「歴史を伝えたい」 CEO松本とのディスカッションで学んだロゴの意義
ラクスルを良くしていきたいという思いでロゴリニューアルを進めていきましたが、CEOの松本との議論で振り出しに戻ったときもありました。ロゴには会社の成り立ちや創業時の思いなど、歴史のストーリーが込められているべきだ、という松本の主張があったからです。
そこで、みんなで考え抜いてきた「RAKSUL」の文字には、これまでどおり「こんな会社にしていこう」という意志を込め、B42フォントのRマークで、引き続きブランドストーリーを表現することにしました。
松本が印刷事業からラクスルを立ち上げた背景には「グーテンベルクが発明した活版印刷技術のように、イノベーションを起こす会社でありたい」という思いがありました。B42フォントは、グーテンベルクが作った印刷聖書で使われた活字であり、引き続きこのフォントを使うことで、創業時の思いを伝える方針が固まりました。
その後、元のフォントを抽象化することでロゴとしての使いやすさを追求し、2021年9月にロゴリニューアルを発表。ラクスルが創業時から大切にしてきた“これまで”の思いと、組織やカルチャーの課題を“これから”どのように改善していきたいか。そんな過去と今、未来の視点が融合された形になりました。
プロジェクトを通じて、CEOの松本をはじめ、本当に多くの方と「ラクスルのこれまでとこれから」を語り合うことができ、ラクスルへのさまざまな期待と課題に気付かされました。ロゴリニューアルの取り組みは、プロセス自体に非常に価値があったと実感しています。
伝え続けたいメッセージは「良いデザインが社会を良くする」
ロゴリニューアルを発表して驚いたことがあります。そのひとつが、多くの社外デザイナーの方から「おめでとうございます」と連絡をいただいたことでした。
デザイナーにとってロゴリニューアルは、「今までのものを全部捨てて新しくする」という意味でも、とても意義深い出来事。たくさんのお祝いの言葉をいただいたことで、「それほどまでに大きな出来事だったのか」と学び、これまでのデザイン意識の低さを改めて感じました。
社員には、年に1回全社員が集まる「ビジョン・デー」(ラクスルの目指すビジョンについてプレゼンや議論をする場)で、新しいロゴに込めた思いやストーリーを発表しました。
「良いロゴだね」、「ようやくうちにもスタイリストが付いたね」と言ってくれる社員が多く、あるべき姿をビジュアルで示すことでグローバルのメンバーを含め、「そういう考えを持った会社だったんだ」と理解が進みやすくなったと考えています。ラクスルの一員でいることに対するロイヤリティーが少し上がったのではないか。そんな手ごたえがあります。
自分たちの変化がビジュアライズされることは、とてもワクワクすることです。デザインがもたらす情緒的な価値をみんなで実感できたことは、ラクスルのデザイン経営にとってひとつの進化になりました。
今後は、各事業ロゴのアップデートも「早くやりたい」という声が現場からあがっています。既存メンバーだけではなく、副業・兼業など多様な働きかたでラクスルに携わってくれる新たなデザイナーを積極的に募集しながら、より良いアイデアを形にしていきたいです。
良いデザインは気持ちを高めてくれます。そしてデザイン刷新により、「いいね」という心地よさを広げることは、社会全体をより良くすることにつながる――。デザイン経営を進めることで、そんなメッセージを発信していきたいと考えています。