組織的に取り組む「技術的負債」の解消
そこで湯前氏は、短期間で効果が出やすいが、EMやエンジニアが身を削る必要のある課題解決施策の提案をした。短期間の課題解決施策として開発チームが行ったのが、「開発プロセスの改善」と「会議体の整理」だ。
開発プロセスの改善では、エンジニアがやることと、開発ディレクター(カケハシではスクラムマスターを開発ディレクターと呼んでいる)がやることを図のように分けて整理。「開発ディレクターが開発プロセスへの働きかけを大きくすることで、エンジニアの開発時間を最大限取れるようになり、チームで一丸となって開発に取り組める形にしました」(湯前氏)
もう一つの施策である会議体の整理では、短期的に会議やスクラムイベントの削減を行ったという。チームのコミュニケーションを活性化させる施策は非常に大事だが、短期的に開発時間を確保するため、勉強会や雑談のために確保している時間など、チームのコミュニケーションを期間限定で削減したという。「長期的にはマイナスになってしまうので、あくまで7月末までとし、8月以降は復帰することになっている」(湯前氏)
そのほかにも、スクラムイベントや会議体を削減したことで、「全体で約10%の時間を捻出できた」と湯前氏は語る。
このようにEMやエンジニアが身を削る提案をすることで、中長期的な対策として技術負債の解消を経営層やPdMと議論ができるようになった。「ゴールをどうするのか、何をやるのか、どのくらいの期間とリソースを使うのかなどについて、中長期的な対策のイメージを図に表し、議論をしたことで、理解してもらえたと思います」(湯前氏)
PdMや経営層との話ができ、リソースも確保できた。次に見積もりをすべくエンジニアチーム内での技術的負債解消の方針のすり合わせを行うことにしたが、「なぜやるのか」「何が今課題なのか」「何が理想の状態なのか」という認識がチーム全体で合っていないことが明らかになった。チーム内での認識をすり合わせるためには、1つのホワイトボードを見ながら長めに時間をかけ、深い議論をするのが得策である。だがカケハシの社員の働き方は全員リモートワーク。そこで全国から東京都中央区東銀座にあるオフィスに集まり、オフラインでの議論を行った。「チーム内での認識は大方揃い、あとは進めるだけの段階。今、まさに技術的負債の解消に取り組んでいるところです」(湯前氏)
カケハシではこの取り組みを5月頃から開始。まだ3カ月弱だが、経営層から「少しずつ良くなってきている」という声をかけられたという。
湯前氏は最後に「カケハシでの取り組みが皆さまの参考になれば幸いです」と語り、セッションを締めた。