Future Inspace株式会社を経てfreeeに入社。初代GYOMUハックエンジニア。社内ビジネスチームの業務改善/支援を行い、事業の成長をエンジニアリングで支えている。GYOMUハックという分野を広めるため、GYOMU Hackers Guildというコミュニティ運営も担当。趣味はピアノゾンビというロックバンド。

どのようなプロセスで業務改善に取り組んでいるのか

 では具体的にどのようなことを行っているのか。同社のビジネスチームではさまざまなツールを使っている。中には、同じ用途で異なるツールを使っているケースもあるという。例えば、セールスとサポートでは異なるCRMツールを使っていたことから、お客さまからの問い合わせにサポートがセールスに尋ねたり、その逆でセールスがサポート内容を参照したり、という状況に陥っていた。「ツールのコストに加え、業務上のコミュニケーションコストもかかっていました。そこで業務設計を見直し、CRMツールを統一しました」と廣野さん。そこで、よりセールスやサポートの人たちが最適な使い方ができるよう、チャットサポートに自動化処理を組み込んだり、分析が行えるようデータベース設計を行ったりしたという。

 「一つのツールでサポートとセールスそれぞれの業務が見えるようになったことに加え、サポート業務の自動化、さらには業務分析ができるような仕組みができたことでかなりの効率化が実現しました」(廣野さん)

 このように業務改善に取り組み、成果を上げているGYOMUハックチーム。どのようなプロセスで取り組んでいるのか。

 「課題が見える、見えないでプロセスは異なります」と廣野さんは言う。課題が見えないケースとは、良くないという認識はあるもののそれが何なのかわからず、ぼやっとしているような状態である。その場合はまず、現場に観察に行きヒアリングをすることから始める。PDCA(Plan→Do→Check→Act)サイクルではなく、OODA(Observe→Orient→Decide→Act)ループを採用しているのだ。現場で担当者に話を聞くだけで解決することも多いという。

 一方、課題が明確な場合は、ステークホルダー全員に集まってもらい、その業務における理想状態を念頭に置いてディスカッションをする。そしてステークホルダーの共通認識がとれれば、課題と理想のギャップを埋めていく作業を行い、タスクに落として実装していくのである。

 「ここでのポイントは理想の状態がなんなのか、みんなで共通認識を持つことです。ゴールが定まっていないと、どこに向かえばよいか分からなくなりますからね」(廣野さん)

 そのためステークホルダーとの最初の会議には、3時間ほどの時間を取る。最初の1時間は解決したいことややり遂げたいことに対しての理想の状態について、話の粒度など気にすることなく、どんどんキーワードを出してもらう。そして残りの時間を使って、最終的に3~4個ぐらいのキーテーマになるよう集約していくのである。

 「みんなが考えていることを言葉にしてもらうのがキモ。だからその場に出席している全員が、考えを発散しきるような会議の雰囲気作りをすることが大事だと思います」(廣野さん)

 課題と理想のギャップを埋める作業では、週2回ぐらいの頻度で現場の人たちと定例会を実施し密にコミュニケーションを取る。そしてやることが決まればあとは週1ぐらいのペースで適宜コミュニケーションし、開発を進めていく。

業務知識の習得は現場メンバーと話すことから

 先述したとおり、GYOMUハックエンジニアはあくまでもITのスペシャリストであり、業務のプロではない。だが業務改善をするには、業務への深い理解が必要になる。どうやって理解を深めていくのか。廣野さんは「実際に現場を訪ねて、業務に従事しているメンバーと話をすることです。分からない言葉が出てくれば、『それってどういうことですか』と質問する。そうすることでコミュニケーションの良い循環が生まれ、彼らの言葉や文化について学ぶことができるんです。理解が深まったかどうかは、その業務について自分の言葉で説明できるかどうかで判断しています」と語る。そのほかにも廣野さんは業務知識を得るため、外部の勉強会に参加することもあるという。

 またもう一つ気をつけていることとして、「ついつい自分で作ってしまう方が早いというマインド」と注意を促す。リソースは限られているので、SaaSなどありものを使うというマインドチェンジが必要になるのだ。


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著者プロフィール

  • 中村 仁美(ナカムラ ヒトミ)

     大阪府出身。教育大学卒。大学時代は臨床心理学を専攻。大手化学メーカー、日経BP社、ITに特化したコンテンツサービス&プロモーション会社を経て、2002年、フリーランス編集&ライターとして独立。現在はIT、キャリアというテーマを中心に活動中。IT記者会所属。趣味は読書、ドライブ、城探訪(日本の城)。...

  • 近藤 佑子(編集部)(コンドウ ユウコ)

    株式会社翔泳社 CodeZine編集部 編集長、Developers Summit オーガナイザー。1986年岡山県生まれ。京都大学工学部建築学科、東京大学工学系研究科建築学専攻修士課程修了。フリーランスを経て2014年株式会社翔泳社に入社。ソフトウェア開発者向けWebメディア「CodeZine」の...

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