米Microsoftは、12論理量子ビットを備えた量子コンピュータを試作し、動作させることに成功したと9月10日(現地時間)に発表した。論理量子ビットを12個揃えて作動させるのは世界記録になるという。
量子コンピュータの演算を担う量子ビットは、ノイズに弱いためエラーが発生しやすい。そのため、量子ビットを絶対零度近くまで冷却して、原子や分子の運動を極力抑えるなどの対策が必要になるが、それでもノイズの影響を完全に抑えることは難しい。
そこでMicrosoftは、複数の量子ビット(物理量子ビット)を束ねて、1つの論理量子ビットとして扱う「量子ビット仮想化(Qubit Virtualization)」と呼ぶ手法を採用した。Microsoftは2024年4月に、量子コンピュータを開発している英Quantinuumの協力を得て、30の物理量子ビットを使って4つの論理量子ビットを構成し、エラー発生率を800倍も抑制できたと発表している。今回Microsoftは、Quantinuumの量子コンピュータ「H2(56物理量子ビット)」の実機で12量子ビットを構成して、実際に稼働させることに成功した。
さらにMicrosoftは、米Atom Computingとの協業で、世界最高の性能を誇る量子コンピュータの実機を開発すると発表した。Atom Computingは現在、1200を超える物理量子ビットを備える量子コンピュータの開発を進めており、この量子コンピュータに、Microsoftが開発した量子ビット仮想化などのエラー耐性を高める仕組みや、障害に対する耐性を高める仕組みを組み込んでいく。そして、開発した量子コンピュータは、Microsoftの「Azure Quantum」で、クラウドサービスとして提供する予定だ。その後は新世代の製品が登場するごとに量子ビットの数を10倍に増やしていく計画を立てている。
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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)
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