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Developers Summit 2024 セッションレポート

ChatGPTが普及した未来、プログラマーに求められることとは? 生成AIの普及と落とし穴

【15-A-1】エンジニアのための、生成AIとの付き合い方

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 2022年11月の公開以来、世界中で爆発的に広がったChatGPT。従来型の大規模言語モデル「GPT」をチャット型にすることで、技術者のみならず一般人まで広く利用可能になった点がイノベーティブだ。しかし同時に、エンジニアには「ハルシネーション(AIが事実とは異なる情報を生成する現象)」のリスクを正しく認識し、適切に付き合っていくことが求められている。2024年2月に開催されたDevelopers Summit 2024において、株式会社NextInt代表の「ところてん」こと中山心太氏が、エンジニアの生成AIとの付き合いかた、生成AIによって変化したエンジニアの業務領域、求められるスキルについて解説した。

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ChatGPTの有用性とハルシネーションのリスク

 OpenAI社によって開発されたChatGPTは、2022年11月に公開され、その高い技術性能によって世界中で爆発的に広がった。ChatGPTの作業領域は幅広く、テキスト生成や質問応答、プログラミングヘルプ、言語学習、創作支援、ビジネスコミュニケーション、情報検索などが可能だ。

 「(ChatGPTのベースとなった)GPT-3が出たのは2020年だが、当時プログラマーにとっては『これが新しい形のプログラミングの在り方だ』『これはプロンプトプログラム、プロンプトエンジニアリングである』と非常に話題になった。とはいえ、GPT-3に対して、次の言葉を予測させるための独り言を書ける人はほとんどいなかった。ChatGPTはこれに対して、コンピュータに対して質問するという対話型のインターフェースにすることで、誰でも使えるようにした。このギャップを埋めたところが非常に大きい」とところてん氏は語る。

株式会社NextInt ところてん氏
株式会社NextInt ところてん氏

 ChatGPTが世界で爆発的に広がった結果、以前のAIにはなかった新しい分野を切り開いた。「AIへ依頼する」「質問に回答する」「対話しながら思考を深める」といった用途だ。そして単語や会話の予測能力が極まった結果、AGI(汎用人工知能)と言われるほどの高い能力を獲得するに至ったという。

 ところてん氏は一方で、ChatGPTが「高確率で間違っている、ハルシネーションを含んだ結果を返す」ことのリスクを指摘する。ハルシネーションとは幻覚、つまり、AIが事実とは異なる情報を生成する現象のことだ。例えばChatGPTに「横浜でおすすめの中華料理屋を教えてください」と尋ねると、5つの回答を得られるが、このうち4つは実在しない店舗というから驚きだ。

もっともらしい回答だが、うち4つは存在しない店舗である
もっともらしい回答だが、うち4つは存在しない店舗である

 なぜこのようなことが起こるのか。ところてん氏によると、「ChatGPTのベースとなったGPTは次の単語を予測するAIであり、事実を答えるAIではない。この点がミソで、つまりここに並ぶべきは中華料理屋っぽい名前であれば何でもいい。事実に基づいているかどうかではなく、繋がりやすいかどうかを答えているに過ぎない。だから存在しないお店の名前ができあがってくる」ということだ。なお講演当時の最新バージョンであるGPT-4は、裏側で検索する機能が追加されており、実際の店舗情報が出力されるようになっている。

 さらに言えば、ChatGPTは「常識」はあるが「知識」はないという。常識的に物事を考えられるが、個別具体に関する知識はないため、個別具体的な物事についてたずねるとほぼ確実にハルシネーションが発生するのである。

 「だから検索だと思って使うと絶対に失敗する。一方でChatGPTは演繹性や機能性、抽象化能力が高いので、議論のパートナーとして使うとものすごくパワフルに機能する」とところてん氏は語る。

 「常識」を備え、抽象度の高い事柄や一般論であればかなり正確な回答が得られるのは大きなメリットだというのが、ところてん氏の見立てだ。またChatGPTを利用する際には、「必要に応じてAdvanced Data Analysisやプラグインを適切に使って、ハルシネーションを抑制していく必要がある」とも付け加えた。

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検索エンジン・生成AIの融合とプロンプトエンジニアリング

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この記事の著者

丸毛 透(マルモ トオル)

インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。

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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

CodeZineは、株式会社翔泳社が運営するソフトウェア開発者向けのWebメディアです。「デベロッパーの成長と課題解決に貢献するメディア」をコンセプトに、現場で役立つ最新情報を日々お届けします。

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水無瀬 あずさ(ミナセ アズサ)

 現役エンジニア兼フリーランスライター。PHPで社内開発を行う傍ら、オウンドメディアコンテンツを執筆しています。得意ジャンルはIT・転職・教育。個人ゲーム開発に興味があり、最近になってUnity(C#)の勉強を始めました。おでんのコンニャクが主役のゲームを作るのが目標です。

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