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開発生産性を測る新たな手法「SPACEフレームワーク」入門

「SPACEフレームワーク」を開発組織に導入しよう:カテゴリーの選び方と指標の計測の実例

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 開発者の生産性を多面的に評価する指標として注目されている「SPACEフレームワーク」。本連載では、SPACEフレームワークとは何か、そして筆者の事例を通じて、組織へ実際に導入・運用するためのヒントを紹介します。今回は、SPACEフレームワークは開発組織において実際にどのように運用されているのか、当社の実例をもとにご紹介します。

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はじめに

 前回は、開発者の生産性を評価するフレームワークである、SPACEフレームワークの定義とその使用方法について説明しました。

 チームや組織のフェーズや文化に応じて、あるべき姿をどのカテゴリーや指標に何を選択するかで落とし込むことが重要であり、またその選択は各々の運用者に委ねられていることをお伝えしました。

 今回は、具体的なSPACEフレームワークの運用方法に基づいた活用のイメージを共有し、理論だけでなく実践面でのフレームワークの活用方法を掘り下げていきます。

 本記事を通じて、SPACEフレームワークの理解や、皆様の組織でのフレームワークの導入・実践に役立てれば幸いです。

SPACEフレームワークの5カテゴリーの指標

 SPACEフレームワークとは、複数の指標を組み合わせて開発者の生産性を多面的に評価するためのフレームワークです。SPACEフレームワークの概要については、前回の記事をご覧ください。

 具体的には以下の5つのカテゴリーによって成り立っています。

  • Satisfaction and Well-being
  • Performance
  • Activity
  • Communication and Collaboration
  • Efficiency and Flow

 各組織はこれらの要素を自身のコンテキストに合わせて選択、組み合わせます。

 改めて、一つひとつのカテゴリーについて紹介していきます。

Satisfaction & Well-Being

 Satisfaction and Well-beingは、開発者の仕事、チーム、ツール、文化に対する満足度と、仕事が健康や幸福感にどう影響しているかを指標化したものです。

 満足度と幸福度は生産性に大きく関わり、その評価には従業員満足度、開発者の効率、燃え尽き症候群の状況などが測定項目として用いられます。

Satisfaction & Well-Being
Satisfaction & Well-Being

Performance

 Performanceは、システムやプロセスの成果を指す指標で、実装された機能やコードがどれほどのアウトカムを出したかを評価します。

 その評価には、書かれたコードが期待通りに機能したか、そしてその品質や、それがもたらす顧客満足度やコスト削減といった影響が考慮されます。

Performance
Performance

Activity

 Activityは、仕事過程で完了した行動や出力の数を示す指標で、開発者の生産性やチームの効率についての洞察を提供します。

 開発者の活動の全てを包括的に測定・定量化することは難しいですが、設計とコーディング、継続的インテグレーションとデプロイメント、運用活動などの領域での行動量やアウトプット数を取得することで、一部の活動は定量化できます。

 ただし、これらの指標は組織のニーズや開発環境に応じてカスタマイズが必要で、生産性を判断するために単独で使用するべきではないとされています。

Activity
Activity

Communication and Collaboration

 Communication and Collaborationは、人々やチームがどのようにコミュニケーションを取り、共同作業を行うかを表す指標です。

 ソフトウェア開発はチーム間の広範で効果的なコミュニケーションと協調に依存し、チームの成果に貢献する仕事や、他のメンバーの生産性をサポートする仕事も重要です。

 チームの生産性を把握するためには、見えない仕事やチームのタスク調整に関する情報、ネットワークメトリクスなど、測定が困難な項目も考慮する必要があります。

Communication and Collaboration
Communication and Collaboration

Efficiency and Flow

 Efficiency and Flowは、チーム活動が中断や遅延を最小限に抑えて完了できているか、継続的に進展しているかを指す指標です。

 個人レベルでは集中時間や開発環境で過ごす時間で測定し、チームやシステムレベルではレビューやMTG時間、CI/CDフローでの自動化によるトイル消化数などから判断します。

 このカテゴリーは、最適化することによって個人の満足度は向上するが、一方で共同作業の能力が低下しチームのコラボレーション活動が下がるなど、他のすべてのSPACEカテゴリーと関連する項目だということが論文では言及されています。

 具体例を挙げると、中断のない集中時間を増やすための措置としてMTG時間を削減した結果、情報の共有やアライメントの機会が減り、チーム内での認識ズレや連携不足を引き起こすことなどが考えられます。

 従って、Efficiency and Flowの最適化は、他のすべてのSPACEカテゴリーとのバランスを考慮する必要があります。

Efficiency and Flow
Efficiency and Flow

 SPACEフレームワークでは、以上の5カテゴリーから、最低3つのカテゴリーを選択することが推奨されています。

 このフレームワークは、基本的に容易に測定できるアクティビティデータだけでは正しく生産性を評価することはできないと主張しているため、一見測定が難しそうな要素も含まれています。

 そのため具体的な活用のイメージがなければ、どのように運用するかは理解しにくいでしょう。

 それゆえに、どの基準でカテゴリーを選定し、導入判断をすべきか、そしてイテレーションの運用方法やその効果がどうだったかといった点について、次からは我々overflowでの活用事例を元に紹介していきます。

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この記事の著者

大谷 旅人(株式会社overflow)(オオタニ タビト)

 経路探索エンジンの研究開発後、2010年に株式会社サイバーエージェント入社。Ameba事業本部でシステム開発・運用責任者、事業部ポードとして組織運営などを務める。2013年、株式会社メタップス入社、決済、A分析ブラットフォームの基盤開発やシステム開発責任者して従事する。2015年に上場を経験。20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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