地方在住者、女性、小学生までもが気軽に参加
オンラインで参加できる仕組みは女性の参加も増やすことにつながった。「耳だけ参加」も可能なので、家事や育児をしながら視聴できるためだ。なかには出産前日まで病院のベッドで講演を聴き、出産後に体験談を発表してくれた女性もいたという。
女性は出産などのライフイベントでキャリアが中断してしまうことも。しかしこのコミュニティは、オンラインで気軽に参加できるため中断した後のギャップをある程度埋めることができる。「キャリアを諦めなくてよくなりました」と運営に感謝の思いを伝えてくれた。
またインフラ勉強会への最年少の参加者は、なんと小学生。佐々木氏は「小学生に『Linuxサーバーの作り方を教えてください』なんて言われたら、そりゃあ大人たちは嬉しくなって、みんなで教えますよね」と笑う。
コミュニティで成長できてAWSやMicrosoftなどIT企業に転職したり、MVPなどで表彰されたり、セミナーで講演したり、いろんな成功や飛躍をしていく人たちを目の当たりにした。佐々木氏は「眩しいくらい羽ばたいた人がいっぱいいました。それはやはりみんなの熱量がすごかった。異常にすごかった。自分も何かやらなきゃと思えるような、そんな特別な場でした」と振り返る。
他にも盛り上がった理由として佐々木氏は「バックにスポンサーがいないので、フラットな場だった」と話す。「どのクラウドがいい?」「どのベンダーがいい?」と技術選定する時に中立的に判断できる。
それでいて参加者が多いので「AWSのこれってどうなっているんだろう?」と分からないことがあればAWSの中の人が回答してくれたり、「コンテナのここが分からない」と質問すれば第一人者が回答してくれたりする。あらゆる技術のエキスパートが揃っていたので、質問や疑問が解消されないことがほぼなかったそうだ。
大規模コミュニティを運営するために設けたルール
参加者の熱意や意識が高かったので、特にルールを定めることなく、それぞれの自主性に任せて運営ができていた。それだけコミュニティの総意が学ぶことにフォーカスしていたためだろう。
しかし、参加者が1000人を超えるころになると「利用規約を作らないと」という話が浮上した。リスクに備えて禁止事項を列挙しようと提案する人もいたが、佐々木氏は「公序良俗に反するなら当然慎んでもらいますが、禁止事項が多いなんて治安が悪いみたいじゃないですか。それを考える工数がもったいない」と話す。
結果的に利用規約には権利や注意事項など最小限にとどめて「営利目的の宣伝など勉強以外のことが主目的の場合はご遠慮ください」と記すことにした。あくまでも柱は「勉強に関係ないことはしないで」だ。
利用規約の冒頭にある基本理念には「インフラエンジニアの初心者の気持ちに寄り添って」や「提供者の善意に感謝して利用しましょう」といった表現がある。この理念がコミュニティ内に深く浸透していたのだろう。
しかし、微妙だったのはハッキング手法や攻撃手法についての扱いだった。一般的には表立って扱うことは憚られるものの、インフラを扱う上では知らなくてはならないこともある。「法律に抵触しない限りは問題ありません。ハンズオンを行う場合は、自前のサーバー内で行うなどご配慮をお願いします。」などにとどめることにした。
実質的な運営やマネジメントは若い層が担っていた。フットワークが軽く、やりたいという熱意にあふれていたからだろう。本業よりも先にマネジメントを学ぶ機会になった人も少なくない。
例えばイベントをするなら、会場の確保、予算の見積もり、ノベルティの準備などのタスクを管理していくことになる。これらはちょっとしたPMの訓練にもなる。業務で失敗したらキャリアに痛手になるが、コミュニティなら致命的な問題にならない。「コミュニティで安全に失敗しよう」とよく言い合っていたそうだ。それは佐々木氏にもあてはまった。
