プロジェクトの目線を揃えるための「4つの観点」と「3つの軸」
ここまでの話を踏まえて長谷部氏は、改めて、価値観の違いを「まず受け入れる」必要を説く。ギャップを無理に埋めようとするのではなく、それらを当たり前に生じるものと受け入れる。そのうえで、どう目線を揃えていくかを設計することが、遠回りに見えてもっとも近道だというのだ。
そのための方法論として提示されたのが、特別なカリスマ性や高度なファシリテーションスキルに依存しない、仕組みとしてのマネジメントである。
まず長谷部氏は、プロジェクトで揃えるべき目線を四つに分解する。一つ目が「プログレス」、すなわち成果や進捗である。二つ目が「プロセス」、プロジェクトの進め方そのものだ。三つ目は「チーミング」、そのプロセスを担うチームの状態。そして四つ目が「ラーニング」、個人やチームが得ている学びである。
多くのプロジェクトでは、目線がプログレスに偏りがちだ。リリース日やKPIが設定され、「とにかく作ること」が最優先事項になる。しかし長谷部氏は、「成果と進捗だけをマネジメントしても、いいものは生まれない」と指摘する。進め方が不適切で、チームの状態も悪く、学びが伴わなければ、成果が一時的に出たとしても再現性はない。
そもそも四つの観点は、互いに独立したものではない。図で示すように、プログレスは最上段にあり、その下をプロセス、チーミング、ラーニングが支える構造として捉えるのが正しい。土台が不安定なら、成果は簡単に崩れる。
では、この四つの観点をどのように揃えていけばよいのか。その指針として示されたのが、「三つの軸」である。
一つ目は「思考の軸」だ。プロジェクトでは、論理や数値で捉えられる進捗や指標と、現場で感じ取られている違和感や直感の両方を行き来することが求められる。とりわけエンジニアであれば、数値化はできなくとも、「このまま進むと危ない」という感覚を覚える場面はあるだろう。こうした感覚を置き去りにされると、後になって問題として噴出する。
二つ目が「時間の軸」である。過去の失敗や人間関係の経緯に囚われると、思考は硬直する。一方で、未来のビジョンだけを語り、現在の現実的な一手を欠いた計画もまた、空回りしてしまう。過去・現在・未来を行き来しながら、今どこに立っているのかを確認することが重要だと、米山氏は補足する。
三つ目が「組織の軸」だ。組織やチームとしての目標と、個人の思いや意思。そのどちらか一方が切り捨てられると、プロジェクトは歪む。「いいものを作りたい」という個人の感覚が尊重されない現場では、主体性は育たない。一方で、個人の思いだけに寄りすぎても、プロジェクトは前に進まない。
「この三つの軸を意識しながら、四つの観点を点検し続けてほしい」と長谷部氏は述べる。完璧な合意を目指す必要はないし、それは現実的でもない。まずは思いを共有する余白をつくり、何を目指し、何を大切にしたいのかを、小さくても言葉にし続けることが重要なのだ。
