Webサービス開発の隆盛が目覚しいソフトウェア業界
今年で9回目を迎えるDevelopers Summitだが、今回ほどIT業界の変革を感じるプログラムもなかったのではないだろうか。これまでも年ごとにクラウドやアジャイル、オープンソースなどで注目を集めたトピックはあるにせよ、中軸はエンタープライズなシステム開発であることに変わりはなかったように思う。
しかし今回は、Webサービス開発に関するセッションが目白押しで、本格的にもうひとつの軸になりつつあることを感じさせる。それがモバイル、とくにソーシャルアプリとスマートフォンの隆盛に押されてのものであることは論を待たない。下はデバイス(ハードウェア)から上はアプリケーションまで広いレンジで連鎖的に変革が起きているため、多くの技術者が注目せざるを得ないのが現状だ。
そんな変革を最も強く感じさせてくれるプログラムが、1日目のルームAで終日にわたって開催される「Mobile Future Conference by DeNA」だろう。名前の通りモバイルでモバゲータウンを展開するDeNAによる5セッションのトラックだ。
「モバイルの未来」のタイトルに相応しく、マルチデバイス×オープンプラットフォーム×大規模Webサービス×グローバル展開と、ITの最先端を突き進むDeNAが、デブサミ初本格参戦にして実に気合の入ったセッションを用意している。当日の見所を、このプログラムをDeNA社内でコーディネートした、ZIGOROuこと山口徹さんにうかがった。
第一級のインフラエンジニア陣が明かすソーシャルアプリ運営の現場
山口さん自身もコーディネーターとして登壇するのが、午後一番のセッション「ソーシャルアプリを支えるインフラの現場」(17-A-3)だ。
月間数十~数百億という膨大なPVにもなるフィーチャーフォンのソーシャルアプリ。そのインフラの現場を、プラットフォーム(DeNA)、ソーシャルゲームプロバイダ(ドリコム、KLab)、インフラサービス事業者(KLab、ライブドア)という異なる立ち位置から第一線のインフラエンジニアが集まり、それぞれが仕事において大切にしていることは何であるかを語る。
パネリストは、大仲能史(ドリコム)、安井真伸(KLab)、冨成章彦(ライブドア)、小野篤司(DeNA)の4氏。インフラについての著書があったり、コミュニティで活躍しているなど、山口さんが「ぜひ話を聴いてみたい」とセレクトした方々ばかり。障害対応の生々しい話、クラウドやRDBMS、NoSQLなどへの取り組み方の違い、フィーチャーフォンならではの工夫などを取り上げて論じるとのこと。
「冒頭にまずそれぞれのモットー、座右の銘としていることを出してもらいます」(山口さん)という予定なので、途中入場は厳禁。最初からキッチリと聴いておきたいセッションだ。
日本屈指のMySQLスペシャリストによる技術展望
続いてのセッション「大規模Webサービスのためのデータベース技術の現在・未来」(17-A-4)では、注目のスピーカーが登壇する。松信嘉範氏は、2010年8月までの4年間をMySQL開発元であるMySQL AB(Sunに買収後、現オラクル)で日本およびアジアのリード・コンサルタントに従事していた、日本でも有数のMySQLスペシャリストである。
DeNAにジョインしてまだ半年足らずだが、社内ではすでに「松信チューニングによって改善している点もある」という。そういう非常にきめ細かい知見が共有できるのではないかと期待できるセッションだ。
もともと日本最大規模のSNSであるモバゲータウンで大量のWebトラフィックを処理してきたDeNAは、これまでもMySQLのヘビーユーザーとして知られてきたが、一昨年来のソーシャルアプリでは、SNSとはまた異なる傾向のアクセスが大量にあり、常に新たな課題と向き合っている。
そういった課題を解決するため、DeNAでは従来の運用スタイルに満足することなく、MySQLの新しい機能、トリガーやストアドプロシージャが現場でどれほど活用できるか果敢にチャレンジしている。さらに、MySQLのデータベースエンジンに直接アクセスしてNoSQL的に利用できるHandlerSocket plugin for MySQLを独自開発している。
そういった最先端のMySQL活用術、それもカタログスペックではない、実践の現場における、とてつもないMySQLの片鱗を味わう1時間になるだろう。