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ProductZine Dayの第2回開催です。

ProductZine Day 2024 Winter

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ferret Oneに学ぶ「顧客の声」から始めるプロダクトマネジメント

顧客の声を吸い上げ、プロダクトづくりに適切に活かすには? ヒアリングと共有の仕組みについて

ferret Oneに学ぶ「顧客の声」から始めるプロダクトマネジメント 第2回

 よりよいプロダクトづくりには、顧客の声を反映し改善を進めていくことが重要。これは多くのプロダクトマネージャーや開発者、マーケター、カスタマーサクセスがわかっていながら、現実にはプロセスを確立する難しさを感じているのではないでしょうか。各チームの目標をそれぞれに追っても、共通のゴールを共有できていなければプロダクトの本質的な成長には結びつきません。マーケティングツール「ferret One」を提供するベーシックでもそんな課題を抱えていましたが、約半年間のプロダクト改善を経て契約継続率を2倍ほどにアップさせました。本連載では同社カスタマーサクセスの秋在淳(あき・じぇすん)さんが、「顧客と向き合いながらプロダクトを磨いていく」ためのノウハウを、事例を踏まえて解説します。(編集部)

はじめに

 こんにちは。ベーシックのSaaS事業部にて「ferret One」のカスタマーサクセス部長を務めている秋(@jaesoon_aki)と申します。

 ferret Oneでは、カスタマーサクセス部を中心に顧客の声を活かしたサポート体制で、プロダクト改善に取り組み、約7カ月で開始当初46.2%だった契約継続率を87.5%まで伸ばしました。この連載では、その試行錯誤の中で気づいた「顧客と向き合いながらプロダクトを磨いていくためにできること」について、全3回にわたって書いています。

 今回は顧客の声をどのように吸い上げ、その声をどのようにプロダクトづくりに活かすのか、実際に行った施策をご紹介します。この記事が、プロダクトづくりに関わるみなさまのお役に立てば幸いです。

「顧客の声」を吸い上げるため、全てのターゲット顧客への訪問を実施

 プロダクトづくりにおいて、顧客の声が大事だということは何度も耳にしたことがあるかと思います。弊社でも顧客の声を大事にしていこうという考えはあったのですが、それを体現できる体制は当時整っていませんでした。

 そこで、どのように顧客の声を回収することが最もプロダクトをより良いものにし、顧客の課題を解決することにつながるのかを検討しました。しかし、自分の中では「顧客の課題解決にはこういったものが必要なのではないか」「こうすれば解約を防げるのではないか」など仮説はあったものの、当時は顧客への理解度がまだ低かったため、なかなか自信を持って推し進めることができませんでした。そのため、仮説の質を上げるためにも、まずは顧客の解像度を上げる必要がありました。

 そこで取り組んだことは、「全顧客への訪問の実施」です。全国にいる顧客に1件1件アポを取り、立ち上げメンバー(当時は筆者を含め2人)で、当時ターゲットとしていた全ての顧客合計120社を、3カ月かけて回りきりました。どのような情報を得ることができればより顧客の課題を解決できるようになるのかといった観点で、訪問時には以下の内容のヒアリングを行いました。

ヒアリング内容
  • ferret Oneサービス全体の利用状況(どれぐらいの頻度でサービスを触っているのか)
  • 機能ごとの利用有無や利用頻度、認知確認(これがとても良かった)
  • 機能やサービスへの要望の吸い上げ
当時使っていたヒアリングシートの一部
当時使っていたヒアリングシートの一部

 全クライアント訪問の中で最も衝撃的だったのは、自分が想定した以上に、顧客がferret Oneの機能活用方法を知らないことでした。各機能の利用有無の問いに対して、「利用していない」という回答が想像以上に多かったのです。これなら有効に使ってもらえるだろうと思って開発した機能があまり使われていないという事実も多々見つかり、ショックを受けました。

 また同時に、顧客のWebマーケティングの知識がツールの活用度に大きく影響していることも認識できました。ferret Oneはマーケティングツールのため、顧客のマーケティングのノウハウ自体が不足していると、ツールがうまく活用できない状態になっていたのです。

 今となっては顧客がferret Oneを導入してから立ち上がるまでを支援するオンボーディングチームを用意しており、導入顧客のほとんどが自社に適したマーケティングの初期設計から施策実施まで支援を受けています。ただ当時はオンボーディングチームも組成されて間もなかったため、顧客の立ち上がりまできちんとサポートできていないことも多々ありました。それでは利用機能の偏りがあるなど、成果を出している顧客が少ないことも当然です。

 この全顧客の訪問を通じて、ferret Oneの機能活用状況の事実を知ることができ、顧客に対する解像度が一気に上がりました。

次のページ
“3つの会議体”で顧客の声をプロダクト改善に活かす仕組みづくり

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この記事の著者

秋 在淳(アキ ジェスン)

 株式会社ベーシック SaaS事業部 カスタマーサクセス部長。Web制作会社やベンチャー企業の立ち上げ、起業を経て2016年に株式会社ベーシックへジョイン。フィールドセールスマネージャーから、アカウントサクセスチーム立ち上げのためカスタマーサクセス部へスイッチ。現在はアカウントマネジメントグループの...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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