対象読者
- Next.jsで業務システムを開発している方
- 帳票機能の組み込みを検討している方
- ActiveReportsJSやWijmoに興味がある方
前提環境
筆者の検証環境は以下の通りです。
- macOS Tahoe 16.1
- Node.js 25.2.1
- npm 11.6.2
- Next.js 16.1.3
- React 19.2.3
- Wijmo 5.20252.44
- ActiveReportsJS 6.0.1
- Firebase 12.8.0
はじめに
前回は、Next.js + Firebase + Wijmo + ActiveReportsJSの4つの技術スタックを組み込み、FlexGridやTreeViewといったWijmoコンポーネントと、ActiveReportsJS Viewerによる基本的な帳票表示を確認しました。ただし、データは仮のモックデータを使い、帳票にはまだ業務データが反映されていない状態でした。
今回は、データバインドの仕組みを理解した上で、以下の2つを実現します。
- 業務データをActiveReportsJSの帳票に反映する(データバインド)
- WijmoのFlexGridで選択したデータを帳票に連携する(Wijmo → ActiveReportsJS連携)
これにより、UIで操作した内容がそのまま帳票に反映される、実践的な業務システムの姿を構築します。
ActiveReportsJSのデータバインド
ActiveReportsJSでJSONデータを帳票に反映するには、「データソース(DataSource)」と「データセット(DataSet)」という2つの概念を理解する必要があります。まずDesignerを使ってこれらの概念と設定手順を確認し、続いてプログラムから実行時にデータをバインドする実装を見ていきます。
Designerでのデータソース設定
ActiveReportsJS Designerを使って、データソースとデータセットを設定しましょう。
Designerのデータタブを開き、データソース右側の「+追加」アイコンをクリックすると、データソース編集ダイアログが表示されます(図1)。ダイアログで以下を設定します。
-
名前:
ProductsDataSource(任意) - 種類:JSON
- 形式:埋め込み
「埋め込み」形式は、実行時にプログラムからデータを渡す際に使用します。サンプルとなるJSONデータをあらかじめ入力しておくことで、設計時にフィールド構造を確認できます。ここでは、サンプルプロジェクトに含まれている「products.json」を入力しています。
次に、データソース名横の「+」アイコンをクリックします(図2)。
データセットダイアログが表示されるので、以下のように設定します(図3)。
-
名前:
Products(任意) -
クエリ(JSONPath式):
$.*(配列のルートから各要素を取得する指定)
「検証」ボタンをクリックすると、サンプルデータからフィールドが自動検出されます。code、name、price、stock、unitといったフィールドがデータセットに追加されます。フィールドをレポートアイテムにバインドする際はDataFieldを指定します(Valueを直接指定するとデータがバインドされず、フィールド名がそのまま表示されてしまいます)。
実行時のデータバインド
ReportViewerWithDataコンポーネントでは、レポート定義を取得した後にConnectStringを書き換えることで、任意のJSONデータをレポートにバインドしています(リスト1)。
// レポート定義を取得
const response = await fetch(reportUri);
const reportDef = await response.json();
// データソースにデータをバインド
if (reportDef.DataSources && reportDef.DataSources.length > 0) {
reportDef.DataSources[0].ConnectionProperties.ConnectString =
"jsondata=" + JSON.stringify(data);
}
// Viewer を動的インポートして初期化
const ArViewer = await import("@mescius/activereportsjs/reportviewer");
if (!viewerRef.current) {
viewerRef.current = new ArViewer.Viewer(hostRef.current);
}
// レポートを開く
await viewerRef.current.open(reportDef);
"jsondata="プレフィックスに続けてJSON文字列を設定することで、外部ファイルではなくプログラムから渡したデータをレポートに反映できます。レポート定義のJSON取得 → ConnectString書き換え → Viewerでオープン、という3ステップがデータバインドの基本フローです。
図3は、この仕組みで商品データをバインドした帳票の表示例です。
Server Componentからのデータ受け渡し
前回のサンプルでは、各ページがクライアントコンポーネントとしてモックデータを直接インポートしていました。実際の業務システムでは、データベースからデータを取得してUIに渡す構造が必要です。Next.jsのApp Routerでは、Server Componentでデータを取得し、Client Componentにpropsで渡すパターンが推奨されています。リスト2、リスト3にこのパターンの実装例を示します。
import { mockProducts, mockPartners, mockOrders } from "@/lib/mockData";
import ReportsPageClient from "@/components/reports/ReportsPageClient";
export default function ReportsPage() {
const products = mockProducts.map((p) => ({
...p,
createdAt: p.createdAt.toISOString(),
updatedAt: p.updatedAt.toISOString(),
}));
// …中略…
return (
<ReportsPageClient products={products} partners={partners} orders={orders} />
);
}
"use client";
import dynamic from "next/dynamic";
const ReportViewerWithData = dynamic(
() => import("@/components/reports/ReportViewerWithData"),
{ ssr: false }
);
export default function ReportsPageClient(
{ products, partners }: ReportsPageClientProps
) {
// …中略(selectedReportによるレポート切り替え)…
const config = getReportConfig();
return <ReportViewerWithData
key={selectedReport} reportUri={config.uri} data={config.data} />;
}
page.tsxはServer Componentとしてデータの取得・シリアライズを担当し、Date型をtoISOString()で文字列に変換します。Client Component側は"use client"で宣言し、dynamic({ ssr: false })でActiveReportsJS ViewerのSSRを無効化しています。このパターンにより、データの取得元をFirestoreや任意のAPIに差し替えるだけで、UIコードを変更せずにデータソースを切り替えられます。
受発注明細レポートの作成
ここまでは商品一覧のようなフラットなデータを帳票に表示してきました。しかし、業務システムで最もよく使われる帳票は、受発注伝票のようにヘッダー情報と明細行を組み合わせた伝票形式です。
ネストデータの変換
受発注データ(Order)はitemsプロパティに明細行の配列(OrderItem[])を持つネスト構造です。ActiveReportsJSのJSONデータソースにこのまま渡すと、明細行を個別のフィールドとして扱えません。そこで、コード側でデータをフラット化してからレポートに渡します(リスト4)。
function flattenOrder(order: SerializedOrder) {
return order.items.map((item, index) => ({
// ヘッダー情報を各明細行に展開
orderNumber: order.orderNumber,
type: order.type === "purchase" ? "発注" : "受注",
partnerName: order.partnerName,
orderDate: formatDate(order.orderDate),
deliveryDate: formatDate(order.deliveryDate),
status: order.status,
totalAmount: order.totalAmount,
// 明細行の情報
rowNumber: index + 1,
productCode: item.productCode,
productName: item.productName,
quantity: item.quantity,
unitPrice: item.unitPrice,
amount: item.amount,
}));
}
この変換により、各明細行がヘッダー情報を含む独立したレコードになります。例えば、3件の明細を持つ受発注データは、orderNumberやpartnerNameといったヘッダー情報が各行に複製された3件のフラットなレコードに展開されます。
Designerでのレポートレイアウト設定
受発注明細レポートでは、Designerでヘッダー情報と明細テーブルを図4のように設定します。
伝票番号や取引先名などのヘッダー情報はテキストボックスで表示します。値の式に=First(Fields!orderNumber.Value)のような=First()関数を使用するのがポイントです(Designer上では{First(orderNumber)}と簡略表記されます)。前述のフラット化処理によって全レコードに同じヘッダー情報が含まれているため、=First()で先頭行の値を取得することで正しいヘッダーが表示されます。取引先名・日付・ステータスなど他のヘッダー項目も同様に=First()を使用します。
明細行はテーブルコンポーネントで表示します。データセット名にOrderItemsを指定し、Details行のセルに=Fields!rowNumber.Value、=Fields!productCode.Valueなどのフィールド参照式をバインドします。Details行はDataSetのレコード数だけ自動的に繰り返されます。
図5は、受発注データをバインドした帳票の表示結果です。
FlexGrid選択行から帳票を表示する
ここからは、WijmoコンポーネントとActiveReportsJSを連携させるパターンを解説します。まず、FlexGridで選択した受発注データを帳票として表示するパターンです。
データフロー
連携のデータフローは以下の通りです。
FlexGrid(行選択) → React State → ActiveReportsJS Viewer
FlexGridのselectionChangedイベントで選択行のデータを取得し、Reactのstateに保存します。「帳票を表示」ボタンのクリック時に、stateに保持したデータをフラット化してActiveReportsJS Viewerにバインドします。
実装
FlexGridと帳票Viewerを左右に配置し、受発注データを選択すると右側に帳票が表示されるコンポーネントを作成します(リスト5)。
export default function OrderReportView({ orders }: OrderReportViewProps) {
const [selectedOrder, setSelectedOrder] = useState<SerializedOrder | null>(null);
const viewerHostRef = useRef<HTMLDivElement>(null);
const viewerRef = useRef<any>(null);
// FlexGridの行選択イベント
const handleSelectionChanged = (sender: any) => {
…中略(sender.collectionView.currentItemからorderを特定してsetSelectedOrder)…
};
// レポートを表示
const handleShowReport = useCallback(async () => {
if (!selectedOrder || !viewerHostRef.current) return;
…中略(レポート定義取得)…
// 選択された受発注データをフラット化してバインド
const flatData = flattenOrder(selectedOrder);
reportDef.DataSources[0].ConnectionProperties.ConnectString =
"jsondata=" + JSON.stringify(flatData);
…中略(Viewerの初期化とレポートオープン)…
}, [selectedOrder]);
return (
<div className="flex gap-6">
<div className="flex-1">
<FlexGrid itemsSource={view} selectionChanged={handleSelectionChanged}
isReadOnly={true} selectionMode={2}>
…中略(FlexGridColumn定義)…
</FlexGrid>
<button onClick={handleShowReport} disabled={!selectedOrder}>帳票を表示</button>
</div>
<div className="flex-1">
<div ref={viewerHostRef} style={{ height: "500px" }} />
</div>
</div>
);
}
selectionChangedイベントでは、sender.collectionView.currentItemで現在選択されている行のデータオブジェクトを取得できます。取得した受発注データをflattenOrderでフラット化し、レポート定義のConnectStringへ設定すると、帳票に反映されます。
図6は、FlexGridで受発注を選択した状態の画面です。
まとめ
本記事では、ActiveReportsJSのデータバインドの仕組みを解説し、WijmoのFlexGridと連携させる実践的なパターンを実装しました。ポイントを振り返ります。
-
データバインド:レポート定義の
ConnectStringに"jsondata=" + JSON.stringify(data)を設定する - Server Component連携:データ取得はServer Component、UI表示はClient Componentに分離する
-
ネストデータの伝票表現:
Order + OrderItem[]をフラット化し、=First()でヘッダーを表示する -
Wijmo連携:
selectionChangedイベントでReact Stateを更新し、Viewerにバインドする単方向データフロー
なお、サンプルコードにはTreeViewとFlexGridを組み合わせた複合パターンも含まれているので、あわせてご参照ください。次回は、ActiveReportsJSのレポートパーツとマスターレポートを活用して帳票の共通部品化・テンプレート管理を行い、さらにActiveReportsJS Designerを組み込んで「現場担当者が自分で帳票レイアウトを修正できる」仕組みを実現します。

