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クラウドE2Eテストを実現するMicrosoft Playwright Workspaces入門

「Microsoft Playwright Workspaces」でE2Eテストの課題を解決

クラウドE2Eテストを実現するMicrosoft Playwright Workspaces入門 第1回

Azure App Testingとは

 本連載の題材であるPlaywright Workspacesは、より大きなAzureサービス「Azure App Testing」の傘下にある機能のひとつとして提供されています。本サービスを正しく活用するために、その親サービスであるAzure App Testingの全体像についても触れておきましょう。

Azure App Testingの位置づけ

 Azure App Testingは、Azure上で提供される「アプリケーション品質テスト」に特化した統合プラットフォームです。従来、Azure上でのテスト系サービスは機能ごとに別々のリソースとして散らばっていましたが、それらをひとつのサービス傘下に整理・統合したものがAzure App Testingにあたります。

 Azureポータル上では「App Testing」というカテゴリから、その傘下の各テストサービスへアクセスできるようになっています。

図1:AzureポータルのApp Testingトップページ
図1:AzureポータルのApp Testingトップページ

Azure App Testingが提供するサービス群

 Azure App Testing配下では、現在次の2つのテストサービスが提供されています。

Azure Load Testing

 アプリケーションに対する負荷テストをクラウド上から実施するサービスです。Apache JMeterやLocustといった負荷テストツールで書かれたテストシナリオを用いて、大量の仮想ユーザーからのアクセスを再現し、アプリケーションのスケーラビリティや応答性、ボトルネックを検証できます。スパイクアクセスや大量同時接続のシミュレーションに向いたサービスです。

Playwright Workspaces

 本連載で扱うクラウド型E2Eテストサービスです。OSS Playwrightで書かれたテストをクラウド上のブラウザで実行し、多数のブラウザ・OS組み合わせで大規模並列にE2Eテストを実施できます。機能的な正しさの検証、および複数環境での互換性検証に向いています。

 この2つは「アプリが正しく動くか」(E2E)と「アプリが十分な性能で動くか」(負荷)という、アプリケーション品質を評価する上で相補的な観点をカバーしています。

統合プラットフォームとしての利点

 これら2つのサービスがAzure App Testingの傘下で統合的に提供されていることで、利用者にとって次の利点があります。

リソース管理の一元化

 負荷テストとE2Eテストのリソースを同じサービスカテゴリで管理でき、権限やタグ付け、コスト監視が容易になります。

認証・ネットワーク設定の共通化

 Entra IDによる認証や、対象アプリへのネットワーク接続の考え方が共通化されており、一方のサービスで習得した知識がもう一方にも活きます。

テスト結果の統合された見え方

 Azureポータル上で各テスト結果を同じUI感覚で確認でき、品質保証のダッシュボードとして一体的に扱えます。

 冒頭で説明した通り、Playwright Workspacesは元々「Microsoft Playwright Testing(MPT)」という独立したサービスとして提供されていましたが、2026年3月にAzure App Testing傘下に統合される形でリブランドされ、現在の形になりました。本連載は新しいPlaywright Workspacesを前提としており、旧MPTの利用経験は必要ありません。

本連載で扱う範囲

 本連載ではAzure App Testingのうち、Playwright Workspacesに絞って解説を行います。Azure Load Testingについては別途連載記事としてご紹介する予定です。

アーキテクチャと主要機能

 Playwright Workspacesがどのような仕組みで動いているか、概要を見ていきましょう。

アーキテクチャの全体像

 利用者の手元でOSS Playwrightのテストランナーを起動すると、テストの「制御」自体は手元で実行されますが、実際にブラウザを起動してページを操作する「ブラウザ実行」だけがクラウド側にオフロードされる構造になっています。具体的には、Playwrightが内部で利用するブラウザ起動API(CDP(Chrome DevTools Protocol)ベースのWebSocket通信)の接続先を、Workspaces上のクラウドブラウザに切り替える形となります。

図2:Playwright Workspacesのアーキテクチャ
図2:Playwright Workspacesのアーキテクチャ

 テスト対象のWebアプリ自体は、利用者側で用意します。クラウド上の本番アプリでも、開発環境のステージングサイトでも、あるいはローカルの開発機で起動しているアプリでも、いずれもテスト対象にできます。プライベートネットワーク内のサービスやlocalhostへのアクセスも、特別なポート開放を必要とせず、ローカルから起動したテスト経由で実施できる点はぜひ押さえておきたい特徴です。

主要機能の概要

 Playwright Workspacesが提供する主要な機能は、次の通りです。

クラウドホスト型ブラウザ

 Chromium、Firefox、WebKitの3エンジンを、LinuxとWindowsの両OS上で実行可能です。バージョンはサービス側で管理されており、利用者がブラウザバイナリを手動で用意する必要はありません。常に最新版のブラウザでテストできるため、ブラウザ更新に追従する手間が不要になります。

大規模並列実行

 テスト実行時のオプション(--workers)で並列度を指定でき、数十並列までスケール可能です。テスト件数の多いプロジェクトほど効果が顕著で、ローカル実行と比較した場合の時間短縮効果は数倍から十数倍に達することもあります。並列度の具体的な設定や効果測定については第3回で詳しく扱います。

テスト結果ダッシュボード

 実行ごとのテスト結果はAzureポータル上のダッシュボードに集約されます。失敗したテストのTrace Viewerやスクリーンショット、ビデオも一元的に確認でき、チーム内での結果共有が容易です。プルリクエスト単位でURLを共有すれば、レビュアーもブラウザから直接結果を確認できます。

リージョンアフィニティ

 テスト対象アプリの配置リージョンに近いクラウドブラウザを利用することで、ネットワークレイテンシを最小化できます。日本国内のサービスであれば、東日本リージョンを選ぶことで安定した応答時間を得られます。

プライベートネットワーク対応

 localhostや社内VPN内のアプリも、特別なネットワーク設定なしにテストできます。これは、テストランナーが手元で動作し、その手元の環境からクラウドブラウザ経由でアプリへアクセスする構造によるものです。インバウンド方向のポート開放を要求しないため、セキュリティ面でも導入のハードルが低くなっています。

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この記事の著者

WINGSプロジェクト 秋葉 龍一(アキバ リュウイチ)

WINGSプロジェクトについて>有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。2018年11月時点での登録メンバは55名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書記事多数。 RSS X: @WingsPro_info(公式)、@WingsPro_info/wings(メンバーリスト) Facebook

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるReact実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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