はじめに
多くの人が、自分の作業の生産性を高めるためにタスクリストを使っています。タスクリストの形式はさまざまで、携帯情報端末を使っている場合もあれば、OutlookやEvolutionなどのデスクトップソフトウェア、あるいはもっと単純にメモ用紙を使っている場合もあるでしょうが、いずれにしても単純なTo-doリスト(作業リスト)は作業効率の向上に大いに役立ちます。たとえば、未完了のタスクをスキャンし、すぐ目につくところに置いておき、それが完了したとき(または何らかの事情で先に進めなくなったとき)に次のタスクを適切に選択するといったことができます。
開発者という仕事をしていれば、個人用To-doリストに登録できる(または登録すべき)タスクは山ほどあるでしょう。コーディングすべき機能、修正すべきバグ、リファクタリングすべきクラス、記述すべきテスト、手直しすべきビルドスクリプトなど、挙げればきりがありません。もしEclipseを使用していれば、こうしたタスク管理の部分で少し楽をすることができます。最新のEclipse Europaリリースには、タスク管理に役立つMylyn(旧名称:Mylar)という独自のツールが付属しているからです。これは単なるタスク管理ツールとは一線を画すもので、作業の効率化に貢献します。
Mylynの重要な長所の1つは、膨大になりがちなタスクリストのうち、その時点で特に重要なものだけに注目できるということです。Mylynを使用すると、個人用のTo-doリストをEclipse内で直接管理できます。また、MylynはJIRA、Bugzilla、Tracなどの問題管理システムにスムーズに統合できるほか、(少なくとも最新のテスト段階のものは)アジャイルプロジェクト管理ツールであるXplannerにも統合できます。
学習機能を持ったタスク管理ツール
しかしながら、Mylynは単なるTo-doリストの補助ツールではありません。Mylynは、特定のタスクに対するユーザーの作業状況を観察し、そのタスクの影響を受けるファイルや、タスクに必要なビューなどを徐々に学習する機能を備えており、この学習機能こそがMylynの真価であると言えます。この機能により、目下のタスクとは関係ないプロジェクトの95%の部分が隠されるので、ユーザーは現在のタスクに関係のある少数のファイルに集中することができます。
また、Mylynを使用するとタスク切り替えの時間を大幅に節約できます。新しいタスクを選択するとすぐに、そのタスクに関係するファイルとビューが前回作業を終了した状態のままでワークスペースに表示されます。
さらに、Mylynでは、タスクごとにどのくらい時間を費やしたかが記録されます。したがって、組み込みの時間追跡ツールとして利用でき、週ごとのタイムシートを作成するときに非常に便利です。
前置きはこのくらいにして、Mylynを実際に操作してみましょう。
Mylynのインストール
Mylynは、最新のEclipse Europaリリースに付属しています。最初の状態ではBugzillaしかサポートしていませんが、Mylynはそれ以外のツールにも統合できます。JIRAやTracのサポート、あるいはテスト段階のXplannerサポートを利用するには、次のMylyn開発アップデートサイトをEclipse構成に追加する必要があります。
- download.eclipse.org/tools/mylyn/update/e3.3(zipファイル)
- http://download.eclipse.org/tools/mylyn/update/dev/extras
なお、Eclipseのサイトには、「Dev builds are production quality, but subject to UI changes.」(開発ビルドは製品レベルの品質を実現しているが、UIは変更の可能性がある)とあります。これらのアップデートを標準のEclipse手順に従ってインストールします(図1を参照)。