オープン性、革新性に重きを置き、より良いWebの世界を実現するために
最初に登壇したMozilla Japan 代表理事の瀧田佐登子氏は、まず2004年11月9日にFirefox 1.0がリリースされ、ちょうど11年になること、そして3日前にFirefox iOS版のダウンロードを開始したことに言及した後、Mozillaのこれまでの歩みを振り返った。
1998年、Mozillaは、技術革新を起こし、より良いWeb世界を作ろうと、Mozilla Projectをオープンソース化。インターネットをよりオープンな世界に導くために、Firefoxを世に送り出して以来、オープン性の拡張を目指し、Webで標準となる技術を開発し続けている。
2010年以降は、携帯電話やスマートフォンの普及を受け、オープンなWebの世界をモバイル分野でも実現するために、携帯端末をはじめさまざまなデバイスにMozillaのテクノロジーを搭載することに注力してきた。2013年~2015年にはWebアプリを快適に動かすプラットフォームとしてFirefox OSを開発。日本ではFirefox OS搭載のスマートフォンやスマートTVがリリースされている。そして、2015年11月、iOS版のリリースにより、Firefoxブラウザは主要プラットフォームをカバーすることとなった。
Mozillaの活動指針を示す「Mozillaマニフェスト」
瀧田氏のセッションの締めとして、Mozillaマニフェストが紹介された。インターネットという世界で、オープン性と革新性に重きを置き、利益を追求することなく、コンシューマやデベロッパーに最も良い環境を提供するために何をすべきかを、コミュニティ、ユーザ、デベロッパーなどすべてのメンバーとともに考え、創造していくのがMozillaのやり方である。2016年以降は、IoT(Internet of Things)、あるいはWoT(Web of Things)に関わるテクノロジーがいろいろと出てくるだろう。センサーやデバイスがインターネットにつながるだけでなく、既存のWeb環境をどう同期させるか、Web上に存在する膨大なデータをどのように活用していくかを考えるべき時を迎えようとしている。今後もMozillaはWebを中心に未来を考えていくと、瀧田氏は述べた。
WebコンテンツにVRをもたらすWebVR、用途が拡大するFirefox OSに注目
シークレットゲストとして、Mozilla Corporation テクニカルエバンジェリストのDietrich Ayala氏が登壇し、注目の技術としてWebVRとFirefox OSを挙げた。
WebVRは文字どおり、ブラウザを介してリッチなVR(仮想現実)エクスペリエンスをWebコンテンツにもたらす技術である。具体的には、ブラウザからヘッドマウントディスプレイなどのVRデバイスを利用するためのAPIなどを指す。2015年1月には、FirefoxのNightly BuildでWebVRがサポートされている。
Ayala氏は続いてA-FRAMEを紹介。ブラウザでHTMLの要素を使ってVRコンテンツを構築する技術であり、これを利用すればJavaScriptとHTMLの知識のみで簡単にVRコンテンツを作成できる。WebVR Starter KitというVRコンテンツ構築ツールも用意されている。
Ayala氏は、Firefox OSについて、スマートフォン用という本来の設計意図とは異なる用途が広がっていると述べ、Firefox OSをRaspberry Piに移植し、教育に利用している例などを紹介した。その他にも、米国では機械学習ベースの音声認識システム、台湾でセキュリティやプライバシーへの要件が厳しい医療用プラットフォームなどに活用されているという。これらはMozillaが意図したものではなく、ロードマップにも載っていないが、こういった形で用途が広がっていくのはすばらしいことだと、締めくくった。