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Developers Boost 2024 セッションレポート

人気ゲームタイトルをリードする若手エンジニアが実践する、成長するためのキャリアパスとは

【Session1】生存戦略を意識したキャリアパスの考え方と組織作り

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 株式会社アプリボットでエンジニア責任者、新規プロジェクトリードなど多面的に活躍する杉浦 優介氏。AI活用が普及しつつある現在から未来に向けて、「単純な開発作業だけではエンジニアの需要は減る」と危機感を募らせる。今後どのようなエンジニアが重宝されるのか、キャリア形成のために組織内でどう振る舞えばいいのか。杉浦氏自身の体験を踏まえ、これからのエンジニアのキャリアパスについて提言を行った。

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やりたいことを実現するためには

 2018年にサイバーエージェントに入社した杉浦氏。その後、ゲーム事業部の子会社である株式会社アプリボットへ配属され、スマホゲーム「NieR Re[in]carnation」の立ち上げに携わり、UI周りの開発を主に担当するアウトゲームセクションのリーダーを担当。そして、3年目に同タイトルのリリースと同時にプロジェクトのリードエンジニアとなり、6年目から現在にかけて、新規プロジェクトのリードエンジニアを担う。

株式会社アプリボット 新規プロジェクトリードエンジニア兼アプリボットエンジニア責任者 杉浦 優介氏
株式会社アプリボット 新規プロジェクトリードエンジニア兼アプリボットエンジニア責任者 杉浦 優介氏

 アプリボットはゲーム開発以外にも、非ゲーム領域の企業と連携したDX事業や、海外のスマートフォン向けアプリの日本市場導入のサポートなど幅広く手掛け、全社員300人のうち1/3をエンジニアが占める。

 その中で杉浦氏は、エンジニア責任者として組織文化づくりや採用を担い、技術広報リーダーとしても幅広く活動してきた。つまり、事業の「プロジェクトにおける活動」と「組織のための活動」と両輪でエンジニアとしてのキャリアを積み上げてきたことになる。

杉浦氏の現在までのキャリア

 杉浦氏は「サイバーエージェントでは組織貢献という文化が根強く、プロジェクトの活動とは別に組織作りの活動をしている人が多い。私も1〜2年目で技術広報責任者として、会社の技術ブログの運営や、SNS運営、技術書典など幅広く担当した。その後に、社内のクライアント領域のエンジニア責任者として抜擢され、クライアント領域の社内の課題解決や技術戦略の策定などを行うこととなった。また去年からは、クライアント領域だけでなくエンジニア領域全体の責任者となり、より幅広く組織側でも活動するようになった」と語る。

 現在は、プロジェクト側ではリードエンジニアとして技術選定や機能実装に携わり、チームビルドやスケジュール管理などマネジメント業務も担う。そして組織側では、新卒・中途採用に加え、組織文化づくりとして勉強会や社内活性化を行う社内組織や、技術戦略の実現を目的とした技術コミュニティなどを創出・運営している。さらにエンジニアの責任者として役員会に出席し、エンジニア領域の課題解決を行うという。

杉浦氏が現在やっていること

 杉浦氏は「入社時から一貫して目標を持ち、やりたいことを徐々に実現してきた。その過程で軸となる『最終的な目標』と、その目標を活用した『自身のモチベーション管理』加え、『周りからの信頼』が必要」と語る。では杉浦氏は、それぞれについてどのように考え、どのように行動してきたのか。

目標から実践すべきことを見据える

 「キャリアの考え方」について、杉浦氏は「堅実に考えること」「目的をもって楽しんで働けること」を前提としているという。そこでまずは「やりたいこと」の抽出を行った。「人生においてやりたいこと」をすべてマインドマップで整理し、毎年書き足していく。これによって、自分が真にやりたいことが整理され、キャリアを考える土台となる。そして、その中から最も大切なもの、最終的な目標を決めていく。

 杉浦氏は「現在の業務に縛られずに考えることが大切」と強調し「人がモチベーションを持って実行できるのは、真にやりたいこと。『あなたは何がやりたいの?』と聞かれたときにパッと出てくるようにしておきたい」と語る。

 杉浦氏の最終目標は「多くの人の人生に大きく影響を与えるようなタイトルを、自分がリードして作ること」だという。この時、あまりに具体的な目標にしすぎると、思考が縛られ、キャリアの芽を摘んでしまうことになりかねないため、若干抽象的である方が望ましい。

 そして、この目標を目指して、中長期で行うべきことを逆算して考える。「抽象的なものを、そのときの視野で具体化する」というイメージだ。さらに仕事をする中で、世の中の変化に合わせて、変わっても良いという。

 杉浦氏の場合「多くの人の人生に大きく影響を与える」という目標について、自分の実体験から「e-sportsやMMOなどのゲームジャンルのタイトルを作ること」で達成できると考え、それがかなう組織づくりが必要と考えた。そして「自分がリードして」という部分については、マネージャーではなく”エンジニアとして”リードしたいという思いから、ゲーム開発を一通り経験することを目標においた。

最終的な目標を決める
目標から逆算して必要なことを考える

 必要な要素を捉えた後は、着実に実行することを決めていく。この時、杉浦氏が重視するのは「キャリアを点ではなく線で捉えること」だという。現在の自分の業務がどうつながるのかを意識し、あまりにかけ離れているものは排除するなど、取捨選択するというわけだ。

 例えば、「ゲームクライアント開発に詳しくなること」が目標である場合、関連性が弱いWebフロントやインフラ、Web3などよりも、関連性が強いゲームエンジンやゲームAI、グラフィクスなどを優先的に学ぶようにしているという。

やることを点ではなく線で考える

 一方で、杉浦氏は「あまり目標に縛られすぎないことも大切」と語る。例えば、技術的なスペシャリストを目指していても、マネジメントにも興味が湧いたら挑戦してみる。最終的な目標が大きいほど、経験が自分の目指しているキャリアにつながる可能性があるからだ。

 さらに現在の業務についても、自分の最終的な目標から逆算して「何につながっているか」を意識することでモチベーションが上がるという。例えば、新卒向けの研修を任された際に、面倒に思ってやるか、育成や戦略性を伸ばす経験ができると考えられるかで、モチベーションは変わるだろう。

 その他の観点として「常に市場価値を意識すること」をあげる。例えば、AIによって基礎的な開発が不要になる可能性を想像して、より尖ったスキルが必要なスペシャリストを目指す。幼少期からプログラミングを経験する世代と対峙するためにマネジメントスキルを身に着ける。このように先を見越してキャリアを考えておくというわけだ。杉浦氏は「将来はわからないが、先を見越して市場価値を意識することが重要」と語った。

次のページ
目標実現に向け「組織づくり」に関わる4つのメリット

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

丸毛 透(マルモ トオル)

インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。

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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

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