みんなが満足する製品づくりとは?ニーズに応える3つのポイント
グレープシティのソフトウェア開発支援ツール事業では、日本をはじめとして、アメリカ、中国、韓国に拠点を構えながら高機能ライブラリの開発・販売を行っている。開発サイクルとしては、カスタマーレスポンスの収集を行い、ニーズを抽出してリスト化。最終的にニーズを機能に落とし込んで実装する。サイクルとしては一般的だが、グローバルに製品を展開していると、少し面白い傾向が見えてくる。
「世界中から製品に対する多くの要望が来るのですが、その要望を細かく見ていくと、国によって特徴があることがわかってきました。その内容は、時に相反するリクエストが来ることもあります」(村上氏)
例えば、ある国のプロダクトマネージャーは「最先端技術に対応したい」と言い、別のある国のプロダクトマネージャーは「うちの国で一番重視されているのは安定性だ」と言う。この2つの要望は相反しており、製品づくりの中で両立させるのは難しい。こうしたさまざまなニーズがある中で、みんなが満足する製品作りを行うには、どのように対応したらいいのだろうか。
このような相反するニーズが出てきた場合は、グレープシティではグローバル開発会議を行っている。各拠点のプロダクトマネージャーと開発チームが一堂に集結し、協議しながら機能を決定し、実装しているのだ。ニーズ対応に関しては、「製品で考える」「機能で考える」「データで考える」という3つのポイントを重視している。それぞれのポイントについて、村上氏のセッションをもとに詳しく紹介していこう。
【Point1】製品で考える
1つ目のポイントである「製品で考える」については、同社製品の「SPREAD(スプレッド)」をケーススタディに説明が進められた。SPREADはExcelライクなUIと機能性を開発アプリケーション上で簡単に実現できるライブラリである。このライブラリを開発する過程において、ある国からは「チャートの種類を増やしてほしい」、またある国からは「大量のデータを表示できるようにしてほしい」という要望が寄せられた。
この相反するニーズに対し、グレープシティは「チャートの種類を増やす」機能の実装を先に行い、「大量のデータを表示する」機能についてかなり検証を行った上で、後から実装を行った。その理由は「スプレッドシートの本分は、データ表示にあらず」という判断をしたからだと村上氏は言う。
「世の中には、似ているようで似ていない2つのUIがあります。1つはデータグリッドビューと呼ばれるもので、主にデータ表示に使用されます。もう1つはスプレッドシートと呼ばれるUIで、データ表示に加えて数式設定やチャートの表示ができ、データ分析を行うためのもの。SPREADはこのスプレッドシートに当てはまります」
つまり、チャートの種類を増やしたいというのはスプレッドシート機能の拡充にあたるため、問題ないと判断。しかし、大量のデータを表示するためには、データグリッドの機能をスプレッドシートに追加しなければならない。
大量のデータを表示できるように実装した場合、その大量のデータ分だけ数式も一緒に動かないと、スプレッドシートは機能しない。主目的が異なるライブラリの機能を入れてしまうと、かなりの負荷がかかる。そのため、ちゃんと動くかどうか慎重な検証を行った上で、実装を行ったのだ。
「製品で考える」ポイントは、製品のコンセプトやアイデンティティを踏まえながら、まずニーズが一致するかを確かめること。その上で開発を行っていけば、満足してもらえる製品が作れるのではないかと、村上氏はまとめた。