メンバー育成を通じた、自分自身のステップアップとは
ここからはニジボックスの組織的な取り組みについて見ていこう。同社は、エンジニアが成長するための環境作りに力を入れている。社内研修は開発メンバーも企画に関わり、実際の案件に役立つスキルを学べる内容となっている。外部講師を招くこともあるそうだ。また、社内LT(ライトニングトーク)などのイベントを通じて、他プロジェクトに参画しているメンバーとの知見共有の機会も設けている。
今回は、坂村
氏がかつて注力したメンバー育成について紹介する。きっかけは、社内のあるバックエンドエンジニアがフロントエンド担当になったことだ。モダンフロントエンド開発の知識をより深く定着させてもらいたいと、さらなる学習を勧めた。まず、スキルシートを使用して学習開始前のスキルレベルを把握する。このスキルシートは社内で運用しているものをベースにアレンジした。スキルシートから、自信のないスキルをどのような学習で伸ばしていくかを相談し、実際に学習を進める。もし分からないことがあれば、週次の1on1やチャット で都度フォローする。最終的には期の最後に再びスキルシートを記入してもらい、成長度合いを測定する。
一通り実践してみて、坂村氏は「適切な学習題材を選定することの難しさ、スキルシートに沿っ
て偏りのない学習を意識することの大切さ、そして自分の計画性の甘さに気づきました」と振り返る。例えば題材選定について。スキルシートから「○○が分かるようになる」という目標を設定する際に、アクションが「アプリケーションを作成してみよう」だけでは不十分だ。坂村
氏は「この項目を伸ばすなら、こういう機能が作れるようになると達成できたことになる」と いうところまで考える必要があったと説明する。理解不足の部分をリストアップしてもらい、理解度を高めるための質問会を開くなど、伸ばしたい項目にフォーカスする取り組みも行ったそうだ。さらに、「こうした成長支援は自分に経験がないと肌感がつかめないので、日ごろから業務外の範囲であっても勉強しておくことが大事」と話した。計画性について、坂村氏は「育成を通じて本人にスキルがつくことで、結果、本人の業務負荷を軽減することにつながるため、業 務に入る前にスキルシートの『どの項目』を『どの程度』まで理解している状態にしたいのか、詳細な計画が必要だと学 びました。次に育成の機会があったら、この反省を活かしたいです」と話した。最
後 に「ニジボックスでの経験を振り返ると、少しずつ新しいことに挑戦し続けた4年半でした。今後もこのように挑戦を続け、よりエンジニアとして成長していきたい」と抱負を語り、坂村氏はセッションを締めくくった。