SPACEフレームワークの活用から見えてきたこと
SPACEフレームワークベースでの改善活動を行っていった結果、弊社では開発組織の改善が定量的な数値に見え始めています。
2022年10月から2023年6月までの間で、以下のような結果となりました。
- Four Keysはデプロイ頻度が3件/月から3.86件/月に、変更のリードタイムは160時間から83時間に向上
- 1プルリクエストリリースまでの速度は約2倍速く、プルリクエスト件数は122%向上
- エンジニアの人数は11名から14名へ
人数が増加しながらも、こうした数値上の結果が向上していること、また定性的なサーベイ上も好調を示していることは多面的に生産性向上に取り組んだ結果と言えます。
また、定量的な結果として表れただけでなく、個々の経験から導き出していた仮説がデータによって裏付けられることも増えてきました。
例えば、取り扱うドメインによっては、コミュニケーションの関係図が広く人々を巻き込む力が強い人ほど大きなインパクトを持つアウトプットを出しているという傾向が明らかになってきました。
これは、逆に、多くの人を巻き込まなければアウトカムが出せないということを示し、ドメインの複雑度が上がっていることも示唆しています。
このような場合、システムのリプレイスを検討する際の参考情報となります。
コミュニケーションの関係図を基にフォローを行った結果、満足度が向上し、定量的なアウトプットが増加することも確認できました。
しかしながら、全員がそのような傾向を示すわけではなく、フォローが有効に働かない人もいるというデータも得られました。
開発者アンケートによって明らかになったトイル・ペイン問題を解決することが、Four Keysのデプロイ頻度結果の向上につながることも、弱いながらも相関関係が見られてきました。
このように定量的な数値のみに注目して改善を進めるのではなく、チームや個々の人に対する微妙な影響を考慮しながら、データに基づいて効果測定を行う組織改善が行えるようになってきました。
SPACEフレームワーク導入前は、1on1やアンケートを元にフォローはしてきましたが、その結果が定量的にどうなったかは特に気にしておらず、良い結果に結びつくでしょうというあいまいな運用をしていました。しかし今は、よりデータに基づいた効果測定を行い、定量的な側面も含めて改善のタイミングを適切に計ることができるようになりました。
私たちの経験から言えることは、SPACEフレームワークを適用することで、定量的な指標だけでなく組織の健全性や働きやすさについても把握しながら、それを考慮した改善をすることができるということです。こうした満足度やコラボレーションというのは数字に直接反映されない部分ですが、組織としての生産性を維持、向上するために重要な要素であると改めて認識しています。
まとめ
overflowにおける具体的な運用方法とその活用のイメージを共有してきましたが、いかがでしたでしょうか。
SPACEフレームワークでは、どのカテゴリーを選定するか、どの指標で測定するかは各々の組織に任せられています。これが、活用にあたっての重要な決定となりますが、これに迷うことも多いでしょう。
始めるにあたっては、まずは測定が容易なActivityカテゴリーを中心に、プラスアルファでコミュニケーション面などを取り入れるだけでも多角的な視点から組織を理解することができます。あまり難しく考えずに、異なる側面から組織を捉える試みを行ってみてはいかがでしょうか。
今日ご紹介した内容が、組織が疲弊せず、また数値だけに振り回されない運用に役立てられれば何よりです。