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技術に専念したいシニアエンジニアのための、非管理職「ソルバー」というキャリアの形

【A-3】シニアエンジニアを超え、スペシャリストとして組織の道を開拓する「ソルバー」という働き方

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ソルバーが必要とされている現場の「サイン」

 ここまで見て「アジャイルの実装ならアジャイルコーチ、アーキテクチャ設計ならアーキテクト、他の役割とかぶっているのでは?」と思うかもしれない。東氏は「確かに、実際かぶっています。しかしそれでもソルバーが必要とされるのは、組織やチームが抱える状況にあると考えています」と言う。TOKIUMを例に見ていこう。

 法改正の後押しもあり、TOKIUMはここ数年で事業も組織も急拡大を遂げた。その過程で組織が未知の領域に踏み込むことで、次のような問題に直面してきた。

 1点目は採用や教育が追いつかず、リソースやスキルが一時的に不足する。特にサービス立ち上げ時には必要なスキルやリソースが十分ではないチームが生まれてしまう。既存チームも重要な施策が進行中で、なかなか手助けできない。

 こういう時こそソルバーの出番だ。遊撃的にチームにジョインして、チームに知識や技能が足りない程度であれば、一緒に作業することで業務遂行と教育を両立できる。スキル習得や採用で解決したら早期に離脱できる。東氏の経験だと「だいたい1か月で抜けています」と言う。

 2点目はチーム横断体制が未整備で、チーム単体で扱えない課題を前に硬直してしまうこと。共有リソースに関する方針や仕組みが追いつかないままチームが増えてしまうと、チーム単体で扱えない問題が生まれたときに対処したくてもチームの領分を超えてしまうため、「お見合い」状態となり手を出せなくなる。誰かが課題を拾わないとならない。

 こういう時でもソルバーがいったん受け取ることで、協力と解決をリードすることができる。その後問題を緩和させたり、解決策をリーダーやEMに引き継いだりして、ソルバーは離脱する。なお、チームが乱立するリスクもあるため、最終的には管理構造にも手をいれないと解決できない。この点はなかなか難しい。

 3点目は未経験・未知なる問題への直面。組織が初めて取り組む問題や、問題が曖昧で解決策がイメージできなかったりすると、誰かが問題領域を探索する必要がある。これこそソルバーが立ち向かうケースとなる。事業の成長が早く、状況の変化が早いとこうした課題が多く発生しがちだ。

 つかみどころのない課題には探索的なアプローチで具体的な解決策へと導く必要がある。言い換えると、探索するなかで必要なスキルや構造を見いだし、育成や採用で置き換えていくことになる。

 東氏は「ソルバーは組織の基本構造から外れたところで生じた課題に対応するために、時にはアジャイルコーチ、時にはアーキテクトなど必要な役割で切り込みます。またマネジメント構造に固定されない単独のチームなので、必要な箇所、必要な時期に入り込めます。その時々で役割を変えて対応するために、さまざまな能力が要求されてきました」と話す。

 ソルバーに必要な能力については、東氏は3点ポイントを挙げた。1点目は学ぶ計画を立てる能力。重要度の高い、抽象的な課題に取り組むため、効果的かつ計画的に学習する必要がある。東氏は「抽象度と難易度にあわせて計画を使い分けるといい」と提案する。例えばリーダーシップのスキルを半年計画で、大規模アジャイルは3か月計画で学んだという。学ぶべき対象を見定めたら、少しずつでもいいから学ぶ習慣を付ける。「掘り続けつつも、飽きないように他の領域にも目を向けるとか、適度に自分の好きなところをつまみ食いするのもいい」と東氏。

 2点目は頻繁にフィードバックを受けいれること。東氏は「抽象的かつ複雑な課題を扱う時にはすぐに解決策に飛びつかず、プロセスを設計して、チェックポイントを作って取り組むこと」とアドバイスする。そのためにも上司はもちろん、チームからのフィードバックを受けいれるといい。東氏は「相手を尊重すればその分協力してもらえますし、大きな課題は1人では解決できないので協力を得ることが不可欠です」と言う。

 3点目は組織と人を理解すること。課題解決に取り組んでいると、組織に原因があることもある。東氏は「技術負債の原因にプロセスの問題があることはよくあることです。本当の課題解決を請け負うなら、テクノロジーだけではない手段も扱えるようになるといいです」とアドバイスする。2年間ソルバーとして活動するなかで、東氏は「組織も人も、それ自身が望まなければ変わらない」と確信したという。独りよがりでは改革はできないということだ。そのためマネージャではなくてもマネジメントスキルは役に立つ。

 ソルバーを経験して、東氏は次のようにアドバイスする。「めまぐるしい状況で先行きが見えず、能力の限界に悩むなどシニアエンジニアにはない苦しみがありますが、意思決定層に提案して大きな流れを作ったり、刺激的な仕事を通じて成長を感じられたり、ソルバーらしい楽しさもたくさんあります。チームの外に課題が転がっていたら、ソルバーを求めているサインかもしれません。まずはそれを拾ってみるのが第一歩です」

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この記事の著者

加山 恵美(カヤマ エミ)

フリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Onlineの取材・記事や、EnterpriseZine/Security Onlineキュレーターも担当しています。Webサイト:http://emiekayama.net

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

CodeZineは、株式会社翔泳社が運営するソフトウェア開発者向けのWebメディアです。「デベロッパーの成長と課題解決に貢献するメディア」をコンセプトに、現場で役立つ最新情報を日々お届けします。

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篠部 雅貴(シノベ マサタカ)

 フリーカメラマン 1975年生まれ。 学生時代、大学を休学しオーストラリアをバイクで放浪。旅の途中で撮影の面白さに惹かれ写真の道へ。 卒業後、都内の商業スタジオにカメラマンとして14年間勤務。2014年に独立し、シノベ写真事務所を設立。雑誌・広告・WEBなど、ポートレートをメインに、料理や商品まで幅広く撮影。旅を愛する出張カメラマンとして奮闘中。 Corporate website Portfolio website

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提供:株式会社TOKIUM

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