必要性を感じて挑戦した専門外の仕事が、新しい扉を開く
さらに、社内でのSREの取り組みも軌道に乗り始めたことを受けて、採用に関心を持つようになった。スタディストを広く知ってもらうために、積極的にイベントへの登壇をするようになり、現在に至る。そうした努力が実って、優秀な人材を2名確保。そのタイミングで組織図にもSREがチームとして反映されることになり、そのマネージャーに就任することになった。
この頃になると、北野氏が1人でやっていたSREに、チームで取り組むことに興味を持つようになっていった。そこを上手くやりたいという思いから、チームの共通言語づくりを目指し、手始めにSRE本の輪読会を始めるようになった。それによって、書かれていることが、自社の組織でどう取り組み、以前はどういう状態だったか、実践してきたことや文化を引き継ぐキッカケとなった。
また、並行してスクラムと出会ったことで、ますますチームとしてソフトウェア開発を学びたいと考えるようになり、書籍を一通り読み漁った後に、外部のスクラムマスター研修に参加し、認定スクラムマスターを修得。チームでの仕事や管理・進め方をいろいろと見直すようになり、その結果、1人ではなかなかできなかったことがチームではどんどん進むようになった。そして、SREの考え方を他の分野に応用できないかと考えるようになっていった。
「この頃には、SREのプラクティスというよりも、『ソフトウェアで物事を扱えるように変えていくアプローチ』として認識しており、システム運用に限らず、他のものに応用しても有効なのではないかという確信を持っていた。そこで、何かをやってみようと考えた」と北野氏は当時の心境を語る。
そしてPythonでの業務効率化について何本か寄稿したところ、それを見た出版社から声がかかり、技術評論社より『PythonでかなえるEcxel作業効率化』という本を出版することになった。また、その書籍のテーマで講師をする仕事にもつながった。
本業でも関わる範囲が広がり、SREチームのマネージャーに加え、開発部全体の副部長としての役割も担当。さらに、採用の基礎となる、求める人物像の整理や会社紹介資料の公開などを実施し、整備するようになったことで、開発組織の採用のオーナーシップも委ねられるようになり、VPoEに就任。開発組織体制について責任を持つとともに、役員として中長期的な会社の姿を考えるようになっていった。
本業以外に、React Native+Expoでのアプリ開発にも着手。大学生時代を思い返しながら、「一番の下手くそであれ」を地で行っているという。
自発的な挑戦が、後からキャリアとしての意味を成す
さまざまな経験を積み重ね、キャリアを紡いできた北野氏だが、それがどのように「ジョブ・クラフティング」と結びつくのか。
ジョブ・クラフティングの手法の1つとして「アプローチ・クラフティング」がある。それは、冒頭で紹介された医療関係者によるピンクリボン活動のように、「自ら必要な仕事を作り出す」という発想だ。北野氏の場合、社内勉強会を開催し、SREや開発プロセスなど、新しく学んだことをどんどん実践投入したことだ。そして、自発的に採用のためイベントに登壇したり、知人に営業したりしたことが該当する。
一方、ネガティブな仕事を回避する「アボイダンス・クラフティング」という手法があり、北野氏はその考え方の1つである「コグニティブ・クラフティング」の考え方に基づき、「自分でやらなくてもいいんだ」と認識を変え、Toilの削減や障害発生頻度の低減など、費やす時間を減らしたいものをどんどん効率化・自動化していった。
北野氏は「ジョブ・クラフティングに大事なこと」として、主体的であり続けることやボトムアップ的なアプローチの重要性を挙げ、「他の人に言われてやることは該当しない」と述べた。また、周囲の人が受け入れてくれる範囲の中で実践できることであり、「明らかに許してくれなさそう」と思うことを勝手に遂行することは避けるべきとして、周囲の人の認識との関係性の中で成り立つものというわけだ。さらに、ジョブ・クラフティングを行うことで、周囲にも良い影響を与え、あとに続く人が出てくるという。
北野氏は、本カンファレンスのテーマであり、スティーブ・ジョブズ氏が「キャリアのあり方」として語った「Connecting the Dots」について、「信じる力なのではないか」と語り、「後から振り返ることでしか"つながり"はわからない。今回の講演のスライドを作りながら、ほんの少しだけ自分は自身の”Connecting the Dots”を感じている」と振り返った。
「ジョブ・クラフティングとConnecting the Dotsを掛け合わせること。それは自発的に新しいチャレンジをし、それが後から意味を成すと信じ続けることが大切なのではないか」と語り、最後に「次は皆さんの番です。自発的にチャレンジし続けることは尊いこと。そして、それを誰かに共有することにぜひ取り組んでほしい」と語り、セッションをまとめた。
