モバゲータウンなど、Feature Phone向けの人気ソーシャルアプリケーショーションは、月間数十~数百億PV(ページビュー)もののトラフィックがある。それらを支えるインフラの現場で働く技術者たちは、どのような手法を用いてトラフィックをさばいているのか。4人の現場エンジニアがパネラーとなり、現状のシステム構成やクラウドの可能性について、さらには今後の展望などについて語った。
モデレータ
- 株式会社ディー・エヌ・エー ソーシャルメディア事業本部 メディア統括部 プラットフォームシステムグループ 山口徹氏
パネラー
- KLab株式会社 第2開発部インフラストラクチャグループ 安井真伸氏
- 株式会社ドリコム ソーシャルゲーム開発デザイン部 大仲能史氏
- 株式会社ライブドア ネットワーク事業部 シニアマネージャ 新規開発担当 冨成章彦氏
- 株式会社ディー・エヌ・エー システム統括本部 IT基盤部 小野篤司氏
各社ともデータベースにはMySQLを使い、NoSQLも併用
ソーシャルアプリのインフラ現場を語るパネラーとして参加したのが、KLab 第二開発部インフラストラクチャグループの安井真伸氏、ドリコム ソーシャルゲーム開発部の大仲能史氏、ライブドア 事業開発グループの冨成章彦氏、ディー・エヌ・エー(DeNA)システム統轄本部IT基盤部の小野篤司氏の4人。いずれもプラットフォーム、ソーシャルゲームプロバイダ、インフラサービス事業者の第一人者だ。そしてそのモデレータを務めたのが、DeNAソーシャルメディア事業本部メディア統括部プラットフォームシステムグループの山口徹氏。
冒頭で山口氏が簡単に各パネラーの座右の銘、および普段の業務と扱うサーバー台数などを紹介して、ディスカッション開始。
最初の話題は「サーバーとシステム構成」。最近のキーワードであるクラウドについては、コストを抑えられる、負荷に応じて柔軟にインスタンスを増やせるなどのメリットがあるものの、利用は進んではいない。その理由として挙げられていたのが、「性能が安定しない」「責任点があいまいになる」「原因の切り分けが難しい」ということ。とはいえ、「クラウドは成熟してきており、SLAなども充実してきている。今後は取り入れていきたい技術」(冨成氏)、「大規模な成長に追随していくためには、選択肢としては有効だと考えている」(小野氏)と、今後に期待が集まっていた。
使用しているデータベースシステムについては、4人のパネラーとも、MySQLと回答。SQLチューニング方法について、「スロークエリログを蓄積したりexplainでSQL分析をする」(安井氏)、「クエリ数が20を超えると画面を赤くするなど、便利なプラグインを活用してチェックしている」(大仲氏)、「DBIに手を加え、クエリ情報を出力し、分析している」(小野氏)という。またインフラサービス事業者の立場として、冨成氏は「事前テストの実施が、トラブルの数を減らすことになる」と指摘した。また各社ともNoSQLを使用。図を見ればわかる通り、複数種類を用途に応じて使い分けているというが、各社使っていたのはmemcachedである。ただ大仲氏によると「memcachedは100KBを超すデータを入れ続けると不具合が出た」と明かす。また安井氏は「TTは簡単で使いやすい反面、RDBMSで簡単にできることができないのであまり使っていない」と語った。
Flash Liteの動的生成については、「FlamixierというPHP拡張モジュールを自社で開発して利用している」(安井氏)「swfmillやswfrubyで生成している」(大仲氏)。
スケールアウトやスケールアップについては、スケールアップもスケールアウトも両方が必要だが、「1台のの性能を向上させることが重要なのでは」(安井氏)という。
初期のサービスリリース時には様々な問題が発生
2つ目の話題は現場での体験談である。安井氏が1年前に起こった事件を紹介した。ある日仕事が終わって安井氏が帰ろうとすると携帯が鳴り「全サービスが落ちた」という。原因は、マルチキャストでファイル転送していたが、帯域制御をしていなかったため。帯域制御ツールを開発し、回避したという。「初期のソーシャルアプリをリリースする際は、いろいろな問題が発生した」と安井氏は振り返る。
第三の話題は、今後の展開について。山口氏が同質問をパネラーに投げかけた。難しい表情を浮かべながらも、「スマートフォン対応していくことは明らかだが、答えはわからない」(安井氏)、「インフラとしては注目しているのは国内クラウド。自動スケールする仕組みを検討。今、構築中である」(大仲氏)、「クラウドの振興に伴い、レイヤー2のネットワーク技術に注目している」(冨成氏)、「サービスを落とさないためにも可用性を上げる、ハードウェアの資産を無駄なく使うなどの仕組みづくりをしっかり作っていきたい」(小野氏)と回答。
最後に山口氏はパネラーをねぎらい、パネルディスカッションは終了した。