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「LeanとDevOpsの科学」著者が語る開発生産性のヒント──DORAのメトリクスとSPACEフレームワーク、そして文化

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文化は組織が作るもの? 個人が組織文化を変えるには

 旧来の理論では文化を変えて教育を行うことで、価値観や態度が変わり、行動が変わるとされていた。しかし、トヨタ生産方式の海外展開に貢献した米国人、ジョン・ショック氏が「仕事のやり方や行動を変えると、私たちの価値観や態度に影響を与え、それが文化を変えていくことになる」ということを指摘したとフォースグレン氏は言う。

 その一例として、NUMMI(New United Motor Manufacturing, Inc.)を取り上げた。カリフォルニア州フリーモントにあったGMの組立工場の従業員は、仕事中に飲酒をしたりギャンブルをしたりするので、「業界で最悪の労働力」と言われていた。その後、同工場は閉鎖されたが、数年後にトヨタとGMの合弁企業NUMMIの工場として再開。それに伴い、労働組合はトヨタに85%の従業員を再雇用するようにと説得した。そして、その中で一部の従業員がトヨタ生産方式を学ぶ機会を得たという。「これが文化を変える重要な役割を果たした」とフォースグレン氏は語る。彼らは技術を学んだだけではなく、プロセス、品質。チームワークについても学んだからだ。彼らが戻ったフリーモントの工場では、日本と同じ生産速度、品質の車を生産するようになり、従業員の満足度も向上したという。「これは働き方を変えることで文化を変えることができるという素晴らしい事例」とフォースグレン氏は説明する。

 また文化がテクノロジーに大きな影響を及ぼすことを把握していたGoogleでは、心理的安全性に関して調査を実施。その結果、心理的安全性のある環境では、適切な文化が育ち、優れたパフォーマンスにつながることが分かった。

 さらにフォースグレン氏は今では当たり前となっているレコメンデーション機能を開発したGreg Linden(グレッグ・リンデン)氏の話も紹介。リンデン氏が提案したレコメンデーションの仕組みは、当初、上級副社長に却下された。納得のいかないリンデン氏は本番環境でA/Bテストを実施。するとリコメンデーション機能ありの方が、売上が数%上がることを確認できた。リンデン氏は後に、イノベーションが花開くためには、地位や伝統による制約を受けることなく、誰もが実験し、学び、反復できるような文化を築くことがカギだと考えている」と考察したという。

 リンデン氏の事例で注目してほしいのは、上級副社長の意見に逆行したとしても、Googleには解雇を恐れることなく行動できる文化があったこと。そしてもう一つは、リンデン氏には利用できるメトリクスがあったこと。つまり「自分がどれほど結果を出せているかを知るシステムがあり、実験できる環境が整っており、自分たちの文化が、自分たちに採って重要な要素を強化しており、改善を目指すことをサポートするシステムがあり、必要な場合に変化することができること。これらが揃って初めて、開発者一人一人がよりよい仕事環境になる」とフォースグレン氏は言うのである。

 最後にフォースグレン氏が最近、関心を抱いた次の2つの論文を紹介し、セッションを締めた。1つ目は「Reading Between the Lines: Modeling User Behavior and Costs in AI-Assisted Programming」。GitHub CopilotのようなAI支援プログラミングを使用する際に、何が起こるかについて調査した論文である。

 もう1つがハイブリッドワークに関する論文「The Best of Both Worlds: Unlocking the Potential of Hybrid Work for Software Engineers」。

 論文の詳細を知りたい人は、ぜひ、アクセスしてほしい。

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この記事の著者

中村 仁美(ナカムラ ヒトミ)

 大阪府出身。教育大学卒。大学時代は臨床心理学を専攻。大手化学メーカー、日経BP社、ITに特化したコンテンツサービス&プロモーション会社を経て、2002年、フリーランス編集&ライターとして独立。現在はIT、キャリアというテーマを中心に活動中。IT記者会所属。趣味は読書、ドライブ、城探訪(日本の城)。...

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