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Developers Summit 2026 セッションレポート

量子コンピュータを「実験室の装置」から「コンピュータシステム」へ──大阪大学が描く実用化ロードマップ

【19-D-7】「純国産」量子コンピュータの裏側お見せします!

量子コンピュータ公開までにあった、泥臭い手作業のプロセス

 2023年12月のOQTOPUSを搭載した量子コンピュータの公開は、学術界および産業界に大きなインパクトを与えた。その成果は単なる技術的マイルストーンにとどまらず、内閣総理大臣賞の受賞という形で社会的な評価も獲得している。

 さらに、大阪万博での展示を通じて、一般の来場者に対する実機のデモンストレーションも成功させた。来場者がタブレットからジョブを実行し、実験室のLEDが連動して光るという直感的なギミックを用意した結果、1週間で2万ジョブ以上が実行され、量子技術の認知拡大に大きく貢献した。

 しかし、この公開に至るプロセス、そして公開後の運用には、技術的および組織的な課題が山積していた。明確な要件定義がないまま進むアジャイル的な開発体制の中、ソフトウェアエンジニアとハードウェア研究者が緊密に連携して手探りでシステムを構築していったのだ。

 特に運用フェーズにおいて最大の壁となったのが「キャリブレーション(較正)」の作業である。前述の通り、量子ビットの操作は物理的な回路ではなく、ソフトウェアによって生成されたマイクロ波のパルス波形(周波数、強度、長さ)によって制御される。量子チップ上の量子ビットは、マイクロ波の干渉を防ぐために、チェッカーボードのように互い違いに異なる共振周波数が設定されている。

超伝導量子ビット操作における「キャリブレーション(較正)」とは

超伝導量子ビット操作における「キャリブレーション(較正)」とは

 「1個1個丁寧に真心を込めて作る必要がありまして、なかなか大変です」

 森氏がこぼすように、64個の量子ビットすべてに対して、スペクトルコピーによる周波数の特定、シェブロンパターンでの精度向上、ラビ振動やラムゼー振動による寿命の測定、さらにはランダマイズドベンチマーキングによるゲートの評価など、膨大な実験と調整を日夜手作業で繰り返す必要があった。

 この属人的で過酷な作業を解決するため、開発チームはキャリブレーション自動化ツール「QDash」を構築した。QDashは、一連の調整作業をワークフローとして定義し、失敗時の自動リトライ機能や、過去の実行ログの蓄積・分析機能を備えている。さらに、共振周波数の歪みを特定するプロセスに機械学習を適用したり、チャットボットインターフェースを通じて現在のキャリブレーション状況を対話的に確認できるようにしたりと、運用の高度化と省力化を推し進めた。このQDashの導入により、研究室の実験装置に過ぎなかったハードウェアが、安定して計算リソースを提供するシステムへと進化した。

キャリブレーション自動化ツール「QDash」の概要

キャリブレーション自動化ツール「QDash」の概要

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量子コンピュータの基本ソフトウェアをGitHubでOSS公開

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この記事の著者

中野 佑輔(編集部)(ナカノ ユウスケ)

 日本総合研究所を経て2025年よりCodeZine編集部所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

関口 達朗(セキグチ タツロウ)

フリーカメラマン 1985年生まれ。東京工芸大学卒業後、2009年に小学館スクウェア写真事業部入社。2011年に朝日新聞出版写真部入社。2014から独立し、政治家やアーティストなどのポートレート、物イメージカットなどジャンルを問わず撮影。2児の父。旧姓結束。趣味アウトドア。

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