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デンソーのエンジニアファーストな人材育成プログラム ――「SOMRIE認定制度」が実現する世界

【13-D-3】エンジニアファーストな「デンソー」の人材育成プログラム ~SOMRIE認定制度が実現する世界~

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SOMRIEメソドロジスペシャリストが語る組織改善

 SOMRIEメソドロジスペシャリスト チーフの平野氏が登壇し、自身の経験を語った。医療機器のソフトウェアエンジニアを経て、2013年にデンソーに入社。エンジニアが開発しやすい環境を整えるため、ツールやプロセスの改善に取り組んできた。開発チームの負担を減らしたいと考え、プロセス改善やツール開発を進めるうちに、次第に組織全体の改善活動を任されるメソドロジストとなった。

株式会社デンソー セーフティセンサー&コンポーネント技術3部 課長 SOMRIE メソドロジスペシャリスト 平野 勝靖氏
株式会社デンソー セーフティセンサー&コンポーネント技術3部 課長 SOMRIE メソドロジスペシャリスト チーフ 平野 勝靖氏

 メソドロジストは、ソフトウェア開発を行うエンジニアが効率的に業務を遂行できるよう、ツールやプロセスの改善を担う役割を持つ。デンソーではエンジニアが働きやすい環境への投資を進めており、平野氏もその一員として活躍している。

 メソドロジストがいない組織では、新ツール導入の要望が直接エンジニアに届き、納期に追われる中で十分な検討ができず、問題が放置されることが多い。メソドロジストはこうした課題を解決し、ツールの選定やカスタマイズ、プロセス構築を担うことで、エンジニアが開発に専念できる環境を整える。

メソドロジストが環境を整備することで、効率的に開発ができるチームになる
メソドロジストが環境を整備することで、効率的に開発ができるチームになる

 このような役割はコストセンターと見なされることも多いが、平野氏の組織ではメソドロジストの活躍により、5年間でエンジニアの工数を20%削減する成果を上げている。この成果の背景には、徹底した自動化があった。平野氏は、100以上のツールを使ってエンジニアの手作業を徹底的に自動化してきた。しかも、ただ自動化をするだけでなく「エンジニアが嬉しさを感じること」を念頭に活動を続けている。

成果を出すための4つのポイント

 多くの組織で、メソドロジストのような役割が用意したツールやプロセスが使いにくいと思われる場合もある。エンジニアが嬉しさを感じられていない状況だ。平野氏自身も以前経験したことがあることを明かし「改善を行う際は、エンジニアファーストを重視しています。エンジニアが働きやすい環境こそが、ソフトウェア開発の生産性を最大化すると考えているからです」と、成果を出すための4つのポイントを解説した。

 1つ目のポイントが、「熱意のある人たちから始める」だ。多くのエンジニアは開発環境を良くしたいと考えており、その関心を理解し、適切な改善提案を行うことが求められる。平野氏たちの活動では、イノベーター理論を活用している。

 この理論は、新しい技術やアイデアが普及する過程を五つのタイプに分類し、イノベーターやマジョリティといったグループの特徴を示したものだ。マーケティングでよく取り上げられるが、改善活動の際、まず新しいものに関心が高いイノベーターをターゲットにする。そのモチベーションを高めながら、プロセスを作り込み、そこで得た実績を活用してマジョリティの関心を引くという流れで改善を進めている。このやり方は成功確率を高めるとともに、平野氏自身の工数を抑える効果もある。

意欲の高いイノベーターが、改善活動を牽引。メソドロジスト自身も成長の機会を得られる
意欲の高いイノベーターが、改善活動を牽引。メソドロジスト自身も成長の機会を得られる

 2つ目のポイントが、「嬉しさの可視化」だ。イノベーターは周囲と違うことを好み、ポジティブな傾向があるが、業務が忙しくなるとモチベーションが下がりやすい。そのため、モチベーションを維持するために、成果の「嬉しさ」を見える化することを重視している。

 例えば、改善活動を提案する際には、イノベーターが過去に担当したプロジェクトの工数実績をもとに、改善効果を算出する。すると活動の成果を実感しやすくなる。また、改善活動の効果を可視化したデータを定期的に関係者と共有し、達成感を共有しながら進めている。

 3つ目は、「業務を高い解像度で理解する」ことだ。業務の理解度が高いほど、改善案の完成度も上がり、現場での導入時に認識のズレが生じにくくなる。そのためには、業務の各工程をインプットからアウトプットまで5W1Hで整理し把握する。たとえば、Howについてはマウスの1クリックまで分解して理解するのが理想だ。開発者がどのように作業を進めているのかを細かく把握することで、改善案の妥当性をエンジニアの視点から客観的に判断できるようになる。

 平野氏は「一般的なメソドロジストは担当する領域が広いため、ここまで細かく分解して取り組む人は少ない印象です。しかし、労力はかかるものの、徹底することで現場とプロセスのギャップが大きく縮まり、最終的には定着にかかる労力も軽減されると考えています」と話す。

 4つ目のポイントは「働きやすさの追求」だ。改善案を考える際、エンジニアの不要な作業を極限まで減らすことが、定着と効率化の観点で欠かせない。 例えば、組織のマネージャー向けに進捗報告の仕組みを整え、GitHubなどのツールから必要な情報を自動抽出し、進捗ダッシュボードを作成している。これにより、エンジニアがスプレッドシートに手作業で情報をまとめる手間を省き、モチベーションの上がらない業務から解放することができる。

 メソドロジストの仕事の魅力について、平野氏は「技術とアイデア次第でどこまでも成果を上げられること」と語る。成果には、事業のQCD良化、新しい技術や人との出会いによる成長、そしてエンジニアのQOL向上が含まれる。特に、新しい技術にいち早く触れ、それを活用してエンジニアの笑顔を見られる点が魅力だと感じているという。

 こうしたメソドロジストの活躍の場は今後さらに広がると考えられる。デンソーのソフトウェア戦略によれば、車載ソフトウェアは今後ますます大規模化し、2030年には2023年度比で3倍になると予測されている。一方、事業強化の観点から、人員の増加は1.5倍に抑える方針が示されており、そのために開発効率を2倍にする取り組みにデンソーのメソドロジストは挑戦している。

 平野氏は最後に、「この仕事に興味を持った方がいれば、職場に戻った際に、隣のチームメートが笑顔になるような改善活動を一つ試してみてください。私もそこからキャリアや組織の変化が始まりました」とメッセージを送った。

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし・...

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山出 高士(ヤマデ タカシ)

雑誌や広告写真で活動。東京書籍刊「くらべるシリーズ」でも写真を担当。

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