はじめに
最近何かとブロックチェーン(Blockchain)が話題に上ることが増えてきましたが、本稿では、Blockchainについてあまり知らない方を対象として実際にアプリケーションを動かしてみることを目標に説明して行きたいと思います。
1. Blockchainとは
1.1. Blockchainとは
Blockchainとは何かということをざっくりと言うと、分散共有台帳(Distributed Shared Ledger; 以降、分散台帳/Shared Ledger/Distributed Ledgerと書きます)を管理する技術です。「Ledger(台帳)」が理解への鍵となります。
- Ledger(台帳):System of Records
- Transaction(取引):Ledger上でのAsset(資産)のやり取り
- Contract(取り決め、契約):Transactionを実行する条件
1.2. BitcoinとBlockchainとの関係について
巷では、BitcoinとBlockchainが同一視されているような風潮がありますが、「Blockchain ≠ Bitcoin」ということをまず認識しておきましょう。また、昨今バズワード的にも扱われているFinTechのみに適用されるものでもありません(後ほど触れますがIoTとの相性も良いものです)。
Bitcoinは、2008年にSatoshi Nakamotoと名乗る人物による9ページのホワイトペーパーから始まった「最初のBlockchainアプリケーション」です(そういう意味ではBitcoinありきと言えるのですが、現在では、さまざまな応用が生まれています)。
1.3. Blockchainがもたらすものとは
「集中から分散へ」
台帳管理を非集中化することにより、各種取引の時間的金銭的コストを抑え、脆弱性などのリスクを低減することが可能と言われています。ここでは例として、貿易金融について触れてみましょう。
貿易金融では、輸出企業、輸入企業、運輸企業、保険会社、銀行、税関など数多くの関係者が存在する中で、大量の貿易書類(配送伝票や船荷証券など)がやり取りされ、ここに多くのコストが掛かります。
Blockchainを利用することにより、各々の関係者間で迅速かつ安全な貿易書類の交換などが可能となります。また、IoT(Internet of Things)も併用することにより、商品の移動におけるトレーサビリティの実現や決済その他の処理を自動化でき、時間的金銭的コストの削減も可能となります。
1.4. Blockchainの適用分野と例
1.4.1. 適用分野
以下のような業務において、さまざまな関係者間の連携処理を簡素化することが期待されています。
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証券取引
- 決済後処理
- 証券発行
- その他付随業務
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貿易金融
- 輸出入
- 多通貨取引
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金融サービス
- シンジケートローン
- 与信管理
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個人向け銀行業務
- 国際送金(例:Stellar)
- 担保を用いた貸借契約
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公的記録
- 不動産登記
- 車両登録(その他カーリースなどにも応用可能)
- 業務提携、所有証明、公正証書など
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その他、一般
- 監査証跡
- IoT
- オンラインゲームのアイテムやポイント管理
1.4.2. 適用例
「PrivateからPublicまで」
- 機密性の高い内部記録、内部台帳
- 一部管理者を含んだコンソーシアム型共有台帳
- より広い範囲での情報資産共有(例:The DAO)
- 多参加者による共有台帳
1.5. Blockchainの適さない分野
ここまで述べてきたように業務改善にとても有用なBlockchainですが、もちろん苦手とする、あるいは適さない分野もあります。
- 大量・高速な取引(オンライントレードそのものなど)
- 規模が小さいもの
- 銀行取引におけるACID性が求められるトランザクション処理など(従来のRDBMSが適しているもの)
補足:ACID
Atomic(原子性)、Consistent(一貫性)、Isolated(独立性)、Durable(永続性)。