SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

【デブスト2021】セッションレポート

より自発的な挑戦をし、自分の関心事を仕事にしよう――「ジョブ・クラフティング」で築くエンジニアのキャリア【デブスト2021】

【A-1】ジョブ・クラフティング~自分の関心事を自分の仕事にするアプローチ~

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 人は自分の仕事に対し、価値を実感している時の方が人生の幸福度は高いもの。「ジョブ・クラフティング」は、この心理的な習慣をキャリアに応用し、価値や意味を感じやすい仕事を自分でデザインする試みだ。株式会社スタディストで執行役員VPoEを務め、技術コミュニティの運営や執筆活動も行なう北野勝久氏も、それを実践してきた一人。同氏の「ジョブ・クラフティング」を共有しながら、キャリアを前向きに捉えるヒントを紹介した。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

株式会社スタディスト 執行役員 VPoE / SRE Lounge オーガナイザー / SRE NEXT 2020 オーガナイザー 北野勝久氏
株式会社スタディスト 執行役員 VPoE / SRE Lounge オーガナイザー / SRE NEXT 2020 オーガナイザー 北野勝久氏

試行錯誤する楽しさに気づきIT業界へ

 ピンクのグローブをしてダンスをする医療関係者――。乳がん検診の大切さを訴えるピンクリボン運動のため、YouTube上で公開された動画について北野氏は、「彼らの仕事は踊ることではないが、踊ることによって楽しく自分の仕事に取り組める」と紹介した意図を語り、「そんなふうに自分の仕事を形作り、変化させる自発的な行動として、ジョブ・クラフティングを実践できている人はより満足度が高い」と述べた。

 そんな北野氏は、スタディストで執行役員VPoEを務め、技術コミュニティ「SRE Lounge」やSRE初の国内イベント「SRE NEXT 2020」を主催するなど幅広く活躍している。しかし、そのキャリアにおいて、「決して一直線ではなかった」と振り返る。

 もともと大学時代は化学を専攻し、結晶成長を研究テーマとして試料作成から評価までの試行に2日ほどかかるのが当たり前の世界だったという。それが、ちょっとしたきっかけでAndroidアプリをつくることになり、作ったものが手元ですぐ動くという経験をする。大学での研究と比較して、何度も素早く試行錯誤できることが楽しく、自分の性に合うと直感的に感じたという。

 そして大学卒業後は、化学分野ではなく、インド系IT企業であるTata Consultancy Services Japanに入社。システム開発から運用に至るまでの業務を経験することになる。その際には、サーバの調達からミドルウェア設定などの構築全般、さらにリリース関連の作業から、運用フェーズを見越した各種検証まで経験した。

 当時について、北野氏は「周囲の人に本当に良くしてもらった」と振り返り、新卒入社時にはメンターが毎朝時間を取って技術面のレクチャーをしてくれたこと、社外イベントに出かけていくことにも寛容だったことなどをあげた。なお、当時は扱っていた製品系のカンファレンスだけでなく、AWS Summitなど将来的に必要になりそうな技術関連についても、積極的に学びの場へと足を運び、社内共有も自発的に行っていたという。それも一つのジョブ・クラフティングだったといえるだろう。

 また、その頃には個人開発にも挑戦し、自分がほしいと思っていた書籍に関するサービスを開発。それによってさまざまな学びを得ることができた。そうした公私充実した日々の中で、成長を実感するようになった頃、プライベートで人生の有限性を感じる出来事があり、「いつかは小さい会社に行ってみたい」と考えるようになった。

 当時在籍していたTataは、インド本社で従業員も世界中に数十万人という大規模組織。一方、転職先として選んだのは、スタートアップのスタディストだった。さまざまなものが見られる小さな組織であること、プロダクト(Teachme Biz)に関心が湧いたこと、そして代表との面談でピンときたことが決め手となって入社を決めた。

自発的な仕事の創出と、不要な仕事の効率化

 スタディストでの仕事は、Webアプリの開発・運用に関わることを一通り、プロダクトに関わることはほとんど何でもやってきたという北野氏。新機能開発の企画・設計・開発、リリース前のユーザーマニュアル作成や社内説明会、不具合改修・障害対応、さらにはサポートチームと連携して、不具合調査と対応の推進まで行ってきた。そして、知人社長にプロダクトを紹介しては、営業チームにリードとしてトスするなど、営業的な動きも行っていた。

 北野氏は、「自分はソフトウェア開発によって、お客さまに価値提供することをゴールと考えていた。だからこそ、その中にお客さまが使うまでのフェーズで発生する仕事も自分の仕事、自分がやってもおかしくないと考えていた」と語り、「そうしたことも自分にとっては、ジョブ・クラフティングの一貫だった」と振り返った。

 しかし、在籍期間が長くなるにしたがって、さまざまな役割が増えて”たいへん”になったのも事実。その理由としては、新しい機能開発環境を構築して開発者と連携したり、データベース移行などのサービスの載せ替えなどを行ったりするなど、特にインフラ(AWS)周りに絡む業務が増えていったにも関わらず、新機能開発や不具合改修などの仕事も継続していたからだ。

 オーバーワークになっていた頃に、スタディストの技術顧問と一緒に、現状把握やロードマップづくりを行う機会を得た。圧倒的に”すべきこと”が分かり、どんどん自分の業務が楽になることを実感する中で、SRE(Site Reliability Engineering)について知ったという。

 なおSREとはGoogleのエンジニア組織のトップだったベン・トレイナー氏が提唱した「エンジニアリングのプラクティス」のことで、「ソフトウェアエンジニアの視点で、システム運用業務を設計したもの」と説明されている。北野氏が課題を感じていたことと状況は一致しており、当時の自分にしっくりきたという。

 そして、アプリケーション開発をし続けながらSREについて学び、実践するというサイクルになり、新しいことを実践すると疑問点が山ほど出てくるようになった。そこで、外部の勉強会に積極的に参加するようになり、懇親会では登壇者に質問をするなどして学び、すぐに実践することに取り組んでいった。中には失敗した取り組みもあったが、大きな方向性としては間違っていなかったという確信も得られた。たとえば、自動化によるToil(やり続けても顧客価値を産まない作業)の削減や、障害発生頻度の低減などにも取り組んだ。

 そして、SRE Loungeという勉強会に参加・登壇するようになり、誘われるがままに運営側にまわっていた。登壇者やスポンサーとのやりとりは煩雑で大変だったものの、「自分が話を聞きたい人を呼べる」メリットがあり、参加者・スポンサー企業からも感謝され、自分にもいい勉強の機会になったという。そして、日本初の、SREをテーマとしたカンファレンスへとつながっていった。「学習と実行」を回せるようになり、同時期に社内でも勉強会を開催するようになっていた。2週間に1回のその活動は現在も続いている。

会員登録無料すると、続きをお読みいただけます

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

次のページ
必要性を感じて挑戦した専門外の仕事が、新しい扉を開く

この記事は参考になりましたか?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
【デブスト2021】セッションレポート連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/15527 2022/08/26 11:00

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング