初めての開発責任者「本当に半年弱ですべて実現できるのか」と不安
ウエディングパークは、結婚準備クチコミ情報サイト「Wedding Park」からはじまり、いまでは海外挙式、フォトウエディング、ウエディングドレスや結婚指輪など各領域に特化した関連サイトも展開中だ。
「21世紀を代表するブライダル会社を創る」というビジョンを掲げ、メディア事業以外にも「ウエディング×デジタル」として結婚式場向けノーコードツールやデジタル広告の提供、DX推進、オンラインスクールなど、デジタル技術の力でウエディング業界の発展をサポートしている。
また2021年からはデザイン経営に取り組んでおり、式場・カップル、それらをとりまく"社会の視点"から、全社員がつねに問い続けて仕事を生み出せるようになることを目指している。
今回は同社に入社して4年目のエンジニアとなる南舘拓弥氏。既存メディアの運用開発を経験したのち、2023年からは新規サービス開発に挑戦した。南舘氏は「これから新規サービス開発に関わっていきたい方、上流工程に関わっていきたい方、学生さん、新卒1〜2年目の方などに向けて、ためになるようなお話を用意してきました」と話す。
南舘氏が昨年から参画しているプロジェクトは、社会や業界課題をウエディングパークだけではなく他社と共創することで解決しようとするものだ。この新規サービスの開発リーダーに、まだ新卒3年目の南舘氏が抜擢された。
企画承認から最初のリリースまで約半年弱。南舘氏にとっては初めての新規サービス開発、初めての開発責任者という立場で、同氏は「すごく意気込んでいた」と振り返る。これまではプロジェクトの一部を担うことはあっても、要件定義から、システム設計、インフラ構築、バックエンド、アプリケーション開発まで一通り経験するのは初めてで「大きな自信につながる経験になりました」と話す。
とはいえ、プロジェクト初期は「本当に実現できるのか」と不安とプレッシャーで落ち込みそうになった。共創ということでステークホルダーが多く、要件定義のフェーズであらゆる立場からの「やりたい」が数多く膨れあがったためだ。
多すぎる目標を前に不安を抱えていたところ、先輩が「出ている要件全部を初期リリースで実現する必要あるかな?まずは必要最低限のものを早く作って、効果検証に移れたほうがいいんじゃない?」とアドバイスしてくれた。
これを聞いて南舘氏は「開発を推進する責任から『要件はすべて実現するもの』と視野が狭くなっていたと反省しました」と話す。重圧につぶれないようにするためにも、この気づきはとても大きい。
ではなぜ必要最低限のものを早く作り、効果検証に移行したほうがいいのか。南舘氏は大きな理由として2つ挙げる。1点目は「新規サービスは仮説だらけ」だからだ。本当にいいものか分からないので、早くPDCAを回せたほうがいい。もう1点は「リリースしないと価値は届かない」。どんなに素晴らしいものだとしても、開発しているうちは価値にならないためだ。
必要最低限を判断する3つの視点:「Why」「工数感」「リスク」
「必要な要件を見極めて早く開発する!」と南舘氏は決意したものの、次に「そのためには何ができたらいいのか?」という疑問に直面して考察した。まず「必要最低限」とは目的に沿っていて、納期内で実現可能な要件となる。
ここで重要な3つの視点として南舘氏は「Why」「工数感」「リスク」を挙げる。
Why:「なぜやるべきか」を可視化する
要件ブレストの場面では「やりたいファースト」な思考に陥りがちだ。次第に夢が膨らみ「あれもこれも」とやりたい要件が芋づる式に出てきて、本来の目的から逸れていく。そこで「Why」を可視化することで本当にやるべきかどうかの判断につながっていく。
例えば「複合検索機能がほしい」という「やりたい(要件)」があったとする。理由(Why)が「データが増えたら、複合検索があればUXが向上する」だとすると、まだその段階ではデータ数が少ない、または不透明なので「優先度は低い」と判断できる。
南舘氏は「手段を考えることが得意なエンジニアだからこそ、このWhyを意識してほしいです」と強調する。
工数感:ざっくりどれくらい要するかを可視化する
開発現場で人により工数感が異なるというのはよくあることだ。例えばリーダーは「1週間くらいでできるだろう」と考えるのに対して、エンジニアは「1か月はかかりそう」と考えていたりする。そのため要件定義のタイミングで工数感を可視化して互いのギャップをすりあわせておかないと、「納期に間に合わない」という事態になり、要件の見直しやリリース遅延などが生じてしまう。
ではどのくらいの粒度で工数感を出すか。南舘氏は「ざっくり○○人日くらいでいいので、チーム内ですりあわせておくことが大事。加えてきちんとバッファをとって伝えておくことも大切です」と念を押す。
リスク:実現を妨げる可能性を可視化する
新規サービス開発では検討しなければいけないことが多い。例えば個人情報や機密情報の取り扱いや技術的な検証などだ。検討が不十分だと、仕様変更や開発工数増加でリリース遅延も起こりうる。さらに後で「コア要件が技術的に実現不可能」と発覚したら、サービスリリースすらできないなんて事態も考えられる。そのため要件定義のタイミングでリスクを可視化しておくと、本当に実現可能かを判断できるようになる。
南舘氏は「エンジニア観点で早期発見できるリスクはたくさんあります。例えば、システムで取り扱う情報をどんな手段で実現するか。リスクを早期発見するためは、要件定義の時からシステム構成をイメージして臨むことが重要です」と話す。
「早くつくる」ために、ちりつもで工数がかかるものは初期段階から自動化を
続いて「早くつくる」ために重要な観点について考えていこう。短納期であればメンバー増員などさまざまな対策があるものの、今回は自分でもできる「つくるべきものに集中できる環境」に焦点を当てる。
南舘氏は「すぐできることとして、属人化する作業や繰り返しの作業は早めに自動化したほうがいいです」と推奨する。今回の開発では、初期段階からテストデータの生成やデプロイは自動化した。理由として南舘氏は「1回だけなら簡単でも頻度が高いものはちりつもで工数がかかるため。加えてヒューマンエラーの防止にもなります」と挙げる。
加えて、"自分の生産性が落ちる"。開発が進んでいくとチームに影響があるタスクが優先的となるので、断続的な作業があると集中力が途切れてしまい、工数が余計にかかってしまうことにもなりかねない。自動化するにも工数はかかるものの、長期的な目線で自動化すべきことは早めに自動化に着手したほうがいい。
"早くつくる"ためには作るべきものに集中できる環境を整えておくことが大事だ。最後に南舘氏は「いいサービスを生み出すために、いい開発をしましょう! 今日のお話から1つでも有効だと思うものがあったら、ぜひ採り入れてください」と述べて講演を締めた。
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