3か月で生成AIのプロダクト開発に挑戦! まず何をする?
「質問です。明日何らかの分野で技術革新が起きて、上長から『3か月後に、その技術を活用した機能をリリースしてほしい。あなたは今日からこのプロジェクトのリーダーです』と言われたら、何をしますか」。
衝撃的な問いかけから始まった講演だが、これはちょうど1年前、2023年2月16日に渡辺氏に起こった実話だ。
渡辺氏の所属する株式会社LegalOn Technologies(旧:株式会社LegalForce)は、弁護士の法務知見と自然言語処理技術や機械学習などのテクノロジーを組み合わせ、法務業界のイノベーションを推進するサービスの開発・提供を行う企業だ。このうちAIレビューサービス「LegalForce」は、契約審査の品質向上と効率化を実現するシステムであり、米国でも「LegalForce」をベースにしたサービスとして「LegalOn Global」を展開している。
そして渡辺氏に与えられたミッションは、日本向けサービス「LegalForce」に生成AIを搭載した「条文修正アシスト」、および米国向けサービス「LegalOn Global」に生成AIを搭載した「AI Revise」の各機能の開発だった。
プロジェクトメンバーは、渡辺氏ともう一人のエンジニアのわずか2人。「奇抜なアイデアが降ってきたな」と困惑しつつ、渡辺氏はまず、開発における前提条件を整理するところから始めた。
初めに取り掛かったのは、開発によって実現したいことの確認である。「ユーザーのどのような課題を解決するべきか」「ユーザーに毎日使ってもらえるプロダクトとは」「限られた期間・リソースのなかでできることは」。時間を無駄にしないためにも、明確なゴールの設定は不可欠だ。
次に、リリースまでに必要なタスクを全て洗い出す。通常のシステム開発において必要なタスク、たとえば技術調査や顧客ヒアリング、開発・実装、UI/UX、セキュリティといったことはもちろん、生成AIに最適化したプロンプト開発など、やるべきことはすべて洗い出した。
さらに、「クリティカルパスを見つけることも大事だった」と渡辺氏は続ける。クリティカルパスとは、プロジェクト開発において最も時間がかかると考えられる作業フローのことだ。これを発見することによって、プロジェクトの課題が見えてくる。
「必要な作業をJiraのタイムラインで表示し、どこに時間がかかりそうで、どこがすぐ終わりそうかをいろいろと検討した。すると、実は開発自体にはそれほど時間はかからず、もっと別の要因で時間がかかりそうだということが分かった」と渡辺氏。「クリティカルパスを作れれば、勝負はもう終わったようなもの。あとはひたすらやるだけだ」と闘志を燃やした。