はじめに
本記事では、Azure Artifactsの基本機能から実際のパッケージ公開・利用方法まで、実践的な例を交えながら解説していきます。
対象読者
- Microsoft Azureや他のクラウドサービスを利用している方
- アジャイル開発を行っている方
- DevOpsの一通りの流れを理解したい方
- パッケージ管理に課題を感じている開発チーム
アーティファクト(成果物)とは?
現代のソフトウェア開発において、外部ライブラリや社内で開発した共通コンポーネントの管理は重要な課題です。複数のプロジェクトで同じライブラリを使用する場合や、チーム間でコンポーネントを共有する場合、適切なパッケージ管理システムが必要になります。
Azure Artifactsを活用することで、これらの成果物を効率的に管理し、チーム間での共有を実現できます。
ソフトウェア開発における「アーティファクト」(成果物)とは、開発プロセスで作成される成果物の総称です。具体的には以下のものが含まれます。
コンパイル済みバイナリファイル
ソースコードをコンパイルして生成される実行可能ファイルやライブラリファイルです。例えば、C#で開発したプロジェクトから生成される.dllファイルや.exeファイル、JavaScriptのプロジェクトから生成される圧縮・最適化されたファイルなどが該当します。
パッケージファイル
特定の形式でパッケージ化されたライブラリやコンポーネントです。.NET環境ではNuGetパッケージ(.nupkg)、Node.js環境ではnpmパッケージ、Java環境ではMavenアーティファクト(.jar)、Python環境ではwheelファイル(.whl)などがあります。
コンテナイメージ
DockerコンテナやOCIコンテナのイメージファイルです。アプリケーションと実行環境をまとめてパッケージ化したもので、実行環境に依存しない配布・実行が可能です。
テストレポートやドキュメント
自動テストの実行結果レポート、コードカバレッジレポート、APIドキュメント、設計書なども重要な成果物です。これらは品質管理や保守性の観点で価値を持ちます。
これらの成果物を適切に管理することで、開発効率の向上、品質の担保、チーム間の連携強化を実現できます。
Azure Artifactsとは?
Azure Artifactsは、Azure DevOpsのサービスラインナップの一つとして提供される、パッケージ管理サービスです。開発チームが作成したライブラリやコンポーネント、外部から取得したパッケージを一元管理し、プロジェクト間での共有を効率化します。
主な特徴
Azure Artifactsには、以下の特徴があります。
(1)複数のパッケージ形式をサポート
Azure Artifactsは、現在主要なパッケージ管理システムをサポートしています。
- NuGet:.NET Framework/.NET Core/.NET環境で使用されるパッケージ管理システム
- npm:Node.js環境で使用されるJavaScriptパッケージ管理システム
- Maven:Java環境で使用されるパッケージ管理システム
- pip:Python環境で使用されるパッケージ管理システム
- Gradle:Javaプロジェクトのビルドツールと統合されたパッケージ管理
- Universal Packages:言語に依存しない汎用的なパッケージ形式
(2)フィード機能による柔軟な管理
Azure Artifactsでは「フィード」という単位でパッケージを管理します。フィードは、関連するパッケージをグループ化して管理する仕組みで、プロジェクトやチームごとに分けて運用できます。また、パブリックなパッケージリポジトリ(nuget.org、npmjs.comなど)をアップストリームソースとして設定することで、外部パッケージと内部パッケージを統一的に管理できます。
(3)セキュリティとアクセス制御
Azure Artifactsでは、きめ細かいアクセス制御が可能です。フィードレベルでの権限設定により、読み取り専用、寄稿者、所有者などの役割を定義できます。また、パッケージの署名検証やスキャン機能により、セキュリティリスクを軽減できます。
(4)Azure DevOpsサービスとの統合
他のAzure DevOpsサービスとシームレスに連携できます。Azure Pipelinesでビルドしたパッケージを自動的にAzure Artifactsに公開したり、Azure Reposのブランチポリシーでパッケージの依存関係チェックを行ったりできます。